Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)
第16回呼吸機能イメージング研究会学術集会が2026年1月23日(金),24日(土)にランドマークホール(神奈川県横浜市)で開催された。研究会共催のランチョンセミナー2「間質性肺疾患,どう評価していますか? ―AIと拓く画像と構造理解の深化―」(ザイオソフト株式会社)では,小倉髙志氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が座長を務め,市川泰崇氏(三重大学大学院医学系研究科)と藪内英剛氏(九州大学大学院医学研究院)が講演した。
2026年4月号
間質性肺疾患,どう評価していますか? ─AIと拓く画像と構造理解の深化─
講演1:QZIP-ILDによる肺陰影の定量評価 ~臨床活用に向けた当院の試み
市川 泰崇(三重大学大学院医学系研究科放射線医学教室)
画像診断や画像再構成の分野では,人工知能(AI)の活用が進んでおり,病変や臓器の自動認識および定量評価などの画像解析技術の臨床実装が進んでいる。例えば,胸部CTでは,肺結節を自動認識し,ワンクリックで病変候補の表示や切り替えが可能なAI が臨床導入されており,当院でも活用している。
一方で,間質性肺疾患(ILD)におけるCT画像評価は,現在もなお読影医の視覚的判断に大きく依存している。間質性肺陰影は,すりガラス影,網状影,蜂巣肺などさまざまな所見が混在し,その分布や範囲を客観的かつ再現性高く評価することは容易ではない。このような背景から,間質性肺陰影を定量評価する手法の確立が注目されている。ザイオソフト社は,AIを活用して陰影の性状ごとに肺を自動セグメンテーションし,定量化を可能とする胸部CT解析システム「QZIP-ILD(Quantification by Ziosoft Informatics Platform for Interstitial Lung Disease)」(W.I.P.)の開発に取り組んでいる。本講演では,QZIP-ILDを用いた間質性肺陰影の定量評価と,その臨床活用について紹介する。
膠原病性ILDにおける検討
1.QZIP-ILD開発の背景
膠原病に伴うILDでは,肺に生じる線維化の程度を把握することが,重症度評価や治療効果判定,予後推定において重要である。これまでILDは,high resolution CT(HRCT)画像を用い,医師が肺陰影を視覚的に評価してきた。伊藤らは,Walsh手法1)に基づき,肺CTの6断面から線維化を示唆する陰影の占有率を視覚的に算出し,その割合が20%を超えると予後不良となることを報告している2)。一方で,このような視覚的評価法は,再現性や客観性に課題があり,また手間と時間を要することから,日常臨床での活用には限界がある。こうした背景から,ILDに対する客観的かつ定量的な評価法の必要性が高まっている。
こうした課題に対し,岩澤らは,ILDを客観的に評価するAI解析モデルとして,ザイオソフト社と共同でQZIP-ILDの開発に取り組んでいる3)。QZIP-ILDでは,肺全体を対象として,正常および異常陰影を性状ごとに8種類に自動セグメンテーションすることが可能である。われわれも本システムを導入し,当院のリウマチ・膠原病内科と連携しながら,その臨床的有用性について検討を進めている。
2.QZIP-ILDの初期検討
当院では,研究目的としてQZIP-ILDを使用可能な専用ワークステーションを読影室に設置している。PACS上のCT画像データを用いて解析を行うことで,一定時間内に自動解析が完了し,結果を閲覧することができる。QZIP-ILDでは,肺全体が三次元的にセグメンテーションされ,正常肺を含む8種類の陰影について,各陰影の体積や全肺に占める割合が自動算出される(図1)。これらの結果は,陰影の種類ごとに色分けして表示することが可能であり(図2),さらに,三次元表示により肺全体の分布を俯瞰的に把握することもできる(図3)。
われわれは,初期検討として,膠原病性ILD 80症例を対象に,QZIP-ILDによって得られた定量指標が従来の視覚的評価や呼吸機能とどのように関連するかを検討した4)。QZIP-ILDによりHRCT上の肺を8種類の陰影に自動セグメンテーションし,QGG(すりガラス影の割合),QFIB(線維化を伴う浸潤影,蜂巣肺,網状影,牽引性気管支拡張の合算),QILD(QGGとQFIBの合算)を定量指標として設定した。これらを,6断面を用いた従来の視覚的評価法(専門医2名)と比較したところ,QGGの平均値はQZIP-ILDが3.45%,従来法が3.25%と近似しており,級内相関係数(intraclass correlation coefficient:ICC)は0.75と良好であった。一方,QFIBおよびQILDの平均値(それぞれ2.19%, 5.35%)はいずれも従来法の方(4.06%, 8.48%)が高値を示した。
