技術解説(フィリップス・ジャパン)

2019年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

循環器領域におけるシームレスなITソリューション

清水 俊博(ITビジネスマーケティング・グループCardiology Informaticsプロダクトマネージャー)

日本が超高齢社会を迎える中,循環器疾患が増加していることに加えて,医療技術の進歩により,その診断および治療は多様化している。その結果,循環器領域では多岐にわたる医療情報が存在している。このため,臨床の現場においては血管撮影,CT,MRI,超音波などの臨床画像データをはじめ,心電図や血液検査などの生理検査データ,検体検査データや所見レポートなどを統合して,迅速かつ確実な診断,治療を行うことが望まれている。今回紹介するフィリップスの循環器専用ネットワークシステム「IntelliSpace Cardiovascular(以下,ISCV)」は,現在の循環器領域の医療環境を背景に開発されている。その特徴について紹介する。

‌●循環器支援プラットフォーム

循環器疾患の診断・治療を進めるに当たり,現在や過去のさまざまな情報を迅速に共有することで,診断・治療をスムーズに進めることができる。
ISCVのプラットフォームは,この画像表示から解析,その後のレポーティングまで,循環器領域のさまざまなシーンで効率的に運用するための特徴的な機能を有する。
 ISCVの主な特徴として,以下の4つを紹介する。

・検索・供覧機能
・プラグインによる解析機能
・国内開発のレポーティングシステム“InGent Report(以下,iReport)”
・拡張機能

‌●検索・供覧機能

多岐にわたる診断データの検索・供覧を効率化するため,以下の2つの特徴を有する。

1.タイムライン
循環器領域の患者の特徴として心疾患の再発や,過去のイベントとの関連性を確認するために比較的長い期間のデータ参照が必要である。また,扱うデータもさまざまな検査・診断のデータが元になるため,時系列上の情報量は多くなる。“タイムライン”(図1)は,このデータを統合することを目的として,時系列で検査・診断結果およびそのレポートを把握することに重きを置いてデザインされている。個々のモダリティの検査画像や生理検査のデータなどの情報は,わかりやすいアイコン形式にすることで,多くの情報を1つのライン上に表示することを可能としている。
そのアイコンをクリックすることで,タイムライン表示下のビューワに画像や検査データなどの情報を表示できる。また,アイコンを表示する期間はスライドバーで調整可能であるため,年から日の単位まで表示を変更することができる。
さらに,表示するさまざまな情報をフィルタリングする機能も搭載しているため,同一検査での経時的な比較を容易に可能にしている。
このタイムライン機能により,その診断に必要とする患者の検査・診断データを迅速に確認することが可能となる。

図1 タイムライン表示

図1 タイムライン表示

 

2.Webビューワ
タイムライン表示下のビューワはWebベースで開発しているため,電子カルテをはじめとする院内配信端末からの参照が可能となる(図2)。同一検査での過去データの比較表示はもとより,血管撮影に関してはバイプレーンモード,超音波検査に関してはストレスエコーなどとさまざまな画像データをフレキシブルに表示させることが可能となり,診断のシチュエーションに応じた画像供覧を可能とする。また,画像情報以外にも所見レポート,ECG,スケッチ図も取り込んで表示させることも可能であるため,カンファレンスなどでも有効活用できる。

図2 Webビューワ

図2 Webビューワ

 

‌●プラグインによる解析機能

ISCVは,タイムライン上の各モダリティのアイコンより,エコービューワやマルチモダリティビューワを起動することができる。エコービューワにおいては,超音波診断装置上で計測したDICOMストラクチャードレポート(以下,DICOM SR)の情報のレポート取得や再計測,解析ソフトウエアが使用可能である。また,超音波の画像解析については,フィリップスが2017年に買収したTOMTEC社のTOMTEC-ARENAもプラグイン可能であり,自社はもちろん多くのメーカーの超音波診断装置の画像解析も可能である。また,血管撮影領域ではPie Medical Imaging社の“CAAS”やMedis社の“QAngio XA”の冠動脈解析や左心室解析の解析プラグインが可能となる。このように,各画像解析に必要とするさまざまなベンダーの解析機能をシームレスに利用可能とする。

●国内開発のレポーティングシステム

iReportは,循環器診断・治療で必要とする画像データはもちろん,生理検査データ,検体検査データなど,所見レポートを統合するシステムである(図3)。このシステムは,日本の医師やメディカルスタッフの意見を反映させてシステム開発しており,各種計測結果のDICOM SRの自動取り込みはもちろん,各チームスタッフとのコミュニケーション機能,蓄積されたレポーティングから必要とする所見データを取得するデータマイニング機能など,臨床診断から教育・研究まで完結するシステムとなっている。

図3 iReport

図3 iReport

 

●拡張機能

近年のCTやMRIをはじめ,循環器領域における画像診断の進歩により,日常診断において画像解析する場面が多くなっている。日常の画像解析については,そのほとんどがCT室やMRI室にそれぞれ設置しているワークステーションで行われており,その解析結果はPACSサーバの容量の関係上,キャプチャ画像のみが配信されているケースが多くある。このため,診断後に疾患の治療方針を決める上で,追加の画像解析による結果が必要なシーンでは,各検査室に直接出向いて再度,解析を行うシーンも見受けられる。ISCVは,ネットワーク型ワークステーションと連携させることで,カンファレンス室や医局など,必要な場所で再解析を行う環境を提供できることから運用の効率化を実現できる(図4)。
さらに,フィリップスのネットワーク型マルチモダリティワークステーション「IntelliSpace Portal(以下,ISP)」と連携させることで,さらなる画像解析の効率化を図ることができる。例えば,CT検査室で解析状態として保存した冠動脈解析のデータを,医局のISCV端末上でも呼び出すことが可能となる。これにより,リアルタイムで再解析を行うことができ,必要とする計測結果や任意の方向からの画像を参照することができる。また,MRIにおいては,心機能解析はもちろん,遅延造影,心筋のT1マップおよびExtracellular volume fraction(ECV)など,高度な心筋性状解析をISCV上で行うことができる。ISCVを用いることで,複合的なモダリティのデータ解析を用いた迅速,かつ正確な診断・治療につなげることが可能となる。

図4 ISCVの連携例

図4 ISCVの連携例

 

今回紹介したISCVは,循環器領域の多岐に渡るさまざまなデータを専用のプラットフォームにまとめることで,シームレスに運用することができるシステムである。今後もフィリップスは,質の高い診断・治療を支えるトータルソリューションをはじめ,ヘルスケアIT領域においても病病連携,病診連携など,包括的なITソリューションを提供することで日本の医療環境に貢献していく。

 

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