X線動態画像セミナー(コニカミノルタ)

第5回X線動態画像セミナー[2023年10月号]

総 評

総評1 井上 義一(一般財団法人大阪府結核予防会大阪複十字病院顧問)

胸部画像診断の国際学会である「Fleishner Society」では,画像を中心とした最新の胸部疾患診断に関する成績が発表されている。2020年に会長として大阪で開催させていただいた時は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行のためバーチャル開催となり,2021年もイタリア開催の予定であったがバーチャル開催となった。2022年にはオランダアムステルダムで現地開催,2023年は米国カリフォルニアで現地で開催された。
対面での会議がかなわない間も議論を行っていたが,その間の最も大きな話題は,人工知能(AI)による画像評価についてであった。現在,腫瘍やびまん性肺疾患などを中心としたさまざまな領域で,特にCT画像に対するAIを用いた定量化の取り組みが進んでいる。ある程度の定量化が実現しているが,動態画像に対するAIの活用はあまり進んでいないのが現状である。そのような中,単純X線写真を動画像として撮影・評価するX線動態撮影(DDR)は非常に画期的である。日本が先行して研究開発を行っている,大変期待される技術である。
また,AIによる画像評価には医師の診断に基づいた教師データによる確実な学習が重要であり,定量化やそれに基づいた診断の実現には,もう少し時間がかかるのではないかと考える。さらに,AIによる診断は形態学に準じている。DDRは,二次元の単純X線写真を用いたものであり,非常に単純化しやすい。また,被ばく線量も少なく,ポータブルX線撮影装置の登場により場所を選ばず撮影可能になったことも大きな進展である。
第4部でDDRの保険収載に関する話題もあったが,保険収載により多くの施設で使用が可能になることで,さらに多くのデータが蓄積され,実際の臨床応用範囲の拡大にもつながるのではないかと期待される。また,技術の簡便性は世界での発展を後押しする。DDRといえば,大昔に流行った「Dance Dance Revolution」を思い出すが,DDRのフル表記は「Dynamic Digital Radiography」だが,最後の「R」は「Revolution」も意味しうるのではないかと考えている。

総評2 工藤 翔二(公益財団法人結核予防会代表理事)

X線動態画像セミナーも第5回を迎え,過去4回に続いて充実した報告が行われた。今回は,山崎誘三先生によるすばらしい特別講演に始まり,海外からの報告や循環器,胸部外科領域に加え,初となる整形外科領域の講演が行われ,大変有意義なセミナーであった。
私は2008年からDDRに携わってきたが,2011年の第3回呼吸機能イメージング研究会で複十字病院の発表が受賞して以来,第4部でも申し上げた通り,「形態から機能へ」と進化を続けるDDRを日本から世界に発信していくことに使命感を感じている。その後,2016年の北米放射線学会(RSNA)で山田祥岳先生(Harvard Medical School,現・慶應義塾大学)と第4部のコメンテーターを務めた田中利恵先生が,さらに2022年には山崎先生が受賞している。また,現在日本国内の約80施設を含む世界150超の施設でDDRが導入され,60超の英語論文が発表されている。DDRは確実に世界で受け入れられており,今後も発展していくと確信している。
また,長年にわたりDDRを牽引されている幡生寛人先生(Harvard Medical School)の下でも,さらに広い領域でのDDRの研究開発が行われ,国内では第4部で田中先生が紹介されたように,コニカミノルタ社主催でユーザー会が開催されている。
第2部で講演したFitzMaurice先生は,英国リバプールの病院に所属し,DDRの臨床応用に精力的に取り組んでいる。ビートルズで有名なリバプールからメッセージが寄せられ,彼の地と日本が結ばれていることを大変嬉しく感じている。DDRを,日本から世界と共に発信し,このすばらしい技術が今後世界で医療の発展に寄与することを心から期待している。

 

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