X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第5回X線動態画像セミナー[2023年10月号]

第4部

総 括

座長
長谷部光泉 氏 東海大学医学部医学科専門診療学系画像診断学領域教授

コメンテーター
近藤 晴彦 氏 杏林大学医学部付属病院病院長 *第1部座長
高瀬  圭 氏 東北大学大学院医学系研究科放射線診断学分野教授 *第2部座長
黒﨑 敦子 氏 公益財団法人結核予防会複十字病院放射線診療部部長 *第3部座長
權  寧博 氏 日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野教授
田中 利恵 氏 金沢大学医薬保健研究域保健学系准教授
由地良太郎 氏 東海大学医学部付属八王子病院診療技術部放射線技術科
井上 義一 氏 一般財団法人大阪府結核予防会大阪複十字病院顧問
工藤 翔二 氏 公益財団法人結核予防会代表理事

座長 長谷部光泉 氏 東海大学医学部医学科専門診療学系画像診断学領域教授 コメンテーター 近藤 晴彦 氏 杏林大学医学部付属病院病院長 *第1部座長 高瀬  圭 氏 東北大学大学院医学系研究科放射線診断学分野教授 *第2部座長 黒﨑 敦子 氏 公益財団法人結核予防会複十字病院放射線診療部部長 *第3部座長 權  寧博 氏 日本大学医学部内科学系呼吸器内科学分野教授 田中 利恵 氏 金沢大学医薬保健研究域保健学系准教授 由地良太郎 氏 東海大学医学部付属八王子病院診療技術部放射線技術科 井上 義一 氏 一般財団法人大阪府結核予防会大阪複十字病院顧問 工藤 翔二 氏 公益財団法人結核予防会代表理事

 

第4部では,第1部〜第3部の座長を務めた3氏に加え,第1回セミナーの開催当初からX線動態撮影(DDR)に携わる医師・診療放射線技師など計8名のコメンテーターが参加し,総括が行われた。各講演で報告された知見や臨床応用例のほか,撮影手技の標準化や診療報酬など,DDRの今後の課題や展望について活発なディスカッションが行われた。

第1部〜第3部の総括

海外での研究・応用例や整形外科領域での初の臨床例を報告

長谷部氏:今回はRSNA受賞演題に基づく報告や英国での臨床応用例の紹介などに加え,新たな臨床的知見が多く報告された。本セミナーも5回目を迎え,研究・臨床のフェーズが変わりつつあることを感じる。
近藤氏:第1部の山崎誘三先生による特別講演では,肺血流評価における胸部X線動態撮影(DCR)の有用性が報告された。中でも,肺血栓塞栓症(PE)や慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対する応用は,今後,他施設でも適応が広がるだろう。また,急性症例への対応などではポータブル撮影装置が有用であり,今後のフィードバックにより,ピットフォールの解消などにつながるのではないか。
高瀬氏:その通りで,集中治療室から移動せずに検査を行えるなど,ポータブル撮影装置の登場は非常に意義が大きい。また,昆 祐理先生の報告にあった腹臥位療法のリアルタイムでの評価などは,DDRとX線動画解析ワークステーション「KINOSIS」にしかない特長である。さらに,FitzMaurice先生の報告では,生理学的な解析を含めたDDRの可能性が提示された。ほかにも第2部では定量評価への取り組みも示され,DDRの将来性を感じさせた。
權氏:当院には慢性の息切れを主訴とする患者が多く来院する。呼吸器疾患と循環器疾患の鑑別が求められるが,心臓超音波検査などは検査枠や時間の制約上,すぐに実施できない場合も多い。そのため,平岩宏章先生が示したように,DDRがより簡便な検査法として臨床応用されることが求められる。
黒﨑氏:DDRは開発当初より整形外科領域での有用性が期待されていたが,今回の第5回セミナー第3部で初めて具体的な臨床報告が行われた。2022年に公開したDDRのデジタル症例集「DDRAtlas」でも,現在公開中の呼吸器領域に加えて,整形外科領域でも症例を蓄積していきたい。
工藤氏:放射線医学は,高分解能CTなどに代表されるように,より高精細な画像の実現が追求されてきた。DDRは,それとは別に「形態から機能へ」と進化を重ねており,今回のセミナーで機能評価に関するデータが示されたことは大きな意義がある。
井上氏:DDRは日本が世界に発信している誇るべき技術であり,本日の発表は大変勉強になった。課題やピットフォールも示されたが,DDRに対する関心は高まっており,今後も多くの発表が望まれる。

DDRを巡る今後の課題と展望(1)

撮影手技の標準化の必要性

田中氏:機能評価に有用な動画像を得るには,高難度の撮影技術が要求される。特に,呼吸器疾患のフォローアップでは,深呼吸や息止めの状態などで再現性が左右されてしまう。現在,DDRに関する情報を発信・共有するユーザー会をコニカミノルタ社主催で開催しており,各診療科と放射線診療部門が協力し,撮影手技,プロトコールを作り上げることが大切だと考えている。
由地氏:DDRは患者の負担が少なく,医師にとってオーダしやすい検査だが,一方で撮影を担う診療放射線技師にとっての簡便性も重要である。例えば,整形外科領域では患者に適宜,腕などを動かしてもらうため,コミュニケーションを取りつつ撮影を行う必要がある。同時に,被ばく線量と再現性維持の兼ね合いなども考慮して,撮影手技や撮影手順を標準化していく必要がある。

DDRを巡る今後の課題と展望(2)

DDRの保険収載への期待

高瀬氏:診断に応用可能な精度の動画像を得るには一定の手間を必要とするため,人件費などのコストが確保されないと施設としては臨床応用しづらい面がある。例えば,当初はICUでの呼吸機能変化の観察など,限られた領域で有用性を示して保険収載を実現し,順次対象範囲を拡大することも可能ではないかと考える。
工藤氏:現在,外科系学会社会保険委員会連合(外保連)がDDRの保険収載に向けた働きかけを行っていると聞いている。保険収載は必ず実現すると期待している。

まとめ

長谷部氏:DDRによって得られる情報量が多くなることで,これまでとは異なる新たな知見も示されている。一方でその歴史はまだ短く,撮影手技や応用範囲など発展の余地は大いにある。今回のセミナーを視聴した医療従事者からも,さらなる臨床報告や新たな発想の提案などがあることを期待したい。

 

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