技術解説(フィリップス・ジャパン)

2018年7月号

医療関連メーカーのAI開発最前線

フィリップスのヘルスケアAI─アダプティブ・インテリジェンス

相澤  仁[(株)フィリップス・ジャパン戦略企画・事業開発統括本部]

ヘルスケアテクノロジーのリーディングカンパニーであるフィリップスは,人工知能(AI)を積極的に活用し,ヘルスケアソリューションの開発を加速させている。フィリップスは,長年培ってきた医療機関などとのビジネスを通じて得た経験と知見・洞察の上に,AI技術を取り入れている。これを「アダプティブ・インテリジェンス」と呼ぶ。アダプティブ・インテリジェンスは,AI活用による課題解決領域の広さに特徴がある(図1)。

図1 フィリップスのヘルスケア領域適用領域

図1 フィリップスのヘルスケア領域適用領域

 

(1) Decision Support
早期の高品質なclinical decisionのため,多種多様なデータを収集し,AI解析する必要がある。それにより,患者一人ひとりにとってより良いアウトカムを実現するための洞察を導出し,適切なヘルスケア(医療)介入を支援する。

(2) Operational Optimization
診断時間短縮などのオペレーション最適化・効率化は,医療機関だけでなく患者にもメリットが多い。医療機関は,診断装置の回転率の向上や早期診断支援プロセスなどにより診断患者数を最大化でき,患者にとっては診断に伴う負担軽減につながる。

(3) Empowering Patients
医療の選択に患者が参加することは重要である。特に,ホームケアおよび健康な生活・予防に対しAIを活用し,患者(健康な人々)自らが健康・予後に関する健康管理を可能とするサービスを実現する。

(4) Enabling Population Health Management
病因論が多因子的・確率論的な慢性疾患は,患者を集団としてとらえ,患者集団のデータを広くリスク分析し,患者集団の予防に関する洞察をAIにより導出し,患者一人ひとりに合った早期ヘルスケア(医療)介入を支援する。

フィリップスは,ヘルスケアの価値連鎖(Health Continuum:健康な生活→予防→診断→治療→ホームケア)を統合および循環する革新的なソリューションにより,一人ひとりの生活の質の向上を実現していく。(1)および(2)は主に医療機関内(診断・治療)が中心だが,(3)および(4)健康な生活・予防およびホームケアに対するソリューションへのAI活用である。

AIを活用したソリューションの核となるAIモデルは,フィリップスのみでは開発できず,主にclinical dataを保有する医療機関などとの協創となる。そのため,3つの構成要素からなるデータサイエンスプラットフォーム「HealthSuite Insight」を構築し,提供を開始した(図2)。このプラットフォームとAIモデル開発方法論を活用し,フィリップスのclinical data scientistとAIモデルを開発していく(Analytics as a Service)。

図2 HealthSuite Insightの3つの構成要素

図2 HealthSuite Insightの3つの構成要素

 

Workbench(作業台)は,GPUで構成されるIT基盤で,各種データを使いAIモデル(Insight)を構築する。構築したAIモデルをoperationalizeするために,Runtimeで各種システムおよびモダリティなどに実装できる形にし,AIモデルを活用したサービス・ソリューションを実現する。今後の多種多様な課題を早期に解決するために,開発したAIモデルの転用・再利用,さらにはそれらの組み合わせによる新たな洞察の導出も重要となる。それを実現するのがMarketplaceと呼ぶAIモデルのリポジトリであり,AIにおけるオープン・エコシステムである。

フィリップスのAIの特徴は,Health Continuum全域をカバーする領域の広さと,AI as a Serviceとして提供されるプラットフォーム,構築したAIモデルのほかのソリューションへの適用を容易にするオープン・エコシステムである。フィリップスが開発してきたAIモデル(MRI脳腫瘍診断,CT肺がん診断,骨年齢推定など)がすでにMarketplaceに載っており,それらの再利用などにより早期のAIモデル開発を実現している。

 

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