Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2022年7月号

CXDI×ワイヤレス・低線量・軽量モデル

病院とクリニックでフル活用さまざまな医療シーンで活躍するCXDIの最新ワイヤレスモデル 〜効率化によるスムーズな検査の提供で地域に貢献〜

日本鋼管病院・こうかんクリニック

複数の関連施設で活躍するCXDIシリーズ

複数の関連施設で活躍するCXDIシリーズ

 

日本鋼管病院・こうかんクリニックは,2003年のクリニック開院を機に,当時まだ普及が進んでいなかったFPDをいち早く導入し,キヤノンメディカルシステムズの「CXDIシリーズ」によるデジタル運用を開始した。2017年に,同院・クリニックともに旧式のCXDIおよびCRをすべてCXDIの最新ワイヤレスモデルへ更新。パネルのさらなる軽量化や高速な画像表示,コントロールソフトウエア“CXDI Control Software NE”の高い操作性など,進化したCXDIがX線検査を効率化している。同院・クリニックのFPD導入の変遷と現状,運用の実際について,医療技術部部長を務める放射線技術科の佐藤武夫科長と,同科の山口英樹副科長に取材した。

佐藤武夫 科長

佐藤武夫 科長

山口英樹 副科長

山口英樹 副科長

 

病院とクリニックで地域に根ざした診療を展開

医療法人社団こうかん会は,神奈川県川崎市で日本鋼管病院,こうかんクリニック,水江診療所,こうかん訪問看護ステーションを運営している。核となる日本鋼管病院は1937年の創立以来,川崎市初の総合病院として地域の中核的役割を担ってきた。診療科は30科で地域の幅広い医療ニーズに対応し,病床数は395床を有している。外来は病院とクリニックを合わせて1日あたり約1000人が受診する。
日本鋼管病院は入院と救急外来,院長特別外来,一部の専門外来,歯科口腔外科,人間ドック,各種健診の受け入れを担っている。一方,隣接するこうかんクリニックは,日本鋼管病院の外来診療を行う専門施設として,主な診療科の一般外来および専門外来を担当する。地域の医療機関と密に連携し,入院や手術,専門的な検査が必要な患者を速やかに日本鋼管病院につなぐ役割を担うことで,地域完結型医療を推進する要となっている。

件数の多い整形外科手術を専門性の高い技術でサポート

同院・クリニックの放射線技術科には,25名の診療放射線技師が在籍しており,病院・クリニックで23名,水江診療所で2名の技師が検査業務に当たっている。画像診断機器は一般撮影装置(病院:2台,クリニック:2台)およびCXDIシリーズ(下表)のほか,CT (2台),MRI(1.5T:2台),X線透視装置(3台),
ポータブル撮影装置(4台),外科用Cアーム(病院:4台,クリニック:1台)などが整備されている。一般撮影の検査数は,月平均で病院が1827.7件,クリニックが2116.7件となっている(2021年度実績)。
佐藤科長は放射線技術科の特徴について,「当院は,スポーツ整形外科や膝,脊椎外科などの専門外来経由の手術件数の割合が多く,1000床ほどの病院と同じ規模の4台もの外科用Cアーム,および高い専門性を持った技師を手術室に配置して,数多くの手術が円滑に行われています」と説明する。

先を見据えたFPD導入の決断とCXDIのアップデート

同院・クリニックは2003年のクリニック開院時に,クリニックに立位撮影用と臥位撮影用のCXDIを導入した。当時のデジタルラジオグラフィはCRが主流で,ほとんどの施設がCRによる検査を行っていたが,同院・クリニックはFPDの将来性を見据えて導入を決断。使いやすさや画質などを総合的に評価した結果,CXDIの採用を決定した。続いて,2005年に病院のCR(一部を除く)を有線可搬型のCXDIに変更したことで,FPD導入で期待された高画質と画像表示の高速化による検査効率の向上を進めることができた。
さらに,2017年には同院・クリニックのオールFPD化とCXDIのアップデートを実施。高画質・低線量・軽量で,最新技術を搭載したフルサイズの「CXDI-410C Wireless」,半切サイズの「CXDI-710C Wireless」,大四切サイズの「CXDI-810C Wireless」が導入された。CXDIを継続使用している理由について,佐藤科長は,「日々多くの検査を行う一般撮影では,特に使い勝手の良さが重要です。CXDIは初期モデルから一貫してソフト・ハードともに使いやすく,現場から高い評価を得ていました。また,故障などのトラブルも少なく安定的に稼働しており,メンテナンスもキヤノンのサービススタッフが熱心に対応してくれるなど,安心して使用できたことが大きいです」と話す。
現在は,同院・クリニックで汎用性の高い最新モデルに統一されたが,変遷を振り返るとCRとFPDの混在,また,シンチレータが異なるFPDが混在する時期があった。システムの移行期に段階的に画質を調整する対応を行った山口副科長は,「CXDIはきめ細やかな画像処理パラメータがあり,望む画像への調整が行いやすく,移行時に大きな苦労はありませんでした」と話す。また,近年,各施設に最適化が求められ,関心が高い撮影線量については,最新モデルではセンサの高感度化と散乱線低減処理により,以前のモデルに比べ3割程度の線量低減を実現している。

