X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第2回X線動態画像セミナー[2020年3月号]

臨床研究報告

X線動態撮影を用いた気管径評価の臨床的有用性検討

園田 明永(滋賀医科大学放射線医学講座)

園田 明永(滋賀医科大学放射線医学講座)

X線動態撮影では気管の動きをダイレクトに観察できることから,吸気・呼気時で気管が激しく動く気管軟化症やExcessive Dynamic Airway Collapseなどの換気障害の患者を,簡便にスクリーニングできる手段になりうると考えられる。本講演では,X線動態撮影を用いた気管径評価についての研究を紹介する。

研究方法

当院で胸部外科手術を受ける予定の患者の中から,書面で同意を得た52名が研究に参加した。X線動態撮影は仰臥位で行った。患者には音声ガイダンスに沿って努力呼吸をしてもらい,最大吸気時から呼気,吸気までの15秒間を15fpsで撮影した。

検証結果

検証1:換気障害のタイプによる気管狭窄の程度の違い
52名の患者のうち,他院で呼吸機能検査をした7名と混合性換気障害1名を除外し,正常28名,閉塞性換気障害12名,拘束性換気障害4名を対象とした。呼気開始時の気管(最拡張部)と呼気終了時の気管(最狭窄部)について,胸鎖関節部よりも尾側,気管分岐部よりも1椎体頭側の間で径を計測した。
その結果,閉塞性換気障害群は正常群や拘束性換気障害群に対して有意に気管径が狭小化した(図1)。閉塞性換気障害群は,呼気時に気管が狭小化する傾向が強いと考えられた。

図1 検証1:換気障害のタイプによる気管狭窄の程度

図1 検証1:換気障害のタイプによる気管狭窄の程度

 

検証2:測定者間での差の有無
3名の測定者が,呼吸機能検査結果を知らない状態で,正常28例と閉塞性換気障害12例について呼気開始時の気管(最拡張部)と呼気終了時の気管(最狭窄部)の径を用手的に計測した。
その結果,測定者間で結果に大きな差はなく,検証1と同様に閉塞性換気障害群は呼気時に気管が狭小化する傾向にあった。そのため,X線動態画像では閉塞性換気障害を検出できる可能性があると考えられる。

検証3:測定誤差の影響の低減
呼吸中に細かく変化する気管径の測定誤差の影響を小さくするため,平均値での評価を行った。測定位置は,Th2と気管支分岐部の中間とした。閉塞性換気障害4名,正常4名をランダムに選択し,15秒間(1名あたり225フレーム)の気管径を用手的に測定した。得られたデータから呼気開始時と呼気終了時および前後7フレーム(計15フレーム)の平均で気管径の変化率を算出した。その結果,閉塞性換気障害があることで気管径の変化率が小さくなる傾向が確認できた。
なお,従来のX線撮影で最大吸気時および最大呼気時を撮影すれば,同じ結果が得られるのではないかという疑問があるが,横隔膜の動きと気管の動きは必ずしも一致せず,また動的な呼吸状態はより強い気管狭窄をもたらすといった報告もあることから,動態で気管を観察することで,より鋭敏に気管の変化を評価できると考えられる。

検証4:気管径の変化と呼吸機能の値の関係性
正常28名,閉塞性換気障害12名を対象に,気管径の変化率と呼吸機能との間に関連があるかを検証した。音声ガイダンス呼気開始時と終了時の前後7フレームの気管径の変化率を測定した。検討では,対象を気管径が狭小化する群と狭小化しない群で分けた。本研究では気管径が70.7%以下となる場合に狭小化と規定した。
その結果,呼吸機能検査項目のうち,特に1秒率(FEV1%),V50,V25の値が,有意差をもって気管径の変化と関連していた(図2)。気管径の狭小化率は,1秒量(FEV1),FEV1%,V50,V25などの呼吸機能検査値と相関する可能性があり,気管径評価で呼吸機能検査値に異常を持つ患者の洗い出しができることも期待される。

図2 検証4:気管狭小化の有無と呼吸機能検査値の関係

図2 検証4:気管狭小化の有無と呼吸機能検査値の関係

 

まとめ

現時点ではデータ量が少なく,結論づけるだけの結果を得られていない。また,用手的に測定しているため精度や測定労力の限界がある。気管径の狭小化程度と閉塞性換気障害の重症度の関連についても検討する必要があるだろう。
X線動態撮影では,呼気時に生じる気管径の狭小化を動的に観察でき,気管の動きを観察・測定することで閉塞性換気障害の患者を同定し,重症度などを評価できる可能性もある。気管径をより客観的に,効率良く測定・評価できるソフトウエアの開発が,われわれの目下の検討課題である。

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