技術解説(フィリップス・ジャパン)
2025年8月号
Step up MRI 2025
Dual AI engineによるALL in ONE-GO画像再構成技術 ─「SmartSpeed Precise」開発コンセプト
小原 真*1/権 池勲*1/濱野 裕*2/上田 優 *1/米山 正己*1/ヴァン カウテレン マルク*1
■フィリップス画像再構成プラットフォームの変遷
MRIにおける高速化と高画質化両立のカギとなる技術として,deep learning reconstruction(DLR)が関心を集めている。フィリップス画像再構成技術で特長的なのは,DLRに代表される新しいトレンドを,既存技術と入れ替えるのではなく,Sensitivity Encoding(SENSE)1)と新技術を統合したONE-GOとして新たなソリューションを生み出す点である。そのソリューションの変遷が図1 a,bに示されている。
図1 aは,Compressed SENSE(C-SENSE)を紹介している。従来の画像再構成理論に前提条件を加え,逐次的に最適解を導いていく技術をphysics-drivenと呼ぶ。compressed sensing(CS)であれば,理論項はフーリエ変換により成立し,前提条件は画像のスパース性となる2)。C-SENSEの特長は,SENSEを,physics-drivenの理論項に据えてCSと融合したONE-GO Physics-Drivenとなっていることである。
C-SENSEのスパース変換とデノイズをDLRに置き換えたONE-GO Physics-Driven AIが,図1 bに示す「SmartSpeed AI」である3)。wavelet変換とデノイズを学習した「Adaptive-CS-Net」を用いて,よりスパース性の高い変換により,デノイズ効果を高め,情報劣化を最小限に抑えた高速化をねらっている。
図1 フィリップス画像再構成プラットフォームの変遷
a:C-SENSE
b:SmartSpeed AI
c:SmartSpeed Precise
■Dual AI engineによるALL in ONE-GOで設計された「SmartSpeed Precise」
SmartSpeed AIに,super-resolutionとanti-ringingにフォーカスした「Precise Net」を包含したのが,図1 cに示すSmartSpeed Preciseである。Dual AI engineデザインの下に,サンプリングからスタートするイメージングチェーンを1つに統合したALL in ONE-GOコンセプトで,高速化と高画質化をさらに高いレベルに導いていく。
SmartSpeed Preciseの特長は,Adaptive-CS-Net,Precise Netそれぞれに最適化するのではなく,k空間サンプリングの見直し(re-optimized sampling),ネットワークの最適化,そして全体のバランス調整など,全体最適化を行ったことである。Dual AI engineが有機的に各コイルのk空間データおよびcomplexデータの処理にかかわることで,情報損失を抑え,最終出力画像のクオリティを最大化する。
図2では,シングルショット7秒スキャンを比較している。3.5倍速によるブラーリングの軽減に加えて,SmartSpeed Preciseでは,再最適化されたサンプリングやPrecise Netの効果により鮮鋭度が高く保たれている。高速化と高画質化を兼ねたDLRのアドバンテージを生かすアプリケーションになりうると期待している。
図2 シングルショット全脳T2強調画像7秒スキャン
(プロトコールご提供:北海道大学病院・藤間憲幸先生)
ALL in ONE-GOコンセプトの最大の使命は,高速化スキャンによる安定した高画質画像の提供である。今後,Smart Speed Preciseに適したスキャンパラメータの最適化を進め,「New standard of care」としていきたい。
*AI技術は設計にディープラーニングを使用しており,実装後に自動的に装置の性能・精度が変化することはありません。
●参考文献
1)Pruessmann, K.P., et al. : SENSE : sensitivity encoding for fast MRI. Magn. Reson. Med., 42(5): 952-962, 1999.
2)Lustig, M., et al. : Sparse MRI : The application of compressed sensing for rapid MR imaging. Magn. Reson. Med., 58(6): 1182-1195, 2007.
3)Pezzotti, N., et al. : An Adaptive Intelligence Algorithm for Undersampled Knee MRI Reconstruction. IEEE Access, 8 : 204825-204838, 2020.
*1 (株)フィリップス・ジャパン プレシジョンダイアグノシス事業部 MRクリニカルサイエンティスト
*2 (株)フィリップス・ジャパン プレシジョンダイアグノシス事業部 MRビジネスマーケティングスペシャリスト
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