Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)

第85回日本医学放射線学会総会が,2026年4月16日(木)〜19日(日)にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催された。学会共催ランチョンセミナー30「呼吸動態解析が拓く新たな臨床視点 From Imaging to Clinical Insight : Respiratory Motion Analysis」(ザイオソフト株式会社 / アミン株式会社)では,真鍋徳子氏(自治医科大学附属さいたま医療センター)が座長を務め,方山真朱氏(自治医科大学附属さいたま医療センター)と森谷浩史氏(大原綜合病院)が講演した。

2026年8月号

呼吸動態解析が拓く新たな臨床視点 From Imaging to Clinical Insight : Respiratory Motion Analysis

講演1:呼吸生理を『可視化』する4D-CTが描出する肺・横隔膜の機能と病態

方山 真朱(自治医科大学附属さいたま医療センター集中治療部)

方山 真朱(自治医科大学附属さいたま医療センター集中治療部)

集中治療医の呼吸に対する考え方においては,肺や横隔膜,胸郭は動きの中で傷害されるもので,呼吸管理では人工呼吸器や自発呼吸によって肺がどのように傷つくかを考えながら治療を行っている。肺の診断に多く使われるX線撮影やCTは静的な情報であり,集中治療医が本当に見たい動きの情報を得ることができない。そこで,われわれはCTに時間軸を加えた四次元呼吸ダイナミックCT(4D-CT)を用いて,肺や横隔膜の機能や病態の把握を行っている。本講演では,その取り組みと有用性について,PhyZiodynamicsによる解析を含めて報告する。

静的画像による肺傷害診断の問題点

CTやX線などの静的画像では,同じ患者でも自発呼吸の撮影タイミング(深吸気,深呼気)によって,まったく異なる肺の状態を示すことがあり,集中治療医を惑わせることがある(図1)図1 aを見れば,肺はクリアで人工呼吸器の設定を弱めようと判断する可能性がある。図1 bでは肺の状態は増悪していて,人工呼吸器の設定を強めるなど治療を強化すべきかと考える。しかし,これは同一患者を同じ時に撮影した画像で,呼気と吸気の違いに過ぎない。このように,静的な画像は必ずしも患者の病態を正確に反映したものではないことに注意が必要である。近年,肺の局所の換気動態を画像化するEIT(electrical impedance tomography)が保険収載された。胸にベルトを巻くだけで,肺の中のインピーダンスの変化によって換気の状態を可視化する画期的な装置だが,残念ながらCTに比べて空間解像度は十分とは言えない。

図1 静的画像は自発呼吸との戦い

図1 静的画像は自発呼吸との戦い

 

4D-CTを用いた動態による肺の可視化

そこで,われわれは3D-CTで複数フェーズを撮影し時間軸(time axis)の情報を加えた4D-CT撮影に取り組み,肺の呼吸動態の可視化を行ってきた。2020年から80列CTを用いてスタートし,現在は320列CTにバージョンアップしている。呼吸同期システムを用いることで全肺のダイナミックCTの撮影が可能になっている。これによって集中治療領域の呼吸管理において大きなインパクトを与えることができた。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の診断は複雑で,人工呼吸管理の戦略も慎重に進める必要がある。ARDSに対する人工呼吸管理戦略では,(1) 肺胞過膨張,(2) 肺胞の虚脱再開通,(3) 無気肺による傷害,(4) 呼気終末肺容量:baby lung,(5) stress and strainの5つの要素が重要となる。しかし,これらの判断はこれまで集中治療医の経験などから総合的に判断するしかなかった。4D-CTでは,動態画像から肺の局所および肺容積を誰が見てもわかりやすく可視化し,計測した数値を基に定量化が可能になった(図2)。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで,どの患者に優先して治療を行うべきかの判断を迫られたが,4D-CTによって数値を基にした個別化が可能になったことは大きなパラダイムシフトと言える。また,4D-CTでは,呼気と吸気を繰り返して撮影することで肺の呼吸動態を可視化できる。ストレインマッピングによって肺のどこに空気が取り込まれているか,肺胞の過膨張が換気によって変化する様子が確認でき,動きの中で肺傷害が生じることが可視化された(図3)

図2 4D-CTによる局所および肺容積の可視化

図2 4D-CTによる局所および肺容積の可視化

 

図3 肺胞の過膨張が換気によって変化(W.I.P.)

図3 肺胞の過膨張が換気によって変化(W.I.P.)

