Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2021年8月号

2room型のハイブリッドERが24時間365日の“断らない救急医療”をサポート 〜先進の80列CTとダブルスライドCアーム採用のAngio装置で重症外傷や急性期脳梗塞などの迅速な処置に対応〜

名古屋掖済会病院

左から北川喜己センター長、若山巳美副技師長、救急科・小川健一朗医師

左から北川喜己センター長、若山巳美副技師長、救急科・小川健一朗医師

 

公益社団法人日本海員掖済会 名古屋掖済会病院(38診療科、602床)では、2020年12月、救命救急センターに80列CT「Aquilion Prime SP / i Edition」とダブルスライド式Cアームを採用した血管撮影装置「Alphenix Sky+」を設置した2room型の“ハイブリッドERシステム(以下、ハイブリッドER)”が稼働した。年間1万台の救急車を受け入れ、24時間365日“断らない救急医療”を提供する同センターにおける2room型ハイブリッドERの運用について、河野 弘院長、北川喜己副院長/救命救急センター長、救急科の小川健一朗医師、中央放射線部の若山巳美副技師長に取材した。

河野 弘 院長

河野 弘 院長

 

“掖済”の精神を持って地域の急性期医療を担う

“掖済”とは“腋に手を添えて救い導く”意味で、日本海員掖済会は郵便制度の創設者である前島密を中心に船員(海員)の支援を目的に創設された。時代の変化に合わせて、現在では地域における医療や介護事業の提供を行っている。病院は全国に8施設あり、同院は7番目の病院として1948年に開設された。河野院長は病院の診療について、「病院は旧来の船員支援の事業と同時に、名古屋市南西部の基幹病院として急性期医療を担うという2つの役割を果たしています。急性期の高度医療の提供では救急医療を中心に、がんに対するロボット支援手術、心臓カテーテル室やPET-CTなどを整備して、救急で搬送された患者さんに対して継続して最適な医療を提供できる体制を構築しています」と述べる。
同院では、1978年に東海地方で第1号の救命救急センターを開設、2006年に現在の施設を新築した。ER型救急医療を行っており、専従の救急医による24時間365日の体制で“断らない救急医療”を提供している。スタッフは救急科医師が13名、専従の診療放射線技師3名など、救急患者数は年間4万人で、うち救急車の受け入れは約1万台に上る。救急医療の現状を北川センター長は、「すべての救急患者を受け入れているので、扱う疾患は通常の上気道炎(風邪)から重傷の交通外傷や労災までさまざまです。初期診療は救急専従医が対応し、専門的な治療が必要な場合には各診療科と連携して診療に当たっています」と述べる。

2020年12月に東海北陸地方初のハイブリッドERが稼働

同センターでは、2020年12月からCTと血管撮影装置(Angio)を組み合わせたハイブリッドERが稼働している。ハイブリッドERでは、救急車から患者を直接搬入し、初療、CT撮影、血管撮影、カテーテル処置、手術などが同じ部屋で行える。同センターは2006年のリニューアル時に、救急外来フロアをCTなどを設置した放射線部門を中心に、診察室や処置室から最短で検査が行えるレイアウトにした。北川センター長はハイブリッドER導入について、「ER型救急が機能的に行えるように環境を整えてきましたが、重症外傷や超急性期の脳卒中診療など、さらに厳しい時間の管理が求められるようになってきました。検査や処置のための部屋の移動やベッドの載せ換えなどの問題を解決するのがハイブリッドERです」と説明する。救急科の小川医師は、「救急医療は時間との勝負で、わずかな処置の遅れが患者さんの予後に影響します。脾損傷の重症患者でカテーテルでの塞栓のために載せ換えを行った際に、体内の血餅が崩れて出血し、全摘せざるを得ないという症例を経験したことが、ハイブリッドER導入を強く希望することにつながりました」と述べる。

移動式CTガントリによる2room型で構築

今回のハイブリッドERでは、CTとAngioを別々の部屋に設置し使用時だけCTを移動させる2room型のシステムを採用した。2room型では、通常時はCTとAngio装置を別々の部屋に設置し、Angio CTとして使用する際にCTガントリをAngioの部屋に移動させる。同センターでは、ディープラーニングを用いた画像再構成技術である“Advanced intelligent Clear-IQ Engine-integrated(AiCE-i)”などを搭載した
80列CTのAquilion Prime SP / i Edition(以下、Aquilion Prime SP)とAngioにはAlphenix Sky+を採用し、Angio室には無影灯や生体モニター、人工呼吸器など手術まで可能な環境を整えた。
2room型の採用について北川センター長は、「当センターはCTの撮影件数が多く、単独でもCTが使える環境が必要だったこと、処置室には広い空間が必要だったことから、CTを必要に応じて移動させて活用できる2room型としました」と述べる。同センターでは、年間2万件、1日平均50件以上のCT検査が行われており、若山副技師長はCTの運用について、「通常は2roomでCT単独での使用を基本として、必要に応じてAngio室に移動しています。隣室から移動して撮影開始まで1分以内で可能です。撮影スピードも速く救急撮影に適した装置だと思います」と言う。
また、Angio室の空間について小川医師は、「外傷の処置の際にはできるだけ広いスペースが必要ですが、設計段階からキヤノンメディカルシステムズと相談して、処置室内の空間を確保すべく検討を行いました。麻酔や頭部外傷の開頭や穿頭などでは、頭側からアプローチすることが多く、2room型ではCTを隣の部屋へ待避できるので、寝台の頭側に大きなスペースが取れます」と述べる。

*AiCE-iは画像再構成処理の設計段階でAI技術を用いており、本システム自体に自己学習機能は有しておりません。

■‌ Aquilion Prime SP / i EditionとAlphenix Sky+によるハイブリッドERシステム

2room型でCTが隣室(奥)へ待避することで広い処置空間を確保

2room型でCTが隣室(奥)へ待避することで広い処置空間を確保

 

