第1回日本X線CT医学会学術集会が「X線・CTの未来を拓く:イノベーションによる価値創造」を基調テーマに開催(2)
2026-6-5
頭頸部・胸部・循環器領域における
フォトンカウンティングCTの使用経験が報告された
シンポジウム5
第1回日本X線CT医学会学術集会が 2026年5月16日(土)・17日(日)の2日間,品川シーズンテラスカンファレンス(東京都港区)を会場に開催された。CT技術で今一番のホットトピックと言えるフォトンカウンティングCT(PCCT)に関しては,シンポジウムなど複数のセッションで取り上げられた。
この中で1日目5月16日に第1会場で行われたシンポジウム5「Photon Counting CT(頭頸部・胸部・循環器)」では,新沼廣幸氏(聖路加国際病院循環器内科)と吉浦 敬氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科放射線診断治療学分野)が座長を務めて,2題の発表があった。先に,樋渡昭雄氏(名古屋市立大学放射線医学分野)が,「Photon Counting CT:中枢神経領域への臨床応用」をテーマに発表した。樋渡氏は,フォトンカウンティングCTの高空間分解能・低ノイズという特長を説明し,MRIが有意な中枢神経領域でも臨床応用が進んでいると説明。0.2mmという高空間分解能の画像が得られるUHRモードでの脳血管の微細構造や穿通枝,血管の狭窄の描出能の高さについて症例を提示して言及した。スペクトラルイメージングについては,仮想単純CTでの造影剤と出血の鑑別やヨードマップを用いた下垂体腺腫の検出などの有用性を評価した。さらに,低線量での検査が可能となることから小児冠動脈CTへの適応に期待を示した。
2番目に登壇した北川覚也氏(三重大学大学院医学系研究科先進画像診断学講座)は,「フォトンカウンティングCTが拓く心臓CTの新たな展開」をテーマに講演した。フォトンカウンティングCTは従来のEID-CTよりも高い空間分解能を有することから,心臓CTにおいて,ステント内腔や石灰化による狭窄,プラーク性状の評価で優位性があると説明。さらに,スペクトラルイメージングにおいて,造影効果の最適化や石灰化消去が可能であると述べた。
フォトンカウンティングCTについては,シンポジウム5,一般演題4に続いて第1会場で行われた「技術セミナー:各企業の開発最前線(PCCTとAIへの取り組み)」でも取り上げられた。宇都宮大輔氏(横浜市立大学放射線診断科)と横田 元氏(千葉大学大学院医学研究院画像診断・放射線腫瘍学)が座長を務めて,シーメンスヘルスケア(株)とGEヘルスケア・ジャパン(株)の2社から技術的な特長や強みが紹介された。まず日和佐 剛氏(シーメンスヘルスケア ダイアグノスティックイメージング事業本部CT事業部)が,「NAEOTOM Alpha class:Photon-counting CT時代における画像診断技術」をテーマに,「NAEOTOM Alpha」シリーズの3機種(シングルソース1機種・デュアルソース2機種)を紹介した。同社のフォトンカウンティングCTは登場から5年が経過し,これまで1200本を超える査読付き論文が発表されている。日和佐氏は,高空間分解能による診断精度の向上とスペクトル情報の増大による確定的診断への貢献という2つの臨床価値を解説した。
次いで,佐藤秀昭氏(GEヘルスケア・ジャパン イメージング本部CT部)が,「Silicon検出器PCCTという新しい選択肢」と題して,同社初のフォトンカウンティングCT「Photonova Spectra」の技術を紹介した。同社の装置は,独自の「エッジオン」技術を採用したディープシリコン検出器を搭載。最大8ビンのデータを収集する。佐藤氏はこれらを説明した上で,チャージシェアリング・クロストーク・エスケープといった従来の課題を克服し,ビームハードニング補正とスペクトル両方の精度が格段に向上したことを紹介した。
さらに,今回の学術集会では,フォトンカウンティングCTの「次に来る」技術にも焦点が当てられた。2日目5月17日に第2会場で行われたシンポジウム12「新技術(位相コントラストCT・立位CT・極超高解像度CT)」では,高橋 哲氏(愛仁会高槻病院イメージングリサーチセンター)と井田義宏氏(静岡医科学専門大学校)を座長に,3名が発表した。最初に江頭玲子氏(Satsuma Lab, Hawkes Institute, University College London/佐賀大学医学部放射線医学講座)は,「Hierarchical Phase-Contrast Tomography(HiP-CT)は何がすごいのか―見えなかった世界を探り見える世界につなぐ―」をテーマに,欧州シンクロトロン放射光研究所(ESRF)で研究が進められているHiP-CTを紹介した。CTの100倍の解像度と言われるHiP-CTは,吸収コントラストに加え位相シフトを利用することで軟部組織内部の微細構造を描出する。さらに,大量のデータを解析するためのAI技術の開発も進められており,江頭氏はその概要を説明した。
次いで,山田 稔氏〔慶應義塾大学医学部放射線科学教室(診断)〕は,「立位CT構想とAquilion Rise上市までの経緯」をテーマに,産学連携で開発したマルチポジションCT「Aquilion Rise」〔キヤノン(株)〕について報告した。立位での撮影により得られる知見を報告したほか,検診センターでは速やかな検査が可能となりスループットが向上したことなどを紹介。米国では放射線治療計画に応用する研究が進んでいることに言及して,設置面積・コスト削減とともに患者の快適性向上が期待されると展望を語った。
さらに,市川勝弘氏(金沢大学医薬保健研究域保健学系)は,「0.1mm解像度の極超高解像度CTの開発と性能評価」をテーマに発表した。独自開発した世界最高解像度クラスの極超高解像度CTは,検出器ピクセルサイズ0.08mm,実効焦点0.14mmを実現しており,マンモグラフィに匹敵する解像度を誇る。共同研究を行っている整形外科医から高い評価を得ている高精細骨・関節画像を供覧した。その上で,資金調達を進めながら,企業との協業により製品化をめざすという今後の方向性を示した。
シンポジウム12は極超高解像度CTなどの新技術がテーマ
このほか,2日目5月17日 の第1会場では,対馬義人氏(群馬大学大学院医学系研究科放射線診断核医学)と隈丸加奈子氏(順天堂大学データサイエンス学部医療政策・医療経済研究室)が座長を務め,シンポジウム15「ヨード造影剤のサステナビリティ」が行われた。熊坂創真氏(群馬大学医学部附属病院放射線部)がヨードの環境中拡散と生物への影響を報告したほか,大田英揮氏(東北大学)は,「ヨード使用量削減の可能性 ―Sustainable Radiologyへの貢献と現状の課題―」をテーマに,マルチペイシェントインジェクタ活用によるヨード使用量削減の可能性や,プラスチック廃棄物削減および感染性廃棄物低減などの有用性に言及した。
シンポジウム15「ヨード造影剤のサステナビリティ」での総合討論
このシンポジウム15に続き,閉会式へと進んだ。閉会式で挨拶した本学会理事長で,第1回学術集会の大会長を務めた陣崎雅弘氏〔慶應義塾大学医学部放射線科学教室(診断)〕は,当初200名を想定していたところ365名が参加し,オンデマンド配信を含めると400名規模に達する見込みだと,盛会であったことを報告し,参加者に感謝の言葉を述べた。なお,第2回学術集会は,2027年9月ごろの開催を予定しており,The International Society for Computed Tomography(ISCT)との共催をめざしている。
●問い合わせ先
一般社団法人日本X線CT医学会事務局
https://jsctm.org/jsctm2026/
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