Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)

ストラクチャークラブ・ジャパンライブデモンストレーション2023が,2023年11月3日(金),4日(土)に京王プラザホテル(東京都新宿区)で開催された。4日には,共催のハンズオンセミナーとして「ワークステーションを使いこなす!~TAVI術前計測ワークショップ」が,八戸大輔氏(札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニック)を講師として,山中太氏(湘南鎌倉総合病院),林 昌臣氏(小倉記念病院)をインストラクターとして行われた。

2024年3月号

ワークステーションを使いこなす! ~TAVI術前計測ワークショップ

【解説】適応判断やTAVI弁の選択,サイジングなどで合併症を防ぎ安全な治療のためのTAVI術前計測
【誌上再録】REVORAS「TAVR大動脈弁解析」を用いたTAVI術前の計測やプランニングのポイントを解説
【INTERVIEW】八戸大輔 氏に聞く◎ワークステーションの客観的で再現性の高い解析が質の高いTAVIを支援

 

【解説】適応判断やTAVI弁の選択,サイジングなどで合併症を防ぎ安全な治療のためのTAVI術前計測

八戸大輔 氏(札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニック)

八戸大輔 氏
(札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニック)

ハンズオンセミナーは,会場に用意されたザイオソフトの最新ワークステーション(WS)「Ziostation REVORAS」(以下,REVORAS)を使って,八戸氏による解説の下,参加者が実際に術前解析アプリケーション「TAVR大動脈弁解析」を操作するスタイルで進められた。ハンズオンに先立ち,八戸氏が経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)における術前計測の意義を解説した。

CTによる術前解析の役割

TAVIのCT解析の役割は大きく分けて2つある。そのうち1つは適応の判断で,外科的大動脈弁置換術(SAVR)か,TAVIか,あるいは手術不適合かを,解剖学的な適合性,そのほかの併存疾患を含めてチェックする。そして,もう1つがTAVIを選択した際のプランニングである。TAVI弁の種類,サイズ,アクセスルートなどを確認して判断する。
TAVIでは,長期的な視点に加えて手技の際の合併症をいかに防ぐかが重要となる。TAVIの合併症には,破裂(rupture),弁周囲逆流(paravalvular leak:PVL),TAVI弁の塞栓(embolization),冠動脈閉塞(coronary obstruction)などがあり,これらが生じると致死的になる可能性が高く,合併症を防ぎ安全な治療遂行のためプランニングは重要になる。

術前計測とプランニングの目的

TAVI開始当初は経食道心臓超音波でサイジングしていたが,背側からの2D画像は,弁輪径がアンダーサイズになることが多く,現在はCTがゴールドスタンダードである。ただし,緊急のTAVI症例ではCTを撮影する時間がないこともあり,自院のCTと超音波画像の計測値の差を把握しておくことも重要である。
弁輪径は,心周期で大きさが10%程度変化すると言われている。収縮期での計測がスタンダードで,R-R間隔の25〜40%での時相を抽出して計測する。また,面積(エリア)か,周囲径(ペリメーター)のどちらで計測するかは,弁輪面が楕円形の場合,エリアの計測ではオーバーサイジングになりやすい。バルーン拡張型のTAVI弁はエリアで,自己拡張型ではペリメーターで計測することが多い。
RuptureやPVLのリスク回避のためには,CTのSAX(short axis)viewで弁周囲の石灰化の分布を確認することが重要である。アオルティックルートでのアプローチでは,粗大な石灰化によってruptureを来すことがあるが,SAX viewであらかじめ分布を確認することで自己拡張型を選択したり,バルーン拡張型でもアンダーサイズに植え込みするなどで回避することができる。大動脈弁周囲の解剖学的な特徴を把握しておくことも必要となる。また,root ruptureのリスクは,左室流出路(LVOT)だけでなくバルサルバ洞や弁輪,ST junction(STJ)にもあることを注意する(図1)。

図1 TAVIにおけるroot ruptureのリスク

図1 TAVIにおけるroot ruptureのリスク

 

〈冠動脈入口部〉
冠動脈閉塞の原因は,弁尖の石灰化,大動脈解離による内膜進展,人工弁による閉塞,弁尖によるバルサルバ洞の閉塞などが挙げられる。これらを予測するためには,冠動脈入口部の高さ(<10mm)だけでなく,バルサルバ洞の大きさ,STJの高さなども計測して把握することが必要である。

