Intelligent CT『SOMATOM X.cite』Exciting Report

2021年7月号

東京慈恵会医科大学附属病院 AI技術搭載の最新CT導入で月1000件の救急検査の標準化と迅速化を実現 ─“myExam Companion”により50名以上の技師が携わる救急CT検査の質とスループットを大幅に向上

左から,影山耕平技師,平川英滋技師長。装置を挟んで庄司友和係長

左から,影山耕平技師,平川英滋技師長。装置を挟んで庄司友和係長

 

「SOMATOM X.cite」は,Siemens Healthineers(以下,シーメンス)が2020年春から発売した同社のSingle Source CTのハイエンド装置。最先端の性能や人工知能(AI)技術を用いた全自動撮影などを搭載,“Intelligent CT”のキャッチフレーズにふさわしく,施設の特色に応じた検査環境の改善に貢献する。装置の活用事例を紹介する本シリーズのScene3では,国内有数の大規模病院である東京慈恵会医科大学附属病院における,救急CTとしての導入例を取材した。

国内有数の大規模病院で多くの救急搬送にも対応

東京都港区に位置する東京慈恵会医科大学附属病院は,特定機能病院ならびに東京都指定二次救急医療機関として高度先進医療や救急診療を実施,1日の平均外来患者数は2793名(2018年度)に上り,国内でも有数の診療実績を持つ大規模病院である。
同院の放射線部は,75名の診療放射線技師が在籍。核医学・放射線治療と診断部門の2グループが,ローテーションで日々の検査・診療業務を担っている。2020年1月には新外来棟・母子医療センター開設に伴い,外来・検査部門が新外来棟に移動。1階に移転した救急部内には,救急専用のCT検査室や一般撮影室が設置された。

救急に最適なワイドボアCT SOMATOM X.cite

同院のCT検査件数は年間6万2000件で,そのうち救急CTは日勤帯で月平均700件,当直時間帯は月300~350件の計1000件程度実施している。同院では,救急CTとしてシーメンスの「SOMATOM Perspective」が稼働していたが,救急部の移転後,装置更新が検討された。その理由について,放射線部の平川英滋技師長は次のように説明する。
「SOMATOM Perspectiveはスループットの良さが評価されていましたが,稼働年数が長いことに加え,パンスキャンなど広範囲の撮影時,全身検査への対応が困難であるという課題がありました。当院は,急性心筋梗塞や緊急大動脈疾患の迅速な診療を目的とする東京都CCUネットワークなどに参画し,また24時間365日対応可能な脳卒中センターとしての機能も担っています。そのため,緊急の全身検査や心電図同期撮影,perfusion撮影などが可能な装置が求められていました」
そして,それらの条件に合致する装置として2020年12月に導入されたのがSOMATOM X.citeである。装置の選定に当たった庄司友和係長は,「救急現場では医療機器を装着した状態で搬送される例も多いことから,ガントリ開口径が大きいことは患者ポジショニングを考える上で重要です。SOMATOM X.citeはガントリ開口径が82cmとワイドボアであることに加え,82cmの最大再構成FOV(拡張FOV)が使用でき,臨床上大変有用です」と話す。また,最先端の機能を直感的に扱えるユーザーインターフェイスも魅力的だったという。

“myExam Companion”で夜間当直技師の撮影技術を標準化

夜間救急もローテーションで行うため,50名以上の技師がSOMATOM X.citeを操作することになる。自ずと画質のバラツキへの懸念が生じるが,それをフォローするのが検査ガイド機能myExam Companionや画像再構成・解析処理を自動で行う“ALPHA(Automatic Landmarking and Parsing of Human Anatomy)Technology”などのAI技術を用いた全自動撮影技術である。
myExam Companionは,患者の年齢や性別,体格などに加え,患者の状態に関する質問項目に回答することで,最適な撮影プロトコルや再構成処理が自動的に設定される。同院では,部位ごとに救急検査専用のプロトコルを6パターン設定。胸腹部検査では,息止めの程度により最適なピッチが調整されるほか,肩や膝などの検査では,患側の選択のみで複雑な画像処理を行うことなく,MPR画像を取得できるようにし,撮影者が操作に不慣れでも迷うことなく迅速に検査・処理が行えるようにした。現在,半数以上の症例でmyExam Companionを使用しており,平川技師長は,「夜間当直は2名で行いますが,必ずしも当直の技師がCT装置を日常的に操作しているとは限りません。しかし,myExam Companionにより,撮影者の経験によらず撮影技術の質の高さが保証されるようになりました」と評価する。
さらに,自動で撮影範囲を設定する“FAST Planning”やALPHA Technologyなどの機能により,撮影から画像処理までの時間が飛躍的に短縮された。影山耕平技師は,1検査あたりの処理が10〜15分速くなっているとし,「マルチコリンと呼ばれる新機能の導入で,一度の操作でaxial,coronal,sagittal 3方向のMPR画像を再構成できるようになりました。また,ほぼすべての救急搬送例でMPR画像を作成しますが,スループット向上により,あらかじめ多種類の再構成処理を行い,後から必要な画像を選択してPACSに送信する運用を行っています」と話す。加えて,ALPHA Technologyを活用した“Inline Results”による椎体や肋骨の自動ラベリング機能は,救急現場でのスムーズな画像確認および読影に貢献しているという。
また,同院に来院する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者は疑いも含めて1日10例程度だが,救急搬送の場合は,常に十全な感染対策を行うことを前提とする。そのため,myExam Companionにより短縮された作業時間を消毒・清拭などの感染対策に充てられるようになったことは大きなメリットである。さらに,10分間の換気中に処理画像も自動でできあがり送信まで完了するため,遅滞なく次の検査に進むことができる。

