X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第1回X線動態画像セミナー

RSNA 2016受賞講演 Magna Cum Laude

Dynamic Chest Radiography Using Flat Panel Detector System : Clinical Usefulness

山田 祥岳(慶應義塾大学医学部放射線科学教室(診断))

山田 祥岳(慶應義塾大学医学部放射線科学教室(診断))

本講演は,胸部X線動態解析を用いた横隔膜運動の評価および換気強調画像,血流強調画像について報告する。

横隔膜運動の評価

胸部X線動態画像は,連続画像データであるため,横隔膜の動きの移動距離のほか,微分を行うことによって,横隔膜の動きの速度も評価可能となる(図1)。
健常ボランティアの検討では,172例(日本人)における安静呼吸下の横隔膜運動は右横隔膜が平均11mm,左横隔膜が平均15mmで,左横隔膜は右横隔膜と比べ有意に大きく動くという結果が得られた。また,多変量解析では,BMIとtidal volume(1回換気量)共に高い値になるほど,横隔膜の動きも大きくなった。
さらに,健常者47例と慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者39例の横隔膜運動の比較では,安静呼吸下においてCOPD患者の方が有意に大きく動いていた。これまでの強制呼吸下で検討では,COPD患者の方が動きが小さかったが,その反対の結果となった。また,多変量解析でも,COPD患者で,BMIが高いほど,安静呼吸下での横隔膜の動きが大きいことが明らかになった1)。これは,COPD患者の場合,ガス交換機能の低下を補うため横隔膜を大きく動かしていると思われる。
われわれは,強制呼吸下での健常者とCOPD患者の横隔膜運動についても評価を行った。GOLD分類で軽症のgrade 1/2,重症のgrade 3/4に分けると,grade 3/4の患者は健常者,grade 1/2患者よりも強制呼吸下での横隔膜の動きが有意に小さいという結果になった。

図1 胸部X線動態画像による横隔膜運動の評価

図1 胸部X線動態画像による横隔膜運動の評価

 

換気強調画像

肺のピクセル値は,呼吸や心拍出によって変化する。胸部X線動態解析ではlow-pass filterとhigh-pass filterを用いることで,換気によるX線透過性の変化をピクセル値で描出し,換気強調画像を作成できる。換気強調画像は,吸気でピクセル値が低下したところを緑色,呼気でピクセル値が上昇したところをオレンジ色で表示する。健常者とCOPD患者の換気強調画像を比較すると,健常者では緑色とオレンジ色が均一に変化し,COPD患者は不均一に緑色とオレンジ色が変化する。図2の右肺がん切除術・放射線治療後の症例では,換気強調画像(図2a)右肺のbullaの箇所が正常部位と逆の動きをしている。肺換気シンチグラフィ(図2b,c)でも右肺では正常部分のみに核種の取り込みが見られ,換気強調画像と一致した。

図2 右肺がん切除術・放射線治療後(68歳,男性) a:換気強調画像 b,c:肺換気シンチグラフィ画像

図2 右肺がん切除術・放射線治療後(68歳,男性)
a:換気強調画像 b,c:肺換気シンチグラフィ画像

 

血流強調画像

さらに,low-pass filterとhigh-pass filterを用いることで,心拍動による肺のピクセル値の変化を抽出でき,血流強調画像の作成が可能となる。図3は右肺動脈血栓塞栓症例で,換気強調画像(図3c)では吸気の緑色と呼気のオレンジ色が均一に分布しており,両肺が均一に空気を取り込んでいることが推察された。一方で,血流強調画像(図3d)では,左肺は心拍動と一致した変化が見られるが,右肺には認められなかった。X線動態解析画像(図3a)では,心拍動に合わせてピクセル値が変化しているのは左肺だけで,右肺には変化が見られなかった。このことから,換気強調画像,血流強調画像共にピクセル値の変化をある程度正確に抽出していると言える。

図3 右肺動脈血栓塞栓症例(75歳,女性) a:X線動態解析画像 b:造影CT画像 c:換気強調画像 d:血流強調画像

図3 右肺動脈血栓塞栓症例(75歳,女性)
a:X線動態解析画像 b:造影CT画像
c:換気強調画像 d:血流強調画像

 

まとめ

胸部X線動態解析は,立位または座位で換気・心拍動を評価できるのがメリットである。われわれの検討では安静呼吸下,強制呼吸下において,左横隔膜の方が右横隔膜よりも大きく動いており,また安静呼吸下ではBMIが高いほど横隔膜の動きが大きいという結果が出ている。さらに,健常者とCOPD患者との比較では,強制呼吸下においては健常者の方が横隔膜の動きが大きく,安静呼吸下ではCOPD患者の方が大きくなった。このほか,換気強調画像では,健常者とCOPD患者における換気によるピクセル値の変化に違いが見られた。一方,血流強調画像は,造影剤を用いることなく粗大な肺動脈血栓塞栓症の評価が可能になると期待される。

●参考文献
1)Yamada, Y., Ueyama, M., Abe, T., et al. : Difference in diaphragmatic motion during tidal breathing in a standing position between COPD patients and normal subjects ; Time-resolved quantitative evaluation using dynamic chest radiography with flat panel detector system("dynamic X-ray phrenicography"). Eur. J. Radiol., 87, 76〜82, 2017.

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