〈伝導障害への対応〉
最後に,ペースメーカー(伝導障害)への対応である。伝導障害を来すリスク因子には,右脚ブロック,LVOTの石灰化,人工弁留置の深さ,膜性中隔(membranous septum)などがある。われわれは,伝導障害のリスク対応として,弁輪部から膜性中隔までの距離も測定している。ハンズオンでは,この膜性中隔の計測方法も紹介する。

【誌上再録】REVORAS「TAVR大動脈弁解析」を用いたTAVI術前の計測やプランニングのポイントを解説

REVORASの「TAVR大動脈弁解析」を使ったハンズオンでは,TAVI術前の弁輪面や冠動脈高などの計測,距離計測ツールを用いた膜性中隔の計測方法など具体的なテクニックに加え,具体的な操作方法や計測時のtipsなど実践的な内容で進められた。参加者は,実際にREVORASを操作しながら,インストラクターやザイオソフト / アミンのスタッフのサポートを受けていた。

「TAVR大動脈弁解析」による術前計測

REVORAS の「TAVR大動脈弁解析」(図2)は,弁輪面やLVOTなどTAVI弁の種類・サイズ選定に必要な箇所の自動計測機能が搭載されている。計測項目はアイコンで表示され,アイコンをクリックしていくことで必要な箇所の計測を終えることができる。計測項目が多いTAVIのプランニングにおいても,計測が終了した項目にはチェックマークが入り,漏れなく解析を進めることが可能だ。また,画面左側は4分割され,左上から時計回りにMPRのアキシャル(SAX view),volume rendering(VR view),MPRのコロナル(coronal view),サジタル(sagittal view)が表示される(図2)。
当院では基本的にR-R間隔30%付近の収縮期のデータを使用している。しかし,その付近のデータでブレが大きく計測に不適切な場合は,ブレのないそのほかの心位相のデータを選択する。

図2 REVORAS「TAVR大動脈弁解析」の弁輪面計測~弁輪面の自動認識 左画面は4分割で各viewを表示,右コラムに計測や操作ボタン,解析結果の数値が表示される。

図2 REVORAS「TAVR大動脈弁解析」の弁輪面計測~弁輪面の自動認識
左画面は4分割で各viewを表示,右コラムに計測や操作ボタン,解析結果の数値が表示される。

 

〈弁輪面の計測〉
REVORASでは,データを開くと自動的に左冠尖(left coronary cusp:LCC)・無冠尖(non coronary cusp:NCC)・右冠尖(right coronary cusp:RCC)と弁輪面の底面(nadir)が認識される。nadirは,LCCは赤,NCCは黄,RCCは青で表示される。REVORASでは,弁輪の自動認識精度が向上している。弁輪面を手動で設定する場合は,SAX viewのカーソル(ライン)と,それに連動するcoronal view,sagittal viewで弁尖の角度と高さを見ながら調整して,nadirの底面を決定する。弁輪面の設定は,この後の計測やperpendicular viewなどのX線透視角の設定にも影響する基本となるため,nadirをしっかりと見極めて行うことが重要だ。弁尖の角度と高さを見ながら調整し,nadirが見えなくなるところが弁輪の下という形になる。
弁輪面が指定できたら,「自動計測」ボタンを押すと弁輪の面積,周囲長,最大直径・最小直径などが自動計測される。Pre-BAV(balloon aortic valvuloplasty)を行う際には最小径で行うことが多いが,アグレッシブに行う場合は平均径を使うなど計測値を参考にする。計測した画面はキャプチャで保存し,計測結果は数値が自動で保存される。

〈LVOT〉
LVOTの位置は,施設によっては弁輪面から3mm下,4mm下という場合もあるが,当院では弁輪面から5mm下をLVOTとしている。REVORASでは,弁輪面から5mm下のスライスで計測したい位置が定まったら,血管の中央をクリックすると自動でLVOT径が計測される。

〈冠動脈高さ〉
左冠動脈入口部(LCO),右冠動脈入口部(RCO)では,起始部が見える高さまでスライスを移動し,LCO,RCOそれぞれの起始部が見えるviewに調整して,起始部の下端をクリックする。LCO,RCOを指定すると,弁輪面から冠動脈までの高さが自動で表示されるのでキャプチャ保存を行う。施設によってはLCO,RCOが両方同時に見えているviewで計測する場合もある。

