技術解説(コニカミノルタ)
2026年5月号
US Today 2026
整形外科領域における超音波診断装置の進化と共創の力
木村 洋介 [コニカミノルタ(株) ヘルスケア事業本部 開発統括部デバイス開発部]
■痛みと向き合う診療の変革
整形外科外来に訪れる患者の多くは「痛み」を抱えている。しかし,その痛みの原因を特定するには,従来はX線やMRIなど複数の検査を経る必要があり,診断までに時間を要していた。また,検査画像上の異常と,患者の訴える痛みが一致しないことも少なくない。
われわれコニカミノルタは,この課題に対し,超音波診断装置を「単なる画像診断機器」から,痛みの本質に迫るための診療を支援する画像診断ツールへと進化させることをめざしてきた。とりわけ,身体の構造異常のみならず,動作に伴う運動機能異常や神経の滑走障害,神経と筋肉や骨関節などの周囲組織の関係性をその場で評価できる超音波の特性こそが,これからの痛み診療のカギになると考えている。
■過去の取り組み:現場視点で生まれた革新
こうした考え方の下,われわれは「みえる」「かんたん」「つながる」のコンセプトを掲げ,整形外科領域において,診断から治療,さらにはチーム医療まで支援することを意図した開発を進めてきた。当社の超音波診断装置「SONIMAGE HS2」に搭載されている「SNV(針強調機能)」は,針の視認性向上により超音波ガイド下での穿刺手技を支援するために開発した機能である。ハイドロリリースをはじめとする痛みの原因に直接アプローチする治療を支え,末梢神経やその周囲組織を視覚的にとらえながら介入する診療スタイルをめざした。
タッチパネルとハードキーを組み合わせたハイブリッドオペレーションにより,スピードと精度が求められる現場において,医師が使うだけでなく,看護師やコ・メディカルにもわかりやすいワークフローを実現し,診療の流れに新たな選択肢をもたらす一助となった。
これらの技術は,社内だけで完結した開発ではなく,キーオピニオンリーダー(KOL)の先生方と議論を重ね,「現場の診療に貢献できるか」「チーム医療に貢献するか」という視点で磨き上げてきたものである。
■未来への挑戦:機能異常と「痛み」を可視化する
これまでの取り組みにより,構造を「見る」診療は大きく進化してきた。一方で,整形外科領域における次の課題は,「見えていないものをどう見える化するか」である。画像上の構造異常がなくても痛みは存在し,むしろ神経の滑走不全や筋肉との相互作用といった「機能異常」こそが本質であるケースも少なくないためである。
こうした課題に対する一つのアプローチとして,われわれは,人工知能(AI)を用いて神経の視認性を高める技術「VisNerve(神経強調機能)」を開発した。本機能は,AIにより神経の視認性を高め,末梢神経障害やハイドロリリース前後の動的評価をサポートするものである(図1)。静止画ではなく,「動きの中で神経を診る」診療へつなげる一助となることで,今後,さらに痛みの理解を次の段階へ進めることを期待する。
具体的には,末梢神経の滑走,圧迫,周囲組織との関係性をリアルタイムにとらえ,治療前後の変化を可視化することは,単なる診断補助にとどまらず,治療前後の状態変化の把握を支援する一つの手段になりうると考える。
さらに,今後は,これまでの検査画像による情報に加え,患者の訴え(音声)や表情といった主観的な情報も含めて診療を行うことができる環境を確立することで,「痛みを多面的に可視化する」ことができると考えている。患者の痛みをどのように見える化するかについて,多角的な視点から検討を継続していきたい。
「見えるから分かる,分かるからできる」
この価値を,医師だけでなく,より多くの医療従事者へ,そして患者へと広げていくこと。それがわれわれコニカミノルタのミッションである。その実現のためには,われわれ単独ではなく,多様なパートナーとともに価値を磨き上げ,より早く,より確実に医療の現場へ届けていくことが不可欠だと考えている。
痛みに悩む患者の未来を少しでも明るいものへと変えていくために,われわれは技術革新と共創の歩みを止めることなく,次の診療の姿を共に描き,その実現に貢献する存在であり続けたいと考え,今後も検討を重ねていく。
図1 AIによるVisNerve(神経強調処理)を用いた正中神経の描出例
a:Bモード画像,b:神経強調処理画像
●問い合わせ先
コニカミノルタジャパン(株)ヘルスケアカンパニー超音波事業部
https://www.konicaminolta.jp/healthcare
