技術解説(シーメンスヘルスケア)

2015年8月号

Technical Information

Siemens Total Solution for Women's Health

すべての女性へ最良・最適な医療を提供するために,シーメンスは乳がん領域に対し,seek(乳がんの兆候を早期に検出),find(疾患パターンを正確に診断),act(確実な治療をサポート),follow(最善のアフターケアをサポート)のすべての局面でトータルソリューションを提供します(図1)。
今回はその一部についてご紹介します。

図1 シーメンスの乳がん領域に対するトータルソリューション

図1 シーメンスの乳がん領域に対するトータルソリューション

 

日本国内での乳がんの現状

2015年4月28日に更新された「2015年のがん統計予測」1)での予測がん罹患数は98万2100例,死亡数は37万900人となり,2014年のがん統計予測と比較すると,がん全体の罹患数は10万例,死亡数は4000人増加となっています。そのうち,乳がんの予測罹患数は8万9400例(+2700例),予測死亡数は1万3800人(+400人)と同様に増加傾向を示しており,表1のように女性の死亡数が高い部位の5位,罹患数では1位に位置しています。
他国との比較ですが,WHO死亡統計データベース(1960〜2000年)での乳がんの年齢調整死亡率の5か国(フランス,イタリア,日本,イギリスおよびアメリカ)比較によると,アメリカおよびイギリスの死亡率は1990年頃ピークに達し,以後減少傾向を示しており,アメリカ,イギリスおよびイタリアの若年層では明らかに死亡率が減少しています。その一方,日本の乳がん死亡率は他国と比べて低く,年齢間の死亡率の差は小さいものの,年齢階級に関係なく死亡率の増加が見受けられます。
こうした短期的かつ長期的にも増加傾向を示し,累積死亡率が70人に1人という乳がんの現状を克服するには,その早期発見から,診断,治療,アフターケアをサポートするソリューションが必要不可欠となります。

表1 2015年における女性の部位別予測罹患数(左)と予測死亡数(右)

表1 2015年における女性の部位別予測罹患数(左)と予測死亡数(右)

 

シーメンスのトータルソリューション

近年,乳がん領域における画像診断機器の役割は, 早期検診や精密検査など多岐にわたり,使用される製品の幅も広がってきました。図2は早期発見から治療に至るまでのフローの一例ですが,使用される主な製品は,マンモグラフィ装置,超音波画像診断装置,MRIです。これらを的確に組み合わせることにより,診断精度を向上させ,早期に正確な診断をサポートします。
また,同時に,検査における痛みの軽減や低被ばく化など,被検者の負担を軽減し,QOLの向上を実現します。

図2 早期発見から治療に至るまでのフローの一例

図2 早期発見から治療に至るまでのフローの一例

 

■マンモグラフィ装置
マンモグラフィ検査を受けるときに気になるのが「被ばく」です。シーメンスのマンモグラフィ装置「MAMMOMAT Inspiration」(図3)では,最新の被ばく低減技術「PRIMEテクノロジー」を搭載しています。
これは,散乱線除去を画像処理プロセスの中で行うことでグリッドレス撮影を可能にしたもので, さらなる低線量と高画質を実現したシーメンス独自の技術です。これにより日本人乳房で最大30%の被ばく低減を実現しています。
マンモグラフィが早期検診において使用されることを考慮し,画質を維持しながら被ばくを低減する機能がPRIMEテクノロジーです。
また,重層的に重なる乳腺組織の中で,X線吸収がきわめて近い腫瘤性病変を描出するのが困難というマンモグラフィ装置の原理的な問題に対し,組織の重なりの影響を排除した診断画像が得られる「Tomosynthesis」をオプション搭載しています。シーメンスの「AST(All Slices Tomosynthesis)」は,回転角度を大きくすることにより, すべてのスライス面で高画質な画像を提供し,病変部を詳細に観察することが可能です。
検査時間の短縮のために,回転角度を小さくする方法もありますが,高画質な画像による診断能の向上が,結果的に被検者のメリットにつながります。

図3 MAMMOMAT Inspiration

図3 MAMMOMAT Inspiration

 

■超音波画像診断装置
シーメンスが乳がん領域に対する新しいソリューションとして開発した超音波画像診断装置が「ACUSON S2000 ABVS(Automated Breast Volume Scanner)」(図4)です。通常の2D画像を描出するハンドヘルドプローブに加え,乳房の3D画像を取得する自動スキャン機能を搭載しています。ABVSのスキャンボックス部を被検者の乳房にセットするだけで,自動的にスキャンが開始されます。収集されたボリュームデータは,その場でコロナル方向にも再構成でき,病変位置の確認や浸潤範囲の観察に非常に有用です。
また,3Dボリューム画像の観察において疑わしい部位が見つかった場合には,その場で高精細2Dハンドヘルドプローブによる撮像に移行することができるため,より詳細な観察を行うことが可能になります。
さらに,詳細な観察方法のひとつとして,組織の硬さを定量化できるTissue Strain Analytics機能「Virtual Touch IQ」も使用可能です。Virtual Touch IQは,プッシュパルスで誘導されるシアウェーブの速度を検出パルスで読み取るシーメンス独自の技術です。通常の2D画像では困難であった腫瘍の判別に対する硬さの画像化(エラストグラフィ)の有効性が報告されています。

図4 ACUSON S2000 ABVS

図4 ACUSON S2000 ABVS

 

■MRI
術前乳腺MR診断の役割は,存在診断,病変の広がり診断,良悪性の鑑別,術前化学療法や非手術的治療などの治療効果判定に加え,MRガイド下吸引式生検など,臨床現場からのニーズは多様化しています。
また,乳房MR検査において,画質はもちろんのこと被検者の負担軽減につながる撮像時間の短縮も重要です。シーメンスがこれらの両立をめざして開発したのが,「18チャンネルブレストコイル」(図5)です。チャンネル数およびコイル密度の向上により,高精度画像と短時間撮像を実現します。18チャンネルブレストコイルを用いることにより,空間分解能の高い3D撮像画像を取得できるため, MPRなど別断面像や拡大像においても,高精細な画像が得られます。
高密度なマンモコイルを使用することによって,より正確な術前乳腺MR診断が可能になります。
また,ソフトウェアでは,ディフュージョン撮像法 「syngo RESOLVE」が乳房検査をサポートします。syngo RESOLVEは,従来のディフュージョンで問題とされてきた歪みを軽減し,空間分解能を向上させるため,乳房撮像に有用です。

図5 18チャンネルブレストコイル

図5 18チャンネルブレストコイル

 

■ ■ ■

これらのほかにも,転移の可能性のある病変部の発見や放射線治療を実施する際の最適な放射線治療計画の作成に役立つCTや,腫瘍の病期の判定,良性・悪性の鑑別に有用なPETなども提供します。
今後,さまざまな画像診断装置の併用による総合的な臨床的診断がますます重要となっていく中で,シーメンスはこれからも革新的なテクノロジーを生み出し続けることにより,乳がんの死亡率の低減に貢献することを使命と考えています。

すべての女性のために。そして,その大切な人とよりよい人生のために。

乳がんの早期発見から,診断,治療,アフターケアに至るすべての局面で,シーメンスのトータルソリューションにご期待ください。

*自社比。

●参考文献
1)国立がん研究センター:がん情報サービス
http://ganjoho.jp

TOP