 

4D-CTを基にした人工呼吸管理戦略の決定

人工呼吸器では,呼気終末陽圧(PEEP)の設定が重要で,病状に合わせてPEEPの値を変更して治療に当たる。しかし,これまでARDSに対する最適なPEEPの設定は,集中治療医の経験に頼るしかなかった。そこで4D-CTの動態画像を用いて,PEEPの設定が肺胞に与える影響を検証し,American Journal of Respiratory and Critical Care Medicineに発表した1)
ARDSの40症例に対して,15cmH2O(high)と5cmH2O(low)のPEEPで肺胞がどのように変化をするか検証した。その結果,肺のコンプライアンス(膨らみやすさ,伸展性)には大きな変化はなかったが,呼気終末肺容量(EELV)はhigh PEEPの2133mLからlow PEEPでは1269mLに下がった。これは,肺の陽圧を下げることで,コンプライアンスから予測された以上に肺胞の虚脱が出現していると考えられた。虚脱した領域をtidal recruitment(虚脱再開通),不十分な換気領域,肺胞過膨張,呼気終末過膨張の4つの領域で調べたところ,tidal recruitmentは低値,1回の換気による肺胞過膨張は約40%から約20%へ減少していた。このことから,ARDSにおいて人工呼吸器のPEEPの設定を下げることで,肺の換気機能が改善する可能性が示唆された。
また,右の肺区域切除後に人工呼吸器から離脱できなくなった患者に対して,術後に4D-CTを継続的に撮影することで,自発呼吸による肺損傷(P-SILI)と横隔膜の運動傷害の機序と回復の過程が明らかになった(図4)。横隔膜がどのように傷害され,改善を目的とした気管支ステント留置後にどのように回復するかを可視化できた。そのほか,横隔神経麻痺,横隔膜弛緩症,tracheal ballooning,flail chestなども4D-CTで動態が明らかになることで,治療戦略に役立てることが可能になっている。

図4 左主気管支狭窄 P-SILIによる肺損傷および横隔膜の運動傷害の機序と回復過程

図4 左主気管支狭窄 P-SILIによる肺損傷および横隔膜の運動傷害の機序と回復過程
横隔膜がどのように傷害され,どのように回復していくか,初めて可視化した症例

 

PhyZio/dynamics2.0を用いた4D-CTの可能性

われわれは,ザイオソフト社と4D-CTを用いた人工呼吸管理中の呼吸ダイナミクスの解析について共同研究を行っている。その中でも,PhyZiodynamicsはザイオソフト独自のモーショントラッキング技術で,複数の位相のボクセルをトラッキングすることでフェーズ補間やダイナミック計測による定量化などの機能を提供する。補間技術では,従来1呼吸を20分割していたため動きがぎこちなかったが,PhyZiodynamicsによって滑らかな換気動態を可視化することができる。ファンクショナル画像によって,どのようなvelocityやdisplacementが生じているかを把握することも容易になった(図5)。また,dynamic tracking機能では,設定したPOI(関心点)をトラッキングして動きの量を定量化できる。われわれは,dynamic tracking機能について,自発呼吸のありなし,各10症例で4D-CTを撮影しバリデーションを行った。dynamic tracking機能の計測と目視による追跡の結果を比較したところ,誤差は2mm程度に収まった。最新のPhyZio/dynamics2.0のdynamic tracking機能は非常に精度が高く,今後,さまざまな動態解析に活用できると考えられる。また,PhyZio/dynamics2.0は,肺の歪みの画像化も期待でき,動的ストレインによって肺が傷害を受ける様子を可視化して臨床で容易に観察できるようにすることで,肺傷害に対する個別化医療が進むことが期待される。

図5 PhyZio/dynamics 2.0のファンクショナル画像

図5 PhyZio/dynamics 2.0のファンクショナル画像

 

まとめ

4D-CTは,これまで観察が不可能だった肺胞および横隔膜における動的な局所換気パターンの可視化が可能になった。これにより,患者の病態と人工呼吸器の不調和が肺胞および横隔膜に損傷を引き起こすメカニズムが解明され,人工呼吸器を用いた治療戦略を大きく変えることが期待される。

●参考文献
1)Katayama, S., et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med., 212(6):1253-1264,2026.

 

方山 真朱(Katayama Shinshu)
2005年昭和大学医学部卒業。2019年自治医科大学医学部講師,2024年自治医科大学附属さいたま医療センター集中治療部部長,2026年5月より同准教授。

 

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