X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第1回X線動態画像セミナー

臨床研究報告

胸部X線動態画像を用いた呼吸機能評価方法の検討

大倉 徳幸(金沢大学附属病院呼吸器内科)

大倉 徳幸(金沢大学附属病院呼吸器内科)

当院では,コニカミノルタ社製胸部X線動画撮影システムを用いて,呼吸機能評価方法の検討を行った。本講演では,実際の検討方法および結果を報告する。

目的と方法

目的は,肺気量分画や最大努力呼出曲線,COPDアセスメントテスト(CAT)スコアとの比較から,肺面積変化と呼吸機能の関係性を検証することである。これにより,患者負担の少ない呼吸機能検査の確立や,精密肺機能検査の代替法の構築,身体活動性の評価をめざす。
方法は,対象者121例(男性80名,女性41名,68.5±9.3歳)における胸部X線動画と呼吸機能の検討で,呼吸変動による肺面積変化率(%Change)は(最大吸気位肺面積−最大呼気位肺面積)/ 最大吸気位肺面積で求めた。症例の内訳は,スパイロメトリ正常範囲の肺がん術前患者36名,慢性閉塞性肺疾患(COPD)疑い46名,COPD 7名,間質性肺炎24名,喘息3名,その他5名である。撮影システムは,パルス照射以外は従来の静止画撮影とほぼ同等で,深呼気から深吸気にわたり10〜20秒かけ秒間15フレームの撮影を行う。被ばく量は,20秒撮影でも静止画の正面+側面撮影と同等(0.23mSv)である。

評価および考察

対象者は比較的高齢であり,呼吸機能を見ると約半数に気流制限があるため,1秒率(FEV1/FVC%)は70%と低値の傾向であった。また,最大吸気位における肺面積と呼吸機能の相関関係(図1)を見ると,肺活量(VC),機能的残気量(FRC),全肺気量(TLC)と正の相関を認めたが,努力呼気曲線から得られる1秒量(FEV1),1秒率,最大呼気中間流量(MMF)とは相関が見られなかった。続いて,呼吸変動に伴う肺面積変化率と呼吸機能との相関関係(図2)を見ると,肺活量,1秒量と弱い正の相関関係,残気率(RV/TLC)と負の相関関係を認めた。特に残気率との相関関係からは,過膨張が進むと肺の動きが悪化する可能性が示唆された。

図1 最大吸気位における肺面積と呼吸機能の相関関係

図1 最大吸気位における肺面積と呼吸機能の相関関係

 

図2 呼吸変動に伴う肺面積変化率と呼吸機能との相関関係

図2 呼吸変動に伴う肺面積変化率と呼吸機能との相関関係

 

さらに,今回の対象者には,閉塞性換気障害と拘束性換気障害が混在しているため,まず気流制限(閉塞性換気障害)のある例に絞って解析を行った。予測値1秒量の程度で層別化し肺面積変化率を分けたところ,肺面積変化率は気流制限の進行とともに低下し,閉塞性換気障害が進むほど肺の動きが悪かった。次に,拘束性換気障害(間質性肺炎)例について,肺活量ごとに層別化して検討したところ,やはり肺活量低下が進行するほど肺面積変化率が低下し,肺が縮むほど肺の動きが悪かった。これらから,肺面積変化の定量化は,COPDや間質性肺炎の病期の進行評価にも有用である可能性が示唆された。
実際に,胸部X線動態画像にて正常呼吸機能(睡眠時無呼吸症候群:SAS)と重症COPDを比較したところ,重症COPDでは肺が過膨張となり動きが悪いことが確認できた(図3)。

図3 正常呼吸機能(睡眠時無呼吸症候群)と重症COPDの画像比較

図3 正常呼吸機能(睡眠時無呼吸症候群)と重症COPDの画像比較

 

そこで,QOLについて,COPD症例で評価を行った。実臨床で汎用されているCATスコアは,咳,痰,呼吸困難,活動性,うつ傾向など,QOLに関する8つの質問を点数化する評価法で,点数が高いほど症状が強くなる。一方,肺面積変化率は症状が強いほど低下しており,CATスコアとの相関関係を示した(図4)。つまり,肺の動きは呼吸機能だけでなく,QOL評価とも相関していることが示された。

図4 COPDにおける肺面積変化率とCATスコアの相関関係

図4 COPDにおける肺面積変化率とCATスコアの相関関係

 

結 果

肺面積は,肺気量分画と強い相関を認めた。また,呼吸変動に伴う肺面積変化率は,残気率と相関を認めたほか,気流制限・肺活量低下の進行とともに低下し,さらに,COPD患者においては,CATスコアとの相関を認めた。以上から,胸部X線動態画像は,患者負担の少ない呼吸機能検査,および身体活動性評価の代替としての活用が期待される。

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