Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)

第81回日本医学放射線学会総会が,2022年4月14日(木)〜17日(日)にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された。学会共催ランチョンセミナー29「Opening the Future─未来を見据えたこれからのポストプロセシング」(ザイオソフト株式会社 / アミン株式会社)では,宇都宮大輔氏(横浜市立大学)が座長を務め,平野 透氏(柏葉脳神経外科病院先端医療研究センター)と小川泰良氏(聖マリアンナ医科大学病院画像センター)が講演した。

2022年7月号

Opening the Future─未来を見据えたこれからのポストプロセシング

講演2:実臨床における3D画像処理 そして未来へ

小川 泰良(聖マリアンナ医科大学病院 画像センター)

2022年4月に発表されたザイオソフトの次世代医用画像処理ワークステーション(WS)である「REVORAS」を,先行して使用する機会を得た。その使用感について,当院の3D画像処理業務の現状とともに実臨床での症例に適用した画像を含めて紹介する。

画像センターにおける3D画像作成環境

当院の画像センターの3D画像作成件数(CTのみ)は,440件/月間(2021年度)で5年前(360件)に比べて20%増加している。依頼内容は,脳腫瘍術前評価,乳がん術前の乳房3D,整形外科の骨折評価などさまざまで,3Dの作成体制はCT室のスタッフ1名が主に担当し,夕方に2,3名が加わって当日の依頼はその日のうちに処理できるように進めている。3D作成依頼の割合が多い診療科として,形成外科,循環器内科,乳腺外科に加えて小児外科,小児科が上位に入るのが当院の特徴と言える。
その理由として,当院では“小児画像カンファレンス”が毎週行われていることが挙げられる。画像検査が関係する小児症例を対象に,小児科,小児外科,新生児科,放射線科,臨床検査技師,診療放射線技師など約40名が参加し,各症例の経緯や最終診断,画像所見の読影報告が行われ,検査の正当化や線量の最適化なども検討される。このカンファレンスは開学当初から行われ40年以上の歴史のあるもので,診療放射線技師は2014年頃から参加している。

小児画像カンファレンスと3D画像作成

そのきっかけになったのが面検出器型CT(ADCT)の導入である。ADCTのDynamic Volume Scanを用いた動態撮影(4D-VR)を,小児の上気道疾患に応用できないかという依頼があり,“小児呼吸動態CT”に取り組んだ。客観的評価が難しい小児の気道狭窄疑いの評価においては,喉頭ファイバーや気管支鏡による検査では時にリスクを伴うため,低侵襲で上・下気道病変の評価が可能な小児呼吸動態CTが選択された。検査の適応・正当化(小児診療科),診断・検査プロトコール(放射線科),撮影条件および最適化(診療放射線技師)を,それぞれ検討して進めている。
症例は,8か月,女児,声門下狭窄でDynamic Volume Scanによる動態撮影を施行した(図1)。Dynamic Volume Scanでは膨大なデータが収集できるが,作成する3D(4D)画像は診療科,放射線科の医師と相談して症例に合わせて決めている。図1 ab(MPR coronal)の青丸部分のaxial画像のMPR(元画像は4D)だが,呼吸の状態に合わせた気道の変化と周囲に淡い造影効果を認める。図1 cの4D VRでは,ダイナミックな呼気吸気の連続した動きが観察でき,造影効果のある部分で声門下腔の恒常的な狭窄が認められる。さらに,図1 dの4D VE(virtual endoscopy)は足側から声門側を見たビューだが,気管支内腔が呼吸に連動して変形する形状から声門下の拡張は得られない所見が観察できた。これらの画像を基に,上気道乳幼児血管腫による声門下狭窄と診断された。

図1 症例:声門下狭窄のDynamic Volume Scanによる動態撮影

図1 症例:声門下狭窄のDynamic Volume Scanによる動態撮影

 

多様化する3D画像作成の課題

小児画像カンファレンスへ参加することで,3D画像を作成する診療放射線技師が,臨床科のカンファレンスに参加するメリットを実感している。例えば,“気管狭窄および軟化症の評価目的で4D VRを作成”という依頼に対して,通常であれば図2 aのような3D画像を作成する。しかし,カンファレンスに参加してみると,医師は気管の形態のみを見ているのではなく,呼吸機能の全体を見て判断していることがわかる。そこで,3D画像の作成では,気管支のみならず喉頭や気管,肺,そして皮膚の動きまでを描出し,機能的な要素を合わせて4D VRを作成することが必要だとわかった(図2 b)。これは検査室では気づけなかったことで,カンファレンスへの参加や医師とのコミュニケーションの重要性を実感した。
当院では,CT室から消化器外科,脳神経外科のカンファレンスにも参加しているが,その中で3D画像作成に関する課題も感じている。1つは診療科の3D画像に対するニーズが大きく変わってきたことである。手術支援だけでなく患者説明などで使用する機会が増え,作成の依頼数が増加している。もう1つは,カンファレンスなどに参加して診療科からの要望に応えようとすると,さらに高度な知識と画像処理技術が必要になることである。現場では,高度な3D画像作成に対応できる技師の育成や教育には苦労しているところである。「画像等手術支援(Intelligent imaging)認定診療放射線技師」認定制度なども立ち上がっているが,解決の方策として,従来以上に高性能で使いやすいWSの普及も期待される。