「TAVR大動脈弁解析」を使った実践的なハンズオンを開催

「TAVR大動脈弁解析」を使った実践的なハンズオンを開催

 

ザイオソフト / アミンのスタッフが操作をサポート

ザイオソフト / アミンのスタッフが操作をサポート

 

〈ST junction〉
STJを計測する際は,基本的に大動脈の一番くびれている部分を計測するようにしている。SAX view,長軸のどちらで見てもよいが,STJに石灰化がある場合は石灰化の内側が計測されるようにしている。計測者によっては,石灰化の外側を計測するケースもあるが,STJの一番狭い箇所で計測を行い,sinusが隔離されないか,STJ ruptureが起こらないかを確認することが重要と考える。

〈バルサルバ洞〉
バルサルバ洞は,STJとは逆に一番膨らんでいるところを計測する。バルサルバ洞は,人工弁を留置した際の弁尖や石灰化の“収納庫”の役割となるため,どのくらいの膨らみがあるのかを把握することが重要となる。画面上でLCCの真ん中から反対側のコミッシャーまでを選択して計測する。RCC,NCCについても同様に行う。

〈弁尖〉
弁尖長の計測は,冠動脈高さと同様に行う。coronal viewで冠動脈起始部が見える状態でLCC,RCCで弁尖の長さを計測する。弁尖は,長ければ長いほど冠動脈を閉塞させるリスクがある。弁尖長は,すべての患者で計測する必要はないかもしれないが,冠動脈が低い症例や二尖弁の患者では弁の先端に石灰化があったり,弁尖が長いことがあり注意が必要である。

〈上行大動脈〉
上行大動脈の計測は,弁輪面から40mm上の位置で計測を行う。REVORASではボタンをクリックすると自動的に計測できる。

〈X線透視角〉
X線透視角は,ボタンをクリックすると大動脈弁の底面が一直線になる透視角度であるperpendicular viewが得られ,その角度が画面上に表示される。perpendicular viewのほか,LCCとRCCが重なりNCCが独立して見える角度にviewを調整する「cusp overlap view」,LCCが独立して見える角度の「LAO view」も参照することが重要である。
X線透視角の確認では,perpendicular viewなどのアームの角度を求めるだけではなく,VR画像を自分で動かしてcuspの様子を確認してアームを振った時のviewをシミュレーションすることが必要である(図3)。

図3 X線透視角 a:perpendicular view b:LAO view c:cusp overlap view

図3 X線透視角
a:perpendicular view b:LAO view c:cusp overlap view

 

〈石灰化〉
石灰化は,閾値を設定して大動脈弁の石灰化の体積とAgatston scoreを計測する。SAX viewでLCC,NCC,RCCのcuspに計測エリアを合わせることで,領域ごとの体積とAgatston scoreが自動で計測され,トータルの数値も算出される。sagittal viewまたはcoronal viewでは高さも設定されるが,弁尖の石灰化を計測するため基本的にはSTJまでの高さで合わせる。石灰化スコアを基に重症度を判断する,paradoxical low-flow/low-gradient severe ASのような症例で重要な数値となる。

膜性中隔(membranous septum)の距離の計測

最後に,TAVI後の伝導障害を回避するための膜性中隔の距離の計測について説明する。膜性中隔は,弁輪から筋性中隔までの距離として計測している(図4)。SAX viewでバルサルバ洞が見える位置を表示し,計測ツールを使用して弁輪面から筋性中隔までの距離を評価する。右コラム下段の計測ツールから「2D距離」のボタンをクリックして距離を計測する。実際に伝導路がどう走っているのかはわからないため,おおよその場所を確認して計測する。
当院では,ペーシング導入のプランニングについては基準を決めて行っている(図5)。例えば,膜性中隔の距離が2mm以下,もしくは右脚ブロックがある,あるいはサイズの大きなTAVI弁の時には,ペーサーは頸動脈からアプローチしている。膜性中隔の距離は,その際の判断基準の一つにもなるので計測しておく。

図4 膜性中隔(membranous septum)の計測 膜性中隔は弁輪から筋性中隔までの距離として計測する。

図4 膜性中隔(membranous septum)の計測
膜性中隔は弁輪から筋性中隔までの距離として計測する。

 

図5 札幌ハートセンターでのペーサー挿入の判断基準

図5 札幌ハートセンターでのペーサー挿入の判断基準

 

