MRI検査の需要が年々増加する^1）一方で，装置の電力消費や液体ヘリウムの高騰，人手不足といった課題が病院経営を圧迫している。これらの問題に対し，Siemens Healthineersが開発した「MAGNETOM Flow」は，画期的な技術革新により解決策を提示する次世代のMRI装置である。

■ヘリウムフリー構造により，優れた設置性で電力消費量を最大40%削減

MAGNETOM Flowは，Siemens Healthineersが独自に開発した冷却技術「DryCool Technology」を1.5T MRIとして初搭載した装置である。これにより，超電導磁石の冷却に必要であった最大1500Lの液体ヘリウム使用量をわずか0.7Lに削減し，再補充不要のヘリウムフリー構造^＊1を実現した。また，0.7Lの液体ヘリウムを冷却に利用することで，非稼働時に冷凍機を間欠運転する「Eco Power Mode」を実装し，電力消費を最大40%削減^＊2することに成功した（図1）。加えて，クエンチパイプの工事が不要であり，搬入口の高さが約2m，最小設置面積が24m²，重量が約3.7tの小型・軽量な設計により，設置の自由度が高く，床補強に関するコスト削減にも貢献する。

図1　DryCool TechnologyとEco Power Mode

■検査前のポジショニングやスキャン操作を自動化し，ワークフローを効率化

MAGNETOM Flowには，ブランケット型のコイル「BioMatrix Contour Coils」が搭載されており，これに内蔵された「BioMatrix Position Sensor」により，コイルの位置情報を自動認識する。これにより，レーザーを用いた手動での位置合わせが不要となる（図2）。さらに，人工知能（AI）が学習したBodyモデルと連携することで，全身のポジショニングが1回のタッチ操作で完了する。これにより，検査前準備の時間を大幅に短縮することが可能である。また，AIを活用した自動撮像支援機能「myExam Autopilot」を活用することで，頭部，脊椎，膝などのルーチン検査が1クリックで完了し，操作者の熟練度に依存しない一貫した検査品質を実現する。

図2　BioMatrix Contour CoilsとBioMatrix Position Sensor

■AIを用いた画像再構成技術により，2倍の空間分解能で撮像時間を50%削減

MAGNETOM Flowは，AIによる画像再構成技術「Deep Resolve」を搭載しており，これにより，撮像時間を50%短縮しながら空間分解能を2倍に向上させることが可能である（図3）。高精細な画像を提供するとともに，検査効率の向上や患者の心理的負担の軽減にも寄与する。さらに，検査時間の短縮は消費電力の削減にも直結し，病院経営の効率化にも大きく貢献する。

図3　Deep Resolveにより2倍の空間分解能で撮像時間を50%削減

MAGNETOM Flowは，環境負荷の低減，検査の効率化，医療現場の省人化といった現代の課題に対し，具体的かつ実用的なソリューションを提供するMRI装置である。Siemens Healthineersは，今後もMRIのリーディングカンパニーとして，医療従事者の支援とサステナブルなヘルスケアの実現に向けて，革新を続けていく所存である。

^{＊1 液体ヘリウム0.7Lを完全に密閉した冷却装置のため，装置の稼働に伴う液体ヘリウムの再補充が不要な構造
＊2 当社製1.5TMRI装置比較}

MAGNETOM　フロー
認証番号：306AABZX00051000

^{●参考文献
1）令和元年6月26日 中央社会保険医療協議会 総会（第417回）「医療機器の効率的かつ有効・安全な利用について」. 厚生労働省, 2019.}

MANETOM Flow製品ページ
https://www.siemens-healthineers.com/jp/magnetic-resonance-imaging/0-35-to-1-5t-mri-scanner/magnetom-flow