図2 カンファレンスと3D画像作成

図2 カンファレンスと3D画像作成

 

次世代WS「REVORAS」の臨床事例

ザイオソフトがITEM 2022で次世代WSとして発表したのがREVORASである。われわれの施設で先行して使用する機会を得たので,そのパフォーマンスについて“3D解析”機能を中心に実臨床の事例を交えて紹介する。

○ワークフローの改善
側方経路腰椎椎体間固定術(OLIF)は,低侵襲な腰椎手術の術式の一つで,側腹部から小切開で椎間板にアプローチする。この手術に当たって,椎間板にアプローチが可能かどうか,また,椎間板の掻爬を行う際に腹部大動脈,下大静脈,腸骨動静脈や尿管の位置を把握するために,術前に3D画像を提供している。CTは動脈相と静脈相+排泄相の2相撮影を行い,Ziostation2では11部位を作成し,その中から適宜8部位を加算して3Dを作成していた。REVORASでは,扱えるボリュームの数が増えたことから11ボリュームを加算してVR画像を作成でき,これまで以上にVRの表現を追究することが可能になっている(図3)。
また,脊椎変形が強い症例では,単純CTを撮影してサブトラクション処理を行った後に3D解析を行って画像を作成している。REVORASでは,3D解析の画面上で“ボリューム間のレジストレーションと調整”“サブトラクション(または加算)”“ボリュームの再取り込み”などが可能になった。3D解析画面上で単純CTのデータを読み込み,位置合わせを行い,サブトラクションまでが可能で,利便性が向上し大幅なワークフローの改善が期待できる。また,MR画像の追加もワークスペースを展開して後から追加できるようになり,こちらも利便性が向上している。

図3 REVORASで11ボリュームで作成したOLIFの術前支援3D画像

図3 REVORASで11ボリュームで作成したOLIFの術前支援3D画像

 

○トランスペアレンシー
REVORASの新機能に,“トランスペアレンシー”がある。トランスペアレンシーでは,骨のボリュームを変更することなく,透過度のみを変更して表示できる。OLIFの椎体固定術後CTでは,骨と固定デバイス(pedicle screw)についてVR画像と,不透明度のレベルとオパシティカーブの形状による調整を行ったり,骨辺縁を立ち上げて不透明度を調整する方法などで,骨を透かして表示した画像を提供してきた。しかし,診療科からはVR画像は好評だったものの,透かした画像については本来の骨の質感や状態と異なって見えることから改善が求められていた。REVORASのトランスペアレンシーでは,質感を保ったまま透過度を変更できる(図4)。

図4 “トランスペアレンシー”による椎体固定術後CTの3D Bone+Device画像

図4 “トランスペアレンシー”による椎体固定術後CTの3D Bone+Device画像

 

○レンブラント
また,REVORASのもう1つの新しい表示方法として“レンブラント”がある。レンブラントは,臨床のニーズに対応した3D画像をより美しく明瞭に描出することを目標に開発された表示方法である。MPVRに適用することで,奥行き感がよりリアルになり,明瞭に臓器などを表現することが可能になっている。手術支援のみならず,さまざまな領域で新しい表現を与えるものとして期待できる。図5は,80歳代,女性,CT Colonography(CTC)でのS状結腸がんの術前支援の画像をレンブラントで作成した。静脈と動脈の上下関係や奥行き感がこれまで以上に向上しており,腹腔鏡下手術での手術支援への新たなインパクトが期待できる。

図5 “レンブラント”によるCTCのS状結腸がん術前支援画像

図5 “レンブラント”によるCTCのS状結腸がん術前支援画像

 

まとめ

REVORASによる3D画像作成について,実臨床での例を交えて紹介した。REVORASのコンセプトは「“みる”をシンプル,スマートに。」と紹介されているが,Oliver Wendell Holmes Jr.(19世紀の米国法律家)の言葉に,「複雑さの手前にあるシンプルさなどどうでもいいが,複雑さを超えた先にあるシンプルさなら是が非でもほしい」というものがある。複雑なものをいかにシンプルにわかりやすく,美しく見せるかは非常に難しいことであり,それを実現する可能性を感じさせるREVORASを実際に使用して,今後,3D画像作成のさらなる進化を期待したい。

 

小川 泰良 Ogawa Yasuyoshi
1997年 中央医療技術専門学校卒業。同年 聖マリアンナ医科大学病院入職。2009年 保健衛生学士取得。2012年 日本X線CT専門技師認定機構 X線CT認定技師取得。現在,聖マリアンナ医科大学病院画像センター 技術課長補佐。

 

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