Alphenix Sky+はダブルスライドCアームで横入れでの3D撮影が可能

Alphenix Sky+はダブルスライドCアームで横入れでの3D撮影が可能

 

症例1:下肢3D撮影 動脈吻合後の縫合不全。大腿動脈背側から血管外漏出していることを3D-DSAで確認(大腿動脈切断患者)

症例1:下肢3D撮影
動脈吻合後の縫合不全。大腿動脈背側から血管外漏出していることを3D-DSAで確認(大腿動脈切断患者)

 

症例2:頭部CT Perfusion ベイズ推定を用いた“Brain CT Perfusion”解析結果(脳梗塞患者)

症例2:頭部CT Perfusion
ベイズ推定を用いた“Brain CT Perfusion”解析結果(脳梗塞患者)

 

 

重症外傷、急性期脳梗塞、PCPSを中心に運用

ハイブリッドERは、重症外傷、脳梗塞で血栓回収療法が必要な場合、心肺停止で経皮的心肺補助(PCPS)が必要とされるケースで優先して使用される。そのほかは当日のERのリーダーが管理し、救急隊からの通報を受けて判断する。運用開始から2021年5月末まで266件で使用され、重症外傷の止血や塞栓のためのカテーテル術のほか、透視下手技として整形外科の整復術、内視鏡による鏡視下手技、ペースメーカーの植え込み術など幅広い手技を行っている。北川センター長は運用後の評価について、「処置だけでなく、救急ではCT後の透視撮影というケースも多いので、患者を移動させずに撮影できるメリットは大いにあります。ハイブリッドERでは敷居はできるだけ下げて、さまざまな症例で使えるように運用しています」と述べる。
小川医師は、外傷系ではカテーテルの止血術の際にCTで撮影した画像を利用することで、血管の走行や分枝の情報をあらかじめ把握でき手技の速度や精度が向上することを評価する。急性期脳血管障害に対しては、ハイブリッドERで単純と造影CTを撮影し、「Vitrea」のベイズ推定アルゴリズムを用いたCT Perfusionを含めた画像検査で判断を行う。血栓回収療法が必要な場合には、そのまま透視下での手技に移行する。ハイブリッドER導入以前には、血栓回収療法は別棟上階の血管撮影室に移動する必要があり、移動や準備に時間がかかっていた。ハイブリッドERでは、搬入からCT撮影、手技まで1時間程度で終了した症例も経験したと小川医師は言う。若山副技師長は、「搬入から検査、血栓回収療法までを同じ部屋、同じスタッフで行えるので、伝達や準備などの時間も短縮されます。そのメリットは大きいですね」と述べる。また、心肺停止患者に対するPCPSでは、そのままAlphenix Sky+での透視下での手技が行える。小川医師は、「10分以下で補助循環が確立できるようになっています」と評価する。

ダブルスライドCアームによる3D撮影を活用

Alphenix Sky+では、天井走行式ダブルスライドCアームによって寝台に対して“横入れ”でのアプローチが可能で、Cアームを回転させて3D撮影ができる。また、Cアームを寝台周囲から待避させることができ、処置や手技の際に広い空間を確保できるのも特徴だ。Alphenix Sky+について小川医師は、「従来は頭部の3D撮影の場合、頭側にCアームを移動させる必要があり、人工呼吸器や各種の挿管が干渉することがありました。Alphenix Sky+では、寝台の横位置からアプローチしてそのまま3D撮影が可能で、頭部だけでなく胸腹部、さらには下肢まで全身をカバーできるので、緊急の止血や塞栓術の際に助かっています」と述べる。
AiCE-iの活用について若山副技師長は、「多時相を撮影する救急では、AiCE-iによる被ばく低減に期待しています。救急では撮影直後から画像を確認できる“InstaView”と併用することで医師のニーズに柔軟に対応していきたいですね」と言う。また、若山副技師長は、AiCE-iの適用でより速いスキャン時間の撮影が可能になれば、意思疎通が難しい患者の体動(呼吸停止不可)などにも対応できると期待する。
稼働から半年の経験を経て小川医師は、「ハイブリッドERでの検査や処置の時間短縮や患者移動の減少による優位性を実感しています」と述べる。北川センター長は今後の方向性について、「ハイブリッドERには高度で特別な症例を扱うイメージがあったのですが、実際に運用してみると当院のような救命救急センターにこそ必要なシステムだと実感しています。そのためには、良いモデルとなるべく救急にかかわるスタッフの教育を含めた運用の成熟、患者の予後を含めた治療効果についても検討を行っていきます」と述べる。
“最後の砦”として地域の医療を守る救命救急センターで、ハイブリッドERの真価が発揮されることが期待される。

(2021年6月30日取材)

 

公益社団法人日本海員掖済会 名古屋掖済会病院

公益社団法人日本海員掖済会
名古屋掖済会病院
愛知県名古屋市中川区松年町4-66
TEL 052-652-7711
http://www.nagoya-ekisaikaihosp.jp/

 

Aquilion Prime SP
Alphenix Sky+

 

●そのほかの施設取材報告はこちら(インナビ・アーカイブへ)

一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion Prime SP TSX-303B
認証番号:229ACBZX00012000

一般的名称:据置型デジタル式循環器用X線透視診断装置
販売名:X線循環器診断システム Alphenix INFX-8000C
認証番号:218ACBZX00004000

一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション
販売名:医用画像処理ワークステーション
Vitrea VWS-001SA
認証番号:224ACBZX00045000

一般的名称:汎用画像診断装置ワークステーション
販売名:アンギオワークステーション XIDF-AWS801
認証番号:224ACBZX00032000

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