Philips INNOVATION and VALUE(フィリップス・ジャパン)
2026年11月号
Ultrasound EPIQ Elite Elevate Plus Expert Interview
微細血流のカラーフロー評価の革新に挑む「EPIQ Elite Elevate Plus」と「Flow Viewer」の臨床価値 東京医科大学病院画像診断部外来エコーセンター・河本敦夫先生に聞く
株式会社フィリップス・ジャパンは,超音波画像診断装置「EPIQ Elite/Affiniti」シリーズに「Elevate Plus」を追加し,2026年5月より販売を開始した。自動化機能や画像処理技術の進化により検査効率と診断精度の向上が期待されるElevate Plusは,診断や治療効果判定に有用な情報を提供する血流評価においても機能強化が図られている。今回,新製品評価を行った東京医科大学病院画像診断部外来エコーセンターの河本敦夫氏に,血流評価を中心にインタビューした。
迅速な診断と治療方針決定を支援する外来エコーセンターにEPIQシリーズを導入
─外来エコーセンターの概要と役割についてお聞かせください。
当センターは2010年に設立され,各診療科からの紹介患者に対して外来で迅速に超音波検査を提供し,診断や治療方針決定を支援することを目的に運営しています。医師,診療放射線技師,臨床検査技師,看護師など多職種で構成され,9台の超音波画像診断装置を用いて心エコーを除く全身領域の検査を提供しています。検査数は右肩上がりで2025年は2万5000件弱に上り,ソノグラファーは1日に14〜20件ほどの検査を実施します。当院は904床の特定機能病院,がん診療連携拠点病院であることから,スタッフは複数の領域の認定資格を取得して,各領域で求められる専門性の高い検査に対応できる体制を整えています。また,医師や診療看護師への研修施設としての役割も担っています。
─EPIQシリーズ導入の経緯について教えてください。
フィリップスの超音波画像診断装置は循環器領域に強いという印象でしたが,海外の学会では心エコー以外での活用も多く報告されており,当センターでも使いたいと考えていました。そのような中,乳腺領域に力を入れていた2018年に,乳腺エコーを支援する「AI Breast機能」が発売され,それを契機にEPIQの導入に至りました。EPIQは,特に乳腺や血管の描出に適しており,2025年12月にはEPIQ Elite Elevateへアップグレードして全身の検査に活用しています。
─腹部・表在領域における血流評価の重要性についてお聞かせください。
近年,各社がMVFI(microvascular flow imaging)の技術を製品に搭載するようになり,従来のカラードプラでは描出が難しかった微細血流を可視化できるようになったことで,血流評価の重要性が高まっています。微細で低流速な血流を描出できることから,虚血や炎症の評価に加え,分子標的薬など治療法が進歩しているがん治療の治療効果判定にも活用されています。MVFIに関する学会での発表も増え,ガイドラインにも盛り込まれるようになったことで,最近では医師から直接「MVFIで評価してほしい」と依頼されるケースも増えています。EPIQに搭載されたMVFI技術「MicroFlow Imaging(MFI)」や,感度と分解能をより高めた「MFI-HD」を活用した血流評価を行っており,臨床側からも有用な情報として評価されています。
Flow Viewerが血流評価ワークフローを変えわかりやすく確度の高い情報提供を支援
─EPIQ Elite Elevate Plusで評価されたFlow Viewerの印象はいかがでしたか。
3か月間のデモ評価を行ったFlow Viewerは微細血流の視認性が大きく向上し,「血流評価は最初からFlow Viewerで」と,現場の認識がすっかり変わりました。Flow Viewerは,パワードプラ値に拡散および鏡面効果を合成して3Dレンダリングを行い,血管系を3Dのように表示します。血流情報に立体感が生まれることで,血管の走行や構造が理解しやすくなり,特に肝門部のように動脈,門脈,静脈が複雑に絡み合っているようなところで真価を発揮します。
検査時に血管のねじれや分岐,隣接する血管などの立体構造を理解しやすいことはもちろんですが,情報伝達においても大きな利点となります。報告書に貼付する診断上重要な情報を端的に伝える血流情報は1枚で表現することが容易ではなく,われわれソノグラファーは画像の取得に日々腐心しています。Flow Viewerにより誰が見てもわかりやすいキー画像を取得しやすく,依頼医への報告,ひいては医師から患者への説明でも有用な情報の提供に役立っています。ソノグラファーのことを考えた技術であると言えるでしょう。
