技術解説(シーメンスヘルスケア)

2014年12月号

Digital Radiography(DR)を極める【動画編】

動脈塞栓術支援アプリケーション“syngo Embolization Guidance”のご紹介(アプリケーション:syngo Embolization Guidance)

富士溪俊之(シーメンス・ジャパン(株)AXビジネスマネージメント部)

近年におけるインターベンション手技の進歩は目覚ましいものがあり,血管撮影装置においてもフラットディテクタ(FD)の採用,コーンビームCT機能の搭載は標準的なものになってきている。本稿では,TACEのような腹部領域のインターベンション手技に対して,コーンビームCT機能(以下,“syngo DynaCT”)の能力を最大限活用するためのハードウエア,および最新ソフトウエアの技術について紹介する。

■天井懸垂型「Artis zee TA」“ダブルスライドCアーム機構”

天井懸垂型シングルプレーン装置「Artis zee TA」では,腹部領域の手技をサポートするハードウエアの特長として,天井懸垂部分のメインアームのみではなく,スライド回転をアシストするためのセカンドCアームを追加したダブルスライドCアーム機構(図1)を搭載している。2軸のアームを同時に駆動させることにより,最大200゜の広範囲撮影,および60゜/sの高速回転を実現する。この200゜の広範囲撮影の実現により,CTの高速撮影法などで応用されるハーフリコンの原理と同様に,180゜データ収集+α゜(コーン角)を考慮したデータ収集(図2)が可能となり,プロペラ回転(図3)だけではなく,オービタル回転でのsyngo DynaCT撮影(図4)を可能にした。

図1 ダブルスライドCアーム機構

図1 ダブルスライドCアーム機構

図2 コーン角を考慮した撮影角度

図2 コーン角を考慮した撮影角度

   
図3 プロペラ回転

図3 プロペラ回転

図4 オービタル回転

図4 オービタル回転

 

■IVRに最適なワークフローの実現

前述の独自機構により,Cアームを被検者頭側から挿入せずに,左右側面方向から挿入した状態でsyngo DynaCTが撮影できる。つまり,頭側からの挿入時にはsyngo DynaCTの撮影範囲はCアームの内径に依存するが,左右方向からの挿入の際には上記のような撮影範囲の制限がなく,骨盤領域を含めた広い範囲をカバーすることが可能となる。さらに,手技中のカテーテル操作ポジションから都度のCアーム旋回は必要なく,同じポジションのまま透視・撮影・3Dデータ収集が可能となり,手技ワークフローが向上する。Cアーム旋回時に位置合わせするための透視が不要なので,被ばく低減につながり,Cアーム旋回時の周辺機器との干渉による危険の回避など,多くの利点を有する。この機構は,Hybrid ORの領域においても,安全な手術環境の構築においても有用性が高い。

■Advanced Guidance Application“syngo Embolization Guidance”

syngo Embolization Guidance”(図5)は,動脈塞栓術における血管内デバイスのガイディング機能であり,syngo DynaCT画像や術前のCT,MRI,PETなどの画像データを有効に活用し,腫瘍の自動セグメンテーションや,同定した栄養血管のセンターラインを自動抽出する機能などを有する。また,syngo DynaCTで得られた3D画像上で腫瘍の位置を大まかに囲むことで,自動的に腫瘍のセグメンテーションを行う。さらに,腫瘍に対する目的栄養血管の近位部と遠位部を指定することで,血管走行に沿ったセンターラインを自動計算し表示する。得られたデータのグラフィックと透視像をリアルタイムに重ね合わせることが可能である(図6)。事前に複雑な走行や形態の目的血管を立体的構造から正確に把握することができ,塞栓すべき血管・塞栓してはいけない血管に対して正確にアプローチすることが可能となるため,安全かつ正確に,そして迅速に手技を支援できるツールとして展開しているアプリケーションである。

図5 syngo Embolization Guidance

図5 syngo Embolization Guidance

 

図6 syngo Embolization Guidanceの自動セグメンテーションと透視像への重ね合わせ

図6 syngo Embolization Guidanceの自動セグメンテーションと透視像への重ね合わせ

 

【問い合わせ先】
コミュニケーション部
TEL 0120-041-387
http://www.healthcare.siemens.co.jp/medical-imaging

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