次に,QZIP-ILDによる定量評価が呼吸機能をどの程度反映しているかを検討した。QZIP-ILDで算出したQILDと,努力性肺活量(FVC)の予測値に対する実測値の割合(FVC%)との関係を解析した。FVC% 70%をカットオフ値として重症度判別能を評価したところ,ROC解析における曲線下面積(area under the curve:AUC)は,従来の視覚的評価法では0.66であったのに対し,QZIP-ILDでは0.83と有意に高値を示した。この結果は,QZIP-ILDによる定量指標が,従来の視覚的評価よりも呼吸機能低下の程度を的確にとらえており,呼吸機能障害の重症度を客観的に評価する手法として有用である可能性を示唆している。
図1 QZIP-ILDによる解析結果の一例(Low attenuation areaはAirspaceに含む)
図2 QZIP-ILDを用いた間質性肺陰影の自動セグメンテーション
図3 間質性肺陰影の3D表示
症候性放射線肺臓炎(RP)の発症リスク評価
肺がんに対する体幹部定位放射線治療(SBRT)は,特に早期非小細胞肺癌において,高い局所制御率を有することから,手術困難例に対する重要な治療選択肢となっている。一方で,治療後に生じるRPは,時に重篤あるいは致死的となる可能性があり,grade 2以上の症候性RPの発症頻度は,報告によって9~30%とされている。したがって,治療前に症候性RPの発症リスクを適切に評価できれば,治療方針選択や重篤な合併症回避の観点から,臨床的意義は大きいと考えられる。RPの発症にはさまざまな因子が関与するとされているが,慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎など,もともとの肺疾患を有する患者で発症リスクが高いことが知られている。したがって,RPの発症リスクを評価するためには,照射条件だけでなく,治療前の肺の状態を適切に把握することが重要と思われる。そこでわれわれは,SBRTを施行した103症例を対象に,治療前CT画像をQZIP-ILDで解析し,症候性RPの発症予測に有用かどうかを検討した。
この検討では,治療前CT画像を用い,肺がん病変を除外した非腫瘍領域の肺構造に着目してQZIP-ILDによる解析を行った。症候性RPを来した症例は,解析対象とした103症例中11症例で認められた。図4に症候性RPの代表例を示す。無症候群(92症例)と症候性群(11症例)を比較したところ,症候性群では,計画標的体積(PTV)およびV20(正常肺において20 Gy以上照射される体積の割合)がいずれも高値であった。次に,QZIP-ILDで算出される8種類の肺陰影の体積を比較したところ,7種類では両群間に有意差を認めなかったが,正常肺の体積のみ,無症候群が3828cc,症候性群が3112ccと,症候性群で有意に低値であった(p=0.02)。さらに,肺構造指標を複合的に評価する目的で,正常肺と気腔(肺気腫およびブラ)の体積を合算した指標を用いたところ,無症候群では4074 cc,症候性群では3148 ccと有意差を認め(p=0.0015),正常肺体積単独での評価と比べて,両群をより明瞭に層別化することが可能であった(図5)。ROC解析においても,症候性RPの発症予測能は,PTVやV20よりも,正常肺+気腔の体積を用いた指標の方が高いAUCを示した(図6)。
図4 QZIP-ILDによるRPの評価
70歳代,男性,非小細胞性原発性肺癌(↓)
図5 無症候群と症候性群の層別化の検討
図6 症候性RPの予測能の比較
まとめ
本稿で取り上げた検討は,単施設の初期的なものであり,十分なエビデンスを示す段階には至っていないが,QZIP-ILDのような肺構造を定量的に解析する手法を用いることで,ILDにおける肺陰影の評価や,RPの発症リスク評価など,従来は視覚的判断に依存していた肺評価を,より客観的にとらえることが可能になると考えられる。今後,さらなる症例の集積と検証を通じて,臨床応用に向けた有用性が明らかになることが期待される。
●参考文献
1)Walsh, S.L., et al., Thorax, 69(3): 216–222, 2014.
2)Ito, Y., et al., Mod.Rheumatol., 29(1) : 98-104, 2019.
3)Aoki, R., Iwasawa, T., et al., Diagnostics(Basel), 12(12):3038, 2022.
4)Ito, Y., Ichikawa, Y., et al., Rheumatology(Oxford), 13 : keae491, 2024.
市川 泰崇(Ichikawa Yasutaka)
1998年 三重大学医学部卒業。2024年~同大学医学部附属病院放射線科科長・放射線部部長・准教授。
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