技術解説(フィリップス・ジャパン)

2023年5月号

US Today 2023

進化を続けるフィリップスのAnatomical Intelligenceより〜PercuNav〜

宮本 順子[(株)フィリップス・ジャパン超音波ビジネスマーケティンググループ]

フィリップスは,2030年までに世界25億人の人々の生活を健やかにする,というビジョンを掲げ,健康な生活,予防,診断,治療,ホームケア,という一連の「ヘルスケアプロセス」を通して,患者のより良い健康,患者・家族の満足度向上,医療従事者の環境の改善,不要な医療コストの削減と収益改善,という4つの価値の実現を目標としている。

■フィリップス独自のAnatomical Intelligence

通常,診断および治療の質と精度を向上させようとすると,医療従事者の負担が増えるというように,一見,トレードオフの関係になりがちだが,その両方を同時に向上させるため,フィリップスは独自のAnatomical Intelligence(A.I.)を採用したソフトウエアを開発している。A.I.は,高度な臓器モデル化,パターンマッチング,定量化機能によって,迅速かつ再現性に優れた解析を実現する。

■PercuNav

近年,超音波ガイド下の局所穿刺療法においては,より小さな腫瘍に対する早期診断・治療が求められるようになり,安全で精度の高い穿刺手技を行うための支援ツールとしてイメージフュージョンの重要性が高まっている。しかしながら,フュージョンを臨床に取り入れるためには短時間で簡単かつ正確な位置合わせが必要である。フィリップスの「PercuNav」は,A.I.搭載の「Auto Registration」により,超音波1スキャン,1ボタンのシンプルな操作で,精度の高いフュージョンを1分以内に完了する。

1.Auto Registration
PercuNavは,超音波診断装置に取り込まれたCT/MR画像から自動で肝臓の血管走行と表面形状を立体モデル(LiverVue)として抽出し,Auto Registrationによって,超音波のファンスキャンから得られた3Dデータと立体的な位置合わせを行う。Auto Registrationは,(1) 肝臓内の血管走行を用いて指紋認証のようなアルゴリズムによって位置合わせを行うVessel-Based(図1 a),(2) 肝臓の表面形状を用いて顔認証のようなアルゴリズムによって位置合わせを行うSurface-Based(図1 b),この2つの手法を選択できる。どちらの手法も3Dモデルによる立体的な自動位置合わせを行うため,従来のプレーン法よりも高い精度,かつ迅速にフュージョンを行うことが可能である。

図1 Auto Registration

図1 Auto Registration

 

2.Tumor Contour(3D腫瘍輪郭マーカー)
「Tumor Contour」は,術前のプランニングにおいて,ターゲットとなる腫瘤の輪郭をセミオートでトレースし視覚化するツールである(図2)。トレースはCT/MR/USどの画像からも可能で,わずかな輝度差を自動で認識して立体的なトレースを行うため,不正形をした腫瘍の抽出も可能である。特に,CTやMRIでは描出されるものの,超音波では指摘しづらいターゲットも,あらかじめTumor Contourでその輪郭を描いておくことで,超音波上で正確な位置を同定しやすく,より確信を持って治療に臨むことができる。また,LiverVue上にも3Dモデルとして腫瘍が表示されるため,腫瘍の位置・形状・方向・大きさ・周囲の脈管との関係などをより直感的に把握でき,術者とその補助者との間で共通の空間認識として客観的にとらえやすい。アブレーション治療中には,アプリケータに「Needle Tracker」を装着することで,フュージョン画面上に仮想針が表示され,腫瘍の中心を貫いて刺入していることが確認できる(図3)。さらに,焼灼が進むにつれて発生するマイクロバブルによって,通常は元の腫瘍も針先も隠されていくが,3D腫瘍輪郭マーカーが元の腫瘍の輪郭と針先を表示し続けるため,適正に焼灼が行われているか,途中で針が抜けていないかを確認しながら治療を進めることができる。

図2 Tumor Contour(3D腫瘍輪郭マーカー) (画像ご提供:岩手医科大学病院・黒田英克先生)

図2 Tumor Contour(3D腫瘍輪郭マーカー)
(画像ご提供:岩手医科大学病院・黒田英克先生)

 

図3 RFA治療中にUS画面上に表示される3D腫瘍 輪郭マーカーとNeedle Trackerによる仮想針 (画像ご提供:岩手医科大学病院・黒田英克先生)

図3 RFA治療中にUS画面上に表示される3D腫瘍
輪郭マーカーとNeedle Trackerによる仮想針
(画像ご提供:岩手医科大学病院・黒田英克先生)

 

フィリップスは今後も,進化を続けるA.I.を活用しながら,冒頭に掲げた4つの価値の実現を目標に医療に貢献していきたいと考えている。

 

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