技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2026年4月号

腹部領域におけるXA/DRの最新技術

腹部血管内治療におけるCBCTの活用

小川 昌美[GEヘルスケア・ジャパン(株)Interventional部]

動脈化学塞栓療法や血管塞栓術などの腹部血管内治療において,術中に3D画像を取得することは,血管支配領域を立体的に把握する上で有用であり,超選択的な血管へのアプローチを容易にするなど,治療戦略における重要なガイドとなっている。
一方,コーンビームCT(CBCT)の再構成画像には,アーチファクトによる画質低下も指摘されており,読影の障壁となることがある。金属によるアーチファクトは高吸収体の周囲にストリーク状に出現し,近傍の血管走行把握を妨げる。また,CBCT撮影は数秒単位で回転するため,呼吸による体動が画質低下を引き起こし,再撮影を余儀なくされる場合がある。
これらの課題を解決するため,GE HealthCareは,これまでに,金属アーチファクトを軽減した画質を提供する技術として「MAR(Metallic Artifact Reduction)」(図1)を,そして呼吸による体動に起因するモーションアーチファクトを軽減する「Motion Freeze」(図2)によって,再撮影による追加被ばくの回避1)を提案してきた。
しかし,これらの補正を行ってもなお,造影された血管やステントグラフトからのアーチファクトに悩まされた経験があるのではないだろうか。われわれはこの現象にも着目し,今回新たに発表したのが,血管の拍動によるアーチファクトを軽減する「CleaRecon DL」である。
CleaRecon DLは,血流による血管の拍動によって生じるCBCT画像上のストリークアーチファクトを軽減し,画質を改善することを目的とした。造影された血管や留置されたステントグラフト周囲に現れる縞状のアーチファクトを除去する機能を備えている。これにより,CBCTデータ解析時の快適性向上をめざしている。

図1 MAR

図1 MAR

 

図2 Motion Freeze

図2 Motion Freeze

 

■CleaRecon DLの技術

GE HealthCareは,日常臨床におけるCBCT画像品質を次のレベルへ引き上げるため,ディープラーニング技術への投資を積極的に行っている。CleaRecon DLも,ディープラーニングを活用して開発された技術の1つである。
開発後,当社設計の評価計画として米国,アジア,欧州の複数の臨床施設から提供された100件以上のデータを用い,CleaRecon DLを適用,あるいは適用しないCBCT画像を作成し,複数の臨床医(放射線科医,脳神経外科医,血管外科医)によって評価した結果,CleaRecon DLで再構成したCBCT画像は,従来の再構成法による画像に比べてより鮮明であり,ストリークアーチファクトを軽減し,画像診断の信頼性を向上させた,との知見を得た*1〜4
CleaRecon DLの操作は,CBCT再構成の設定条件でチェックを入れるだけというシンプルなものである。補正を適用する場合,再構成時間はおよそ20秒弱(最大で25秒であった)延長するが,回転撮影後のデータ転送から再構成まではほぼ自動処理で進むため,日常臨床のワークフローを大きく妨げることはないと考える。

■臨床例紹介

図3,4に肝血管描出例を,図5に,ステントグラフト内挿術の症例を提示する。再構成によって生じるアーチファクトの要因は複数存在するが,主な3つの要因は,金属,呼吸,拍動であると考えられた。CleaRecon DLの適用により,これらのうち,拍動に起因するアーチファクトに対して一定の効果が得られ,結果として血管の描出能が向上した。
正確な診断と効果的な治療計画を実現するためには,CBCT画像解析に対する高い信頼性が欠かせない。画質の向上は,インターベンションにおける精度と安全性を高めるための重要な手段であり,より質の高い臨床判断を可能とする。GE HealthCareは,このような考えに基づき,オペレータがより鮮明で確実な画像情報を得られるよう,CBCT画像の信頼性向上に強く貢献していきたいと考えている。

図3 Liver a:CleaRecon DLなし b:CleaRecon DLあり 肝像内の造影された血管からのアーチファクトが軽減されている。

図3 Liver
a:CleaRecon DLなし
b:CleaRecon DLあり
肝像内の造影された血管からのアーチファクトが軽減されている。

 

図4 Liver a:CleaRecon DLなし b:CleaRecon DLあり 血管からのアーチファクトが軽減され,血管周囲は滑らかになっている。VR像において,血管描出が細部までよりクリアに描出されている。

図4 Liver
a:CleaRecon DLなし
b:CleaRecon DLあり
血管からのアーチファクトが軽減され,血管周囲は滑らかになっている。VR像において,血管描出が細部までよりクリアに描出されている。

 