頭部CT検査におけるmyExam Companionの設定画面 タブレット端末および本体コンソールで設定可能

頭部CT検査におけるmyExam Companionの設定画面
タブレット端末および本体コンソールで設定可能

 

myExam Companionの適用例:頭部CT検査における撮影条件の変更

myExam Companionの適用例:頭部CT検査における撮影条件の変更
a:脳実質の評価を目的とした頭部単純CT(通常線量)
b: 頭部3D-CTAのサブトラクション処理を目的とした単純撮影(低線量・高速撮影)
c:3D-CTA画像

 

低管電圧撮影により造影剤や被ばく線量を低減

SOMATOM X.citeは,最大1200mAの管電流出力が可能なX線管「Vectron」や検出器「Stellarinfinity Detector」,逐次近似再構成“ADMIRE(Advanced Modeled Iterative Reconstruction)”により,空間分解能や低コントラスト検出能,画質向上などを実現している。このような高い基本性能は,腕を挙上できないなど,撮影条件に制限が生じるケースが多い救急CTにおいて,確実に撮影を行え,心強い。
さらに,低管電圧撮影による造影剤量や被ばく線量の低減も重要だ。庄司係長は,「出血例などでCT撮影後に血管撮影を行う可能性があることを考慮すると,緊急検査時の造影剤量は最低限に抑えることが望ましく,SOMATOM X.citeで低管電圧撮影が行えることは大変有用です。また,被ばく線量低減の効果も大きく,ADMIREやTin filterにより,頭部で約20〜25%,体幹部で約40〜50%の被ばく線量を低減できています」と評価している。

AI技術と共存し検査環境のさらなる最適化をめざす

同院では,さまざまなAI技術を搭載したSOMATOM X.citeの導入により救急CTの検査環境を改善した。だからこそ,検査を担う診療放射線技師の役割はさらに重要になっている。庄司係長は,「使用経験をフィードバックし,次の技術開発につなげることも私たちの責務です」と述べる。また,平川技師長は,「放射線部ではゼネラリストの育成をめざしていますが,AIを活用することで,スペシャリストにもなれる可能性があります。それが質の高い検査の標準化につながり,高レベルでの標準化は,病院の利益にもなります」と話す。SOMATOM X.citeは,診療放射線技師が業務に専念できる環境づくりにも良い影響をもたらしている。

(2021年5月13日取材)

myExam Companion Use Case

東京慈恵会医科大学附属病院▶頭部CT

適切な撮影条件の選択や機能の追加でより迅速かつ適切な診断・治療に貢献

東京慈恵会医科大学附属病院では,myExam Companionで救急撮影に合わせた撮影プロトコルをあらかじめ設定しており,例えば頭部検査では,外傷または脳卒中疑いなどの検査目的ごとに撮影条件や再構成処理が自動的に追加される。また頭部CTAでは,サブトラクション処理を目的とする場合,不要な被ばくが生じないよう低線量での単純撮影が自動で選択される。これらの機能について平川技師長は,「経験が浅い技師ほど有用であり,適切な診断にもつながっているのではないか」と評価する。また,COVID-19の拡大に伴い脳卒中搬送患者にCT撮影を行うケースが増加しており,単純CTの早期虚血サイン(early CT sign)を自動で定量化する“ASPECTS”機能も有用だという。さらに,CT perfusionの撮影・画像再構成も簡便であり,血管内治療適応の評価やdoor to puncture time短縮への貢献が期待される。

 

東京慈恵会医科大学附属病院

東京慈恵会医科大学附属病院
住所:東京都港区西新橋3-19-18
TEL:03-3433-1111
URL:https://www.hosp.jikei.ac.jp
病床数:1075床
診療科目:34科

 

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