─Flow Viewerの評価を行った3か月間,日常臨床にどのような変化がありましたか。
Flow Viewerは,カラードプラ,パワードプラ,MFIなど,各血流モードに適用できます。普段,新しい機能を使う時は従来画像を基本に,ここぞという時に用いたりしますが,Flow Viewerは一度使うと最初からFlow Viewerで見るようになりました。特に,MFI-HDとの組み合わせは効果的であると感じます。従来,微弱な血流の有無を確実に評価することは容易ではなく,感度を上げるほどノイズも増えるため,虚血を疑っていても「可能性が高い」という表現にとどまることが少なくありませんでした。しかし,MFI-HDとFlow Viewerを組み合わせることで微細血流の有無をより高い確度で評価できるようになり,血流が確認できなければ「虚血と考えられる,虚血と矛盾しない」と臨床へ伝えられる場面が増えました。超音波画像診断として,より確信度の高い所見を臨床側に提示できるようになったことは,大きな進歩だと思います。
〔Flow Viewerの臨床画像〕
図1 精巣の血流評価 精巣の血流(正常例)の縦断面(a)および横断面(b)でのMFI-HD+Flow Viewerによる血流評価。精巣捻転疑いだったが,虚血がないことが示唆された。
図2 肝細胞腺腫(inflammatory type) 2Dエコー画像(a)で,S4下端の低エコー腫瘤(25mm,表面平滑)を認めた(↓)。MFI-HD + Flow Viewer(b)による血流評価では,車輻様血流とは異なるチリチリとした(とぐろを巻くスクリュー状)豊富な血流パターンを認めた(↓)。肝針生検にて,inflammatory HCA(肝細胞腺腫)と診断された。
図3 Fat poor AML(血管筋脂肪腫) 2Dエコー画像(a)で,実質より低輝度の腫瘤を認めた(↓)。MFI-HD+Flow Viewer(b)による血流評価では,腫瘤への血流(多血性)を認めた(↓)。CTで,脂肪の乏しい血管筋脂肪腫(fat poor AML)であるhyperattenuating AMLと診断された。
微細血流や血行パターンを可視化するFlow Viewerがもたらす診断価値
─Flow Viewerが有用だった症例について,具体的に教えてください。
代表的な症例として精巣捻転があります。精巣の血流はもともと低流速で評価が難しい領域ですが,精巣捻転は小児に好発し,小児では精巣が小さく血流信号が微弱なため,血流評価に難渋することがあります。Flow Viewerでは精巣内血流を明瞭に確認でき,臓器虚血の評価で有用と感じています。
また,肝細胞腺腫はまれな疾患ですが,従来EPIQのカラードプラでは限局性結節性過形成に特徴的な車輻様血流に類似した血流パターンを示し,鑑別しにくいことがありました。これに対してFlow Viewerでは,血流の奥行き感が表現され,車輻様血流とは異なるとぐろを巻くようなスクリュー状の血流パターンであることを確認できました。
腎血管筋脂肪腫の中には脂肪が乏しいものがあり,2D画像では悪性と紛らわしいことがありますが,Flow Viewerを用いることで腫瘤内の微細な血流構築をより明瞭に描出でき,鑑別に有用な情報を得ることにつながります。ほかにも感染性腸炎では,通常は点状に描出される終末回腸の壁内血流が連続的に描出され,炎症が生じていることを確認できるなど,診断に有益な情報の取得に有用だと感じます。
多職種が活用しやすい装置で超音波検査の裾野の拡大に期待
─そのほかに評価されている機能はありますか。
EPIQに搭載された「Scan Assistant」は,誰が検査しても一定の品質を保つことをめざして設計された操作支援機能で,経験年数やスキルに差があるスタッフによる検査の標準化や,限られた研修期間を有意義に使うために役立っています。さらに,単結晶トランスデューサ「eL18-4」は,浅部から深部まで均一に良好な画像を描出できるとスタッフからも評判が良く,当院では日常診療で欠かせないものとなっています。
─今後の超音波画像診断装置への期待をお聞かせください。
超音波画像診断装置はここ30年で飛躍的に進歩し,POCUSが普及するなど活用の裾野が広がっています。今後は多職種がより活用しやすい方向へ進化していくことを期待しています。Flow Viewerのような先進的な技術を数多く生み出してきたフィリップスは,これからも臨床価値の高い新しい技術を提供してくれるものと注目しています。
(2026年8月26日取材)
河本敦夫 先生
東京医科大学病院画像診断部外来エコーセンター主査。2010年 金沢大学大学院医学系研究科博士前期課程修了。2016年 同後期課程単位取得,保健学博士。日本超音波医学会認定超音波指導検査士(腹部領域・体表臓器領域)。