図5 ステントグラフト内挿術 a:CleaRecon DLなし b:CleaRecon DLあり アーチファクトの軽減により,分枝部分にKinkが見られず,正しく留置されていることを視認できる。

図5 ステントグラフト内挿術
a:CleaRecon DLなし
b:CleaRecon DLあり
アーチファクトの軽減により,分枝部分にKinkが見られず,正しく留置されていることを視認できる。

 

■CBCTへの期待に応える「Alliaシリーズ」

CleaRecon DLは,腹部に限らず全身の血管に適用可能であり,肝動脈や腹部血管のほか,ステントグラフト内挿術といった大動脈,脳血管(図6),腎動脈でも利用できる。もちろん,この血管画像を透視画像にフュージョンし,カテーテルのナビゲーションとして活用することも可能である。
ここまでCBCT画像がもたらす効果について述べてきたが,実際に日常臨床に取り入れていくためのもう一つの課題は,治療の流れを一時的に止め,Cアームを回転させて撮影し,画像を解析,分析するというワークフローの追加であるだろう。十分な効果が得られなければ,その時間は無駄となりかねない。
GE HealthCareは,CBCTの回転撮影から治療戦略の立案まで,一連の流れを最適化する環境の提供をめざしてきた。「Allia IGSシリーズ」に搭載された40cm正方形パネルは,CBCT再構成画像のFOV範囲を広げ,全肝臓を視野に収めやすくしている。また,腕下げ時のアーチファクトを抑制する効果2)も一定の評価を得てきた。
さらに,automated feeder detection機能を搭載した専用アプリケーションでは,起始部の自動選択や栄養血管の色分け機能が充実しており,戦略立案に必要な画像を簡便な操作で提供できる。これらを透視画像とフュージョンした3Dロードマップは,デジタルズームによって線量を増加させることなく拡大表示が可能である。
Wake Forest Baptist Medical CenterのDr. Kouriは,肝臓IVR領域のkey opinion leaderの一人であり,治療に積極的にCBCTを活用している。「3Dロードマップによって,症例の把握が,よりスムーズかつ効率的になることが多い。最終的には,総放射線量,造影剤使用量,全体の手技時間の削減につながっている」とコメント3)しており,CleaRecon DLの効果に大きな期待を寄せている。CleaRecon DLの評価については,CIRSE2025におけるGE HealthCareのランチシンポジウムでユーザー報告4)が行われたが,今後国内での評価が待たれる。

図6 脳血管 a:CleaRecon DLなし b:CleaRecon DLあり

図6 脳血管
a:CleaRecon DLなし
b:CleaRecon DLあり

 

*1 従来の再構成技術を用いたCBCT画像との比較に基づく。評価は,肝臓,腹部,骨盤,グラフトおよびステント,頭部,その他の解剖部位を含む110件のCBCTデータセットを対象とした読影者評価によって行われた。合計13名の臨床医(インターベンショナルラジオロジスト,インターベンショナルニューロラジオロジスト,血管外科医)が参加し,各データセットは少なくとも3名の読影者によって独立に評価された。CleaRecon DLと従来法で再構成したCBCT画像は,並列比較で評価された。
*2 98%の症例において,読影者はCleaRecon DLの方が「より鮮明」または「大幅に鮮明」と結論づけた。
*3 94%の症例において,読影者はCleaRecon DLにより画像解釈に対するconfidenceが「向上」または「大幅に向上」したと結論づけた。
*4 99%の症例において,読影者は CleaRecon DLがストリークアーチファクトを除去し,ほかのアーチファクトを生じさせることなく画像品質を改善すると評価した。ただし,一部のストリークアーチファクトは残存する場合がある。

販売名称:多目的X線撮影システム INNOVA
医療機器認証番号: 21500BZY00327000
販売名称:アドバンテージ ワークステーション
医療機器認証番号:20600BZY00483000

●参考文献
1)Dioguardi Burgio, M., et al. : Clinical impact of a new cone beam CT angiography respiratory motion artifact reduction algorithm during hepatic intra arterial interventions. Eur. Radiol., 30(1):163-174, 2020.
2)Gonzalez-Aguirre, A. J., et al. : Arms Down Cone Beam CT Hepatic Angiography Performance Assessment : Vascular Imaging Quality and Imaging Artifacts. Cardiovasc. Intervent. Radiol., 41(6): 898-904, 2018.
3)Kouri, B. : Interventional Oncology : The Fourth Pillar in Oncology Care. ASSIST MAGAZINE, #6, 2021.
4)PAE : how does AI improve my daily practice. GEHC Satellite symposium, CIRSE2025

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
〒191-8503
東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:0120-202-021(コールセンター)
gehealthcare.co.jp

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