Philips INNOVATION and VALUE(フィリップス・ジャパン)
2026年8月号
Ultrasound Flash 5100 POC Expert Interview
刻一刻と変化するICU患者の病態を明瞭な画像で描出し,迅速で的確な意思決定を支える「Flash 5100 POC」 東京女子医科大学集中治療科客員教授・野村岳志先生に聞く
集中治療室(ICU)では患者の病態が刻一刻と変化し,迅速かつ的確な意思決定が求められる。その中で,ベッドサイドでリアルタイムに診断・評価が可能なPOCUS(Point-of-Care Ultrasound)は不可欠なツールとなっている。ICU診療におけるPOCUSの普及・教育を牽引してきた東京女子医科大学集中治療科客員教授・野村岳志先生に,ICUにおけるPOCUSの意義と,2026年4月に発売されたPOC領域向けに設計されたフィリップスの超音波画像診断装置「Flash 5100 POC」の臨床的価値について聞いた。
「その場ですぐに」の病態評価でICU診療を支えるPOCUSの重要性と役割の変化
─ICUの現場でのPOCUSの主な役割を教えてください。
ICUの現場では,重篤な患者さんの状態が刻々と速いスピードで変化します。その変化をリアルタイムでとらえ,新たな病態に移行していないかを即座に判断すること,さらに治療が適切に効果を発揮しているかを確認すること,この2つがPOCUSの大きな役割です。POCUSをICUで活用するため,われわれは2010年ごろからハンズオンセミナーを開催するなど,普及と教育に取り組んできました。POCUSはその場で診断できる利点からコロナ禍にICUの現場で一気に広まりましたが,正しい利用法が知られないまま用いられていたという側面もありました。
2021年にThe New England Journal of MedicineでPOCUSには教育が必要との総説が発表されたこともあり,日本集中治療医学会では2023年に「集中治療超音波画像診断認定制度」を設立し,ICUで適切にPOCUSを利用できるように教育に力を入れています。
最近ではPOCUSの概念が少しずつ変わりつつあります。以前は「ちょい当て」と言われるベッドサイドでの簡便な評価が主でしたが,現在は患者さんの病態を一点で評価するのではなく,救急外来やICU,一般病棟,退院後の外来フォローと,経時的に変化する患者さんの病態をシームレスに追跡するツールとなっています。
─なぜICUでPOCUSが重視されているのでしょうか。
最大の理由は,患者さんを搬送せずにその場で検査できる点です。人工呼吸器やECMOを装着している重症患者さんをCT室などに搬送すること自体が大きなリスクですし,搬送中の急変や医療機器トラブルの危険も伴います。さらに感染対策の観点からも重要です。COVID-19やインフルエンザなどの患者さんでは,移動そのものが院内感染のリスクになりますが,POCUSは隔離環境のまま診断が可能です。そして,もう一つは即時性です。常に変化し続ける患者さんの病態をその場ですぐに把握できるため,治療方針を即座に判断できます。ICUではその日の治療のゴールを決めるために,毎朝のPOCUSが欠かせない存在になっています。
循環・呼吸管理から脳評価,リハビリまで現場で広がるPOCUSの活用
─ICUで特に有用性が感じられるのはどのようなシーンでしょうか。
最も有用なのは循環不全で,特に敗血症の患者さんの病態把握では必須です。敗血症性ショックは,当初は心臓は過収縮で,病態の増悪により低収縮となります。治療法が変わるため心エコーで心機能を正確に把握することが重要です。また,ショック時の輸液管理においても有効です。ショックは4つに分類されますが,心原性ショックでは心臓自体の動きが低下している場合と,弁が壊れて血液を送れない場合があり,鑑別が必要です。閉塞性ショックでは緊張性気胸や心タンポナーデを迅速に診断でき,循環血液量減少性ショックはPOCUSで血管内に血液がないことがすぐにわかります。また,敗血症性ショック時の輸液では,血液が肺に漏出する漏出性肺水腫を引き起こすため,どこまで輸液をするかの判断にもPOCUSが必要です。
呼吸管理においても重要で,肺水腫の評価や胸水の確認,呼気終末陽圧(PEEP)の調整,抜管判断など,治療のあらゆる場面でPOCUSが活用されています。経気管的に始まった肺エコーは,コロナ禍以後,体表からの観察でさまざまな所見を複合的に評価することで診断精度が上がる方法が周知され,現場に広がっています。
─ほかの領域でもPOCUSは用いられていますか。
海外では,経頭蓋ドプラで脳血流を観察し,脳血流波形から脳圧を把握する手法が多用されており,最近では国内でも若手医師を中心に広がっています。脳圧センサーを挿入せずに脳圧を評価できるため,ICU内での意識レベルと併せた管理に有用です。また,術後管理では,深部静脈血栓(DVT)を評価してリハビリの可否を判断しているほか,理学療法士が無気肺に対する呼吸リハビリや,集中治療後症候群(PICS)での筋力低下を抑制するためのリハビリを行う際にも活用されています。
