X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第2回X線動態画像セミナー[2020年3月号]

実臨床における有用性の報告:ディスカッション

慢性呼吸器疾患への応用の検討

二階堂雄文(福島県立医科大学呼吸器内科学講座)

二階堂雄文(福島県立医科大学呼吸器内科学講座)

当施設では,慢性肺血栓塞栓症に対する肺血流の評価目的に胸部X線動態撮影を導入した。さらに,最近では慢性呼吸器疾患への応用も試みている。本講演では,初期検討として,間質性肺炎および巨大ブラのある肺気腫の症例を提示する。

間質性肺炎への応用

症例1は,77歳,男性,特発性間質性肺炎である。呼吸機能と肺活量(VC)は正常範囲内で,軽度の肺拡散能力(DLCO)の低下はあるが,ほぼ呼吸機能は保たれている。低酸素血症もないが,間質性肺炎の血清マーカーは高値であった。
胸部単純X線写真では,びまん性の網状影,すりガラス状陰影と,左肺にやや換気の低下が見られた。CTでは,気腫性変化とともに胸膜側にびまん性の網状影を認め,ややすりガラス状陰影が多く,特発性間質性肺炎というよりは,ATS/ERS/JRS/ALAT国際診断ガイドライン1)のAlternative Diagnosis(囊胞・すりガラス状陰影優位とも取れる陰影)に分類される症例と考えられた。
胸部X線動態画像による換気能評価では,左肺の換気量が低下しているが,下葉の病変はそれほど強くなく,体位による変化もほぼ認めなかった(図1)。次に,気流速度解析画像は,呼気速度,吸気速度,速度比(吸気・呼気)を色分けし,画像に重ねて表示する。速度に応じて赤(高速)〜青(低速)とし,速度比については赤・黒(高速)〜青(低速)としている。データ欠損部分は空白となる。本症例の安静呼吸時の速度比は,立位と比べて臥位で亢進しており(図2),深呼吸時にはさらに亢進していた(図3)。

図1 症例1(間質性肺炎):換気能評価画像

図1 症例1(間質性肺炎):換気能評価画像

 

図2 症例1:安静呼吸時の気流速度解析画像

図2 症例1:安静呼吸時の気流速度解析画像

 

図3 症例1:深呼吸時の気流速度解析画像

図3 症例1:深呼吸時の気流速度解析画像

 

肺気腫への応用

症例2は,64歳,男性,巨大ブラのある肺気腫である。繰り返す気胸歴があり,2001年に左側,2008年に右側のブラ縫縮術が施行された。その後,2017年頃に呼吸困難の悪化を自覚し,2019年に呼吸困難の増悪と気腫性変化が著明となり,当科を紹介受診。評価のため,胸部X線動態撮影を施行した。
胸部単純X線写真では,両側中肺を中心に巨大ブラと透過性亢進を認めた。呼吸機能検査では閉塞性換気障害を認め,フローボリューム曲線も典型的な閉塞性障害パターンを呈していた。CTでは上葉にも気腫性変化が著明で,中葉,下葉にも両側に巨大なブラと,下葉に気腫性変化が認められた。
胸部X線動態画像による換気能評価では,特に中肺のブラに応じて換気量が低下していた(図4)。気流速度解析画像では,安静呼吸時には体位による速度比の亢進は認められず(図5),深呼吸時に速度の低下が認められ(図6),間質性肺炎とは異なる様相を呈していた。

図4 症例2(肺気腫):換気能評価画像

図4 症例2(肺気腫):換気能評価画像

 

図5 症例2:安静呼吸時の気流速度解析画像

図5 症例2:安静呼吸時の気流速度解析画像

 

図6 症例2:深呼吸時の気流速度解析画像

図6 症例2:深呼吸時の気流速度解析画像

 

まとめ

当施設では,胸部動態X線画像を慢性呼吸器疾患,特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎における肺の局所・換気・血流の評価に用い,病態や進行における新たな有用なパラメータが得られることを期待し,症例の蓄積を開始している。今後は,登録時(入院時)のさまざまな情報・検査項目や新たなバイオマーカーなどとの関連と,疾患進行との関係についても評価していきたい。

●参考文献
1)Raghu, G., et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med., 198(5):e44-e68, 2018.

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