X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第4回X線動態画像セミナー[2022年10月号]

開会の辞

幡生 寛人(Professor of Radiology, Harvard Medical School)

X線動態撮影(Dynamic Digital Radiography:DDR)技術は,2000年代の初めに,金沢大学の真田茂先生,田中利恵先生らが発表した研究論文が基礎になっている。コニカミノルタは約20年にわたり,この技術を育成してきた。さらに,呼吸器内科学・生理学の世界的な第一人者である公益財団法人結核予防会代表理事の工藤翔二先生が,いち早くこの技術に着目し,2009年から複十字病院で約600例の撮影を行ってきた。

人生は出会いと偶然で織りなされる。2014年に,神奈川県の黒岩祐治知事らがハーバード大学に来訪された際,コニカミノルタの担当者と知り合う機会を得て,私もX線動態撮影の研究に加わることとなった。その2年後,第102回北米放射線学会(RSNA 2016)において,田中利恵先生,当時Harvard Medical Schoolに留学していた慶應義塾大学の山田祥岳先生が受賞して,この技術が世界的に注目を浴びることとなった。

X線動態撮影の近年の研究成果を紹介する。九州大学の日野卓也先生は,2020年に“Projected lung areas using dynamic X-ray(DXR)”(European Journal of Radiology Open)において,肺野のX線透過性および肺野面積を経時的に追うことで,肺機能検査と類似した情報を得られると報告している。また,大阪大学の秦明典先生は,2021年に“Dynamic Chest X-Ray Using a Flat-Panel Detector System : Technique and Applications”(Korean Journal of Radiology)を発表した。本論文は,RSNA 2016の山田祥岳先生の発表を基に,X線動態撮影の総説としてまとめられている。日野卓也先生は,肺機能の解析に取り組み,2022年に“Vector-Field Dynamic X-ray(VF-DXR)using Optical Flow Method”(The British Journal of Radiology)として発表した。さらに,“Vector-field dynamic x-ray(VF-DXR)using optical flow method in patients with chronic obstructive pulmonary disease”(European Radiology Experimental)では,VF-DXRを慢性閉塞性肺疾患(COPD)に応用し,重症度と相関があると報告した。

このように,多くの人の努力で育てられてきたX線動態撮影技術は,日本発のものであり,世界に広がっていくと確信している。すでに世界累計販売台数は100台を突破しており,さらに設置を予定している施設も数多くある。今後も,この技術を皆様の力で育てて,「新たなる未来のページ」を作っていただきたい。

 

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