最近では,POCUSとして経食道心エコーを行うケースも増えています。挿管やドレナージにより体表からの心臓の観察が難しい場合にも信頼性の高い心臓の観察が可能なため,心臓手術が多い東京女子医科大学でも活用しています。
鮮明な画質と直観的な操作性・堅牢性でICUからフォローアップまで支援する「Flash 5100 POC」
─Flash 5100 POCの第一印象はいかがでしたか。
まず非常にコンパクトで,ICUのように機器が多い環境でベッドサイドに持って行くことを考えて設計されていると感じました。堅牢性が高く,起動が非常に速いこともICUでは重要なポイントです。操作ボタンはタッチパネルディスプレイに集約されていますが,ゲインやデプスといった頻用操作は物理ノブのため直観的に操作でき,短時間での評価が求められるICUに適しています。
また,コード類が床に付かず,ノブが少ないため清拭しやすいことに加え,トランスデューサホルダがディスプレイ上部にあるため無意識にトランスデューサに触れてしまうことがなく,交差感染のリスクの低減にも寄与すると感じています。
─画質についての評価をお聞かせください。
昔からフィリップスの装置は実績を重ねたトランスデューサ技術により高コントラスト画像を得やすいことが特長ですが,Flash 5100 POCにも引き継がれており,鮮明な画像が得やすく,迅速で適切な判断に寄与すると感じています。特にICUでニーズの高い心臓の画像は良好で,コンベックストランスデューサを用いても心臓細部まで描出できることに驚きました。1本のトランスデューサで腹部から腹部・胸腔内,心臓まで評価できることは,救急現場でも大きな武器になります。また,画質の良さは診断精度だけでなく教育にも直結し,経験の浅い医師の理解を促進し,学習意欲を高めます。多職種カンファレンスにおいても明瞭な画像を見ながら議論することで,チーム全体の理解と合意形成が深まると実感しています。
さらに,現在のPOCUSには経時的に患者さんの病態を追っていく役割が求められていることから,フォローアップまで含めた各段階で,誰が見ても評価できる画像を取得することは重要です。POCUSにおける画質はますます重要な要素になっており,Flash 5100 POCはその要求にも応えることが期待されます。心不全の患者さんはICUや入院,在宅を繰り返し,生涯にわたって治療が必要なケースが多いですが,Flash 5100 POCはEF自動計測など循環器領域向けの機能が充実しており,急性期のみならず心不全患者の長期的フォローにも適している点が特長で,例えば初回の画像をFlash 5100 POCで取得しておくなどの活用方法は有用だと思います。
〔Flash 5100 POCにおける多様な臨床シーンでの描出例とmL26-8リニアトランスデューサ〕
a:S5-1 心尖部四腔像 b:X8-2t 僧帽弁逆流
c:eL18-4 Needle visualization d:mL26-8 橈骨動脈
e:mL26-8リニアアレイトランスデューサ
小児も含めて対応可能なFlash 5100 POCのICU診療への貢献に期待
─ICU診療にもたらす価値をどのように評価されますか。
循環器ICUでは,フィジカルアセスメントと併せて心臓は日々行われる必須の検査です。その中で,Flash 5100 POCは精密な検査をするためのPOCUS装置として適した性能を備えています。
また,超高周波ホッケートランスデューサ(mL26-8)も使えるため,ICUでも増えている透析患者への穿刺手技や,小児ICUで2mmほどの細い血管でルートをとる際にも有用です。Flash 5100 POCは上位装置とのトランスデューサの互換性が高いことから,ICUでは小児心エコーの装置を別に用意する場合が多いですが,小児用セクタトランスデューサを整備すれば1台で小児から成人まであらゆる検査への対応が見込まれると思います。
─今後の期待や展望についてお聞かせください。
今後はAIによる自動評価や,過去画像とのリアルタイム比較,レポート作成の自動化などが進めば,ICU診療の質と効率はさらに向上するでしょう。POCUSはすでにICU診療に不可欠な存在で,明瞭な画質と直観的な操作性を追求するFlash 5100 POCは,迅速な判断を求められるICUの現場に適した装置であり,今後のICU診療を幅広く支える装置として期待を寄せています。
(2026年6月4日取材)
野村岳志 先生
1986年 広島大学医学部卒業。東京女子医科大学医学部医学科集中治療科教授,横浜市立大学大学大学院医学研究科客員教授などを歴任し,現在,東京女子医科大学集中治療科客員教授,医療法人徳洲会周術期医療地域支援室室長など複数兼任。日本集中治療医学会集中治療科専門医・集中治療超音波画像診断認定医,日本麻酔科学会指導医。