レポートの作成

すべての計測が終了したら,所見がある場合には入力し,「レポート作成」ボタンをクリックすると,ここまでキャプチャした画面と自動計測された数値によるレポートが自動で作成される。「SC(画像)保存」することで,REVORAS内に保存されるほか,PACSへの転送も可能になる。

最後に八戸氏は,ここまでの計測は慣れれば5分程度でできるようになると述べ,「TAVIのオペレータは自分で計測して,数値と実際の手技の感覚を合わせることが重要だ」と受講者にアドバイスを送った。

【INTERVIEW】
八戸大輔 氏に聞く◎ワークステーションの客観的で再現性の高い解析が質の高いTAVIを支援

─TAVIの現状とCTの役割についておうかがいします。

TAVIは,さまざまなランダム化比較試験(RCT)でSAVRよりも良好な治療成績が報告されて以降,国内においても実施件数は急速に増えています。重症大動脈弁狭窄症(AS)は,ASだけでなく全身の状態が良くない患者さんが多いので,基本的な検査や心臓超音波検査などで重症度を診断します。治療方針はガイドラインに従って判断することになりますが,基本的には75歳以下は外科的手術,80歳以上はTAVIで,その間は全身の状態や本人の希望に添って進めていくことになります。
CTでは,手術の適応判断や術式選択を行いますが,年齢的な判断のほかにも虚弱性(フレイルティ)や合併症の有無などを確認する必要があります。また,安全にTAVIを行うためにも,大動脈基部の石灰化,冠動脈狭窄の有無などのほか,大動脈瘤や下肢の血管の状態など心臓以外の疾病の可能性も含めて総合的に確認して適応を判断していきます。

─WSを用いた解析とREVORASの評価をお聞かせください。

TAVI開始当初は,経食道心臓超音波検査で評価していましたが,計測の正確性や術者依存の問題がありました。それが,CTとWSでの解析によって,客観的な計測が可能になりました。私はTAVIを始めた当初からザイオソフトのWSをプランニングに使用してきましたが,Ziostation2は画像再構成の精度が高く,われわれが欲しい3Dや4Dの立体イメージを得ることができます。心臓は三次元的に,かつねじれるように動きます。この動きをさまざまな方向から詳細な画像として再構成して表示してくれるので,診断や治療のプランニング,シミュレーションとして非常に有用です。
REVORASでは,データの抽出や計測の自動化によって画像再構成の精度が向上し,解析の客観性がさらに高まっていると感じています。また,ユーザーインターフェイスなども工夫されており,いわば昔の携帯電話からスマートフォンになったような,触っていれば誰でも使いこなすことができる使い勝手の良さがあります。

─WSを用いた術前解析の進め方と重要性についておうかがいします。

当院では,複数のオペレータと診療放射線技師がそれぞれに術前解析を行っており,3人で計測をして値に大きなズレがないかを確認しています。とはいえ,REVORASでは精度が向上して,大きなズレが出ることはほとんどなくなりました。
TAVIの術前プランニングは,オペレータ自身が行うことが絶対に必要です。石灰化やバルサルバ洞の大きさ,大動脈の傾きなどを自分で確認して,安全で効果が得られるデバイスや方法を術者自身が選択することが重要です。

─TAVI治療におけるWSへの期待をおうかがいします。

REVORASの「TAVR大動脈弁解析」は,一連のTAVI術前解析の手順がわかりやすくまとめられていて使いやすいアプリケーションです。今後,ユーザーからのフィードバックでさらにユーザーフレンドリーになることを期待しています。
われわれがWSに期待するのは,誰がやっても同じ結果が得られる汎用性です。日本人は職人技をめざしがちですが,治療は誰がやっても同じ結果が得られることが患者さんにとって一番メリットが大きいです。将来的には,AI技術などでWSが最適な人工弁やアクセスルートをリコメンドしてくれるようになることを期待しています。

ハンズオンセミナーは午前と午後の2回開催され,多くの参加者を集めた。

ハンズオンセミナーは午前と午後の2回開催され,多くの参加者を集めた。

 

講師を務めた八戸 氏(中央)とインストラクターの山中 太 氏(湘南鎌倉総合病院,右),林 昌臣 氏(小倉記念病院,左)

講師を務めた八戸 氏(中央)とインストラクターの山中 太 氏(湘南鎌倉総合病院,右),林 昌臣 氏(小倉記念病院,左)

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