第1回日本X線CT医学会学術集会が「X線・CTの未来を拓く:イノベーションによる価値創造」を基調テーマに開催(1)

2026-6-5

CT


開会式や基調講演が行われた第1会場

開会式や基調講演が行われた第1会場

第1回日本X線CT医学会学術集会が 2026年5月16日(土)・17日(日)の2日間,品川シーズンテラスカンファレンス(東京都港区)を会場に開催された(一部演題を除き,5月末〜7月31日までオンデマンド配信)。大会長は,同学会理事長の陣崎雅弘氏〔慶應義塾大学医学部放射線科学教室(診断)教授〕が務め,基調テーマには「X線・CTの未来を拓く:イノベーションによる価値創造」が掲げられた。
セッションは第1・第2の2会場で行われ,プラグラムは基調講演・記念講演,シンポジウム15セッション,一般演題10セッション,技術セミナー,協賛セミナー10セッションが企画された。各セッションではX線CT技術に関する多岐にわたる技術を取り上げており,技術領域としてDual Energy,4D-CT,Photon Counting CT,造影剤・造影技術,動態X線撮影,動態補正,新技術,心臓CT,小児CT,予防医療,AI/DXを設定。参加者が専門とする,または興味のある技術領域や部位に関するセッションを効率良く聴講できるようにプログラムが組まれた。
初日16日の開会式で陣崎大会長は,はじめにX線・CTの歴史および日本X線CT医学会の歩みを動画で紹介した上で,「X線・CTに特化し職種を超えて議論する場となる本学会の設立は,多くの関係者の念願であった。放射線科医,循環器を中心とした他診療科の医師,診療放射線技師,医療工学系の研究者,企業が連携して議論していくことで,さらなる発展につながる」と述べ,学会設立への尽力に感謝の意を示した。

陣崎雅弘大会長(慶應義塾大学)

陣崎雅弘大会長(慶應義塾大学)

 

初日には大会長基調講演が行われ,陣崎大会長が学会設立の経緯やビジョン,国際連携の展望,イノベーション推進に向けた学会の役割などについて紹介した。座長は,粟井和夫氏(地方独立行政法人広島県立病院機構理事長)が務めた。日本X線CT医学会は,国内にCT技術に特化した学会が存在しなかったことから,陣崎大会長が学会設立を見据えてSociety of Advanced Medical Imaging(SAMI)の分科会として2016年に最先端CT研究会を設立,その後,断層映像研究会,循環器MDCT研究会と合流する形で2025年9月に一般社団法人として設立された。陣崎大会長は,日本はX線・CTや撮影法に関するさまざまな技術を継続的に発信してきた画像診断機器分野に強い国であると述べ,イノベーションに必要となる明確で大規模展開を見据えたビジョンの提示,広い臨床的有用性の提案,技術的に挑戦できる実現可能性について,多職種・企業が共に議論することで,CTの発展に貢献できる学会としていきたいと語った。また,国際学会との連携を進め,アジア全体におけるCT分野の中核的な役割を果たしていきたいと展望した。

次いで行われた高橋信次記念講演では,田中良明氏(春日部市立医療センター放射線科参与)が座長を務め,竹原康雄氏(ハイメディック名古屋トラストクリニック画像センター長)が「日本X線CT医学会の原点をたずねる ―高橋トモグラフィーとCT成立の条件―」と題して講演した。この記念講演は,CTの基礎概念を世界に先駆けて提唱し,断層映像研究会を立ち上げた高橋信次氏を記念して設けられたセッションで,第1回の今回は高橋氏に師事していた竹原氏が,回転横断撮影法(高橋トモグラフィー)の原理と歴史,現在のCTに至る技術的変遷と回転横断撮影法の歴史的意義について解説した。高橋氏が1940年代後半に考案した回転横断撮影法は,被写体を乗せた回転椅子とフィルムを同期回転させ,幾何学的にフィルムから一定距離の断面像を取得する方式で軸位断を撮影するものであった。竹原氏は,大きく5法に分けられる回転横断撮影法のうち,1947年に日本医学放射線学会で発表した断続回転撮影法が,X線CTのコンセプトに最も肉薄していたとの考えを示した。そして,高橋氏の回転横断撮影法はハウンズフィールドの研究より約15年先行していたもののCT開発につながらなかった理由として,コンピュータ技術に結びつかなかったことや研究資金規模の差を挙げ,イノベーションを起こすには数学・工学・臨床を一体で回す学際的組織力と,それを支える技術基盤,潤沢な資金が不可欠であると指摘した。竹原氏は,「それでも後に続く研究者たちがたどる遠い道のりの道標として高橋氏の軌跡は現代も輝き続けており,真摯な研究姿勢は常に模範である」と述べ,その功績を称えた。

高橋信次記念講演で登壇した竹原康雄氏(ハイメディック名古屋トラストクリニック)

高橋信次記念講演で登壇した竹原康雄氏(ハイメディック名古屋トラストクリニック)

 

幅広い技術領域の中でも,今春,国内で相次いで新製品が発表されたフォトンカウンティングCT(PCCT)については,多くのセッションが設けられた。16日に第2会場で行われたシンポジウム6「Photon Counting CT(腹部・骨軟部)」では,五島 聡氏(浜松医科大学放射線診断学講座)と林田佳子氏(産業医科大学放射線科学教室)が座長を務め,2題の講演が行われた。1題目として,中村優子氏(広島大学放射線診断科)が「腹部領域におけるPhoton counting detector CTの可能性」と題して発表した。中村氏は,従来のエネルギー積分型ディテクタ(EID)CTとPCCTの違いを説明し,PCCTは電気ノイズ除去と,エネルギーの重み付けがなく低エネルギー情報が正確に反映されてコントラストが向上する点が特長で,腹部領域においては特に線量的に厳しい条件下において画質向上に寄与し,造影効果が1割程度増強すると述べた。また,PCCTのスペクトラル解析については,従来の2つのエネルギー(dual energy)によるスペクトラル解析と比べ,エネルギービンごとに閾値を作ることができ精度が向上することを説明した。そして,PCCT では,複数のエネルギービンを設定できるためK-edgeイメージングが可能であるとして,その実現のためには新たな造影剤が必要だと指摘した。
次いで登壇した福田健志氏(東京慈恵会医科大学附属病院放射線医学講座)は,「フォトンカウンティングCTが切り拓く骨軟部画像の新時代」をテーマに,骨領域のEID-CTとPCCTの比較検討について報告した。骨構造の見え方と画質を評価したところ,PCCTがノイズ低減,SNR/CNR向上,部分容積効果の軽減,骨梁構造の鮮明化において優位であり,特にUHR(超高解像度)モードで差が顕著になることを紹介した。患者の多い変形性関節症については,近年では複数のフェノタイプがあり,フェノタイプにより治療薬を選択する必要があると考えられるようになってきており,PCCTがフェノタイプ評価や進行度評価に応用できる可能性があると示唆した。福田氏は,骨軟部領域におけるスペクトラル解析の注意点についても触れた上で,骨軟部領域においてPCCTの真価を発揮するにはUHRモードを用いることを推奨した。

腹部・骨軟部におけるフォトンカウンティングCTの可能性を紹介したシンポジウム6

腹部・骨軟部におけるフォトンカウンティングCTの可能性を紹介したシンポジウム6

 

●問い合わせ先
一般社団法人日本X線CT医学会事務局
https://jsctm.org/jsctm2026/

 

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