X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第3回X線動態画像セミナー[2021年9月号]

総 評

総 評1
井上 義一(独⽴⾏政法人国⽴病院機構近畿中央呼吸器センター臨床研究センター⻑)

当時私が会長を務めていたFleischner Societyでは,2020年11月3日に,The Fleischner Society Endorsed Educational Seminarを開催し,そのモーニングセッションにおいて,国内外の胸部画像診断の先生方にX線動態画像の研究成果を知っていただく機会を設けた。セッション後に行ったアンケートでは,海外の参加者も,X線動態画像への関心が高かった。そして,今回のセミナーを通じて,X線動態画像のエビデンスがさらに蓄積されていることを認識した。

胸部画像診断において,肺機能を評価する機能画像の概念は,これまで多く蓄積されてきた。その中でもX線動態撮影は造影剤を使用しない低侵襲の検査法であり,さらに低コストであるなど,多くの利点を有している。また,約20年にわたる研究の歴史の中で,データも蓄積され,論文も多数出されている。今回の発表からも,保険適用や各疾患のガイドラインに盛り込まれるレベルにまで進んできていることを強く感じた。

呼吸器疾患の画像検査は,CTやシンチグラフィが確定診断には必須となるが,スクリーニングや繰り返し検査を行う経過観察においてはX線動態画像の各種解析モードは有用であろう。さらに,COVID-19などの重症感染症や呼吸ができないような重症例においても,X線動態画像の有用性は高いと感じる。胸郭外の骨の動きなども観察できることから,適応の可能性は広がっている。

また,私の専門である間質性肺疾患(ILD)に関しては,病態との相関も示されている。今後は動きの定量化に向け,撮影法の標準化を図ることが重要である。症例数を増やすことでこの課題は解決可能であり,ILDだけでなく,気道病変,血管病変,胸膜病変への適応も期待される。さらに,重症度評価や予後予測のために,エルゴメーターなどで運動負荷をかける前後でX線動態撮影を施行することで,新たな知見を得られるかもしれない。

X線動態画像システムは,欧米やアジアでも導入が広がり,今後の発展が非常に楽しみである。さらなるエビデンスの蓄積と,新たな解析モードの開発などの技術進歩により,全身の画像診断学にrevolutionを起こす可能性を秘めていると言えよう。

 

総 評2
工藤 翔二(公益財団法人結核予防会理事⻑)

第3回X線動態画像セミナーは,コロナ禍の中でのWEB開催となったが,国内外の医師・技師・業界関係者などの800名を超える参加があり,X線動態撮影技術への関心の高さを再認識した。

第1部「技術/外科」では,天理よろづ相談所病院の黒田⼤悟先生に動態撮影における呼吸動作の再現性の問題と改善方法,聖隷横浜病院の大内基史先生に呼吸器外科における胸膜癒着の術前評価,杏林大学の近藤晴彦先生に胸部外科における動態撮影の種々の症例と今後の応用の可能性をご報告いただいた。第2部「肺循環」では,九州大学の山崎誘三先生に肺動脈性肺高血圧症などの肺血流イメージング,細川和也先生に急性肺血栓塞栓症への臨床応用をご報告いただいた。第3部「呼吸機能」では,金沢大学の大倉徳幸先生に閉塞性換気障害,拘束性換気障害における呼吸機能評価,天理よろづ相談所病院の上山維晋先生に肺野面積と推定肺容積を焦点に間質性肺疾患の呼吸機能評価への応用をご報告いただいた。

発表演題はいずれもすばらしく,さまざまな症例が提示され,今後の臨床応用の可能性を感じることができた。また,それらの発表は,学会におけるシンポジウムなどでの報告もされており,第2回セミナー以降のわずかの期間に30近い論文が発表されている。コニカミノルタのX線動画解析ワークステーション「KINOSIS」は,国内だけでなく米国,中国でも導入が進んでおり,日本発のX線動態画像の研究の急速な発展がうかがえる。

開会の辞において,幡生寛人先生が「新たなる未来のページ」を切り開こうと結んだ。1895年,レントゲンはX線を発見し,その臨床応用を発明した。そして,1970年代には,ハンズフィールド,コーマックがコンピュータ断層(CT)の一つを開発した。このように,125年にわたるX線を用いた技術は,いくつかのエポックを経て長足な進歩を遂げてきた。

そして,X線動態画像は,機能を表す生体の動きはもちろん,胸部で言えば濃度の時間変化を介して換気や血流をも見る,生理学的な評価への発展である。その意味で,まさに「新たなる未来のページ」を切り開くものである。日本発のこの技術を,世界中の臨床に役立てるために,力を合わせて頑張っていきたいと思う。

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