CXDIの稼働状況

CXDIの稼働状況

 

持ちやすいCXDIでポジショニングのストレスが軽減

最新モデルのCXDIは筐体にカーボンを採用することで,バッテリーを搭載した状態で2.8kg(CXDI-410C Wireless),2.3kg(CXDI-710C Wireless),1.8kg(CXDI-810C Wireless)と軽量化を実現し,診療放射線技師の負担軽減に寄与している。山口副科長は,「CXDIは,ユーザーのニーズに応える形でモデルチェンジごとに軽量化が図られてきましたが,導入した最新モデルは非常に軽く,片手でも容易に扱えるようになり,特に女性技師から好評です。背面に深い溝があることでグリップしやすく,安心してFPDをホールドできるので患者対応に集中でき,検査中のストレス軽減に大きく貢献しています」と,CXDIの取り回しの良さを高く評価する。
また,以前の有線可搬型タイプでは,膝のスカイライン撮影(膝関節軸位撮影)が難しいケースがあるためCRを併用していたが,導入されたCXDIは軽量であることから,患者に大四切サイズのパネルを保持してもらった状態で撮影することができ,検査の効率化,技師の負担軽減を実現している。

背面部に四辺のグリップと深い溝を備え,つかみやすい形状で技師のストレスを軽減

背面部に四辺のグリップと深い溝を備え,つかみやすい形状で技師のストレスを軽減

 

病院における運用

効率的かつ確実に業務をサポートするプラットフォーム

病院では一般撮影室2室,ポータブル装置1台にそれぞれCXDIが導入されている。一般撮影室では,入院患者の経過観察や専門外来,救急外来,術後撮影,人間ドックや健診の撮影を行っている。経過観察では胸部や腹部の撮影が多いが,画素サイズ125μmの高解像度や散乱線低減処理により視認性の高い良好な画像が得られている。散乱線低減処理について山口副科長は,「グリッドを使用しない撮影画像にはすべて散乱線低減処理を施しますが,画像がぼけることもなく,粒状性の良い滑らかな画像を得られ,スループットの向上に寄与しています」と述べる。また,CXDIの画像処理機能は,ダイナミックレンジを高輝度部と低輝度部に分けて調整できるため,胸腰椎移行部などでもバランスの良い調整が可能となっている(症例1)。加えて,“アドバンスエッジ強調”では,カテーテルや微細構造,骨などの視認性を向上させる処理をボタン1つで行えるなど,CXDIは臨床に即した画像処理機能により診断能の高い画像を提供することができる(症例2)。
CXDI Control Software NEの操作性について,同院・クリニックでは画像の撮影順を並べ替える機能を高く評価している。複数方向を撮影する整形外科や,さまざまな部位を撮影する外傷の検査において,患者の負担や体位,使用FPDの種類などを考慮して,撮影順をタッチ操作で簡単に並べ替えることができる。撮影後には医師が観察しやすいようにオーダ順に戻した状態で画像提供が可能だ。佐藤科長は,「正面と側面など撮影順を誤った場合にも簡単に入れ替えができ,画像名の打ち直しや処理条件の変更を行う必要がありません。撮り忘れがある場合には検査終了前にアラートが表示されるなど,スムーズで確実な検査の実施をサポートしてくれます」と話す。
また,X線検査の効率化について山口副科長は,「撮影枚数が多い施設ほど,迅速なプレビュー表示による効率化のメリットが大きいです。以前は撮影後約3秒を要しましたが,今は撮影後1秒で画像が確認でき,画像確認から次の撮影への移行が格段にスムーズになりました」と述べる。ポータブル装置による病棟撮影でも,素早い画像表示が活躍している。看護師や医師などを待たせる時間ロスを短縮でき,スタッフの業務効率向上やストレス軽減にも貢献している。

■CXDIによる臨床画像

症例1 胸腰椎移行部側面画像

症例1 胸腰椎移行部側面画像
骨盤部の高輝度と肺野部の低輝度を分けてダイナミックレンジを調整でき,良好に描出することができる。

症例2 尾骨側面画像

症例2 尾骨側面画像
通常画像(左)と比べ,アドバンスエッジ強調(右)を使用することで尾骨が強調表示され,診断の補助に役立てることができる。

 

クリニックにおける運用

ステッチング機能で長尺撮影もスムーズに実施

クリニックにも一般撮影室が2室あり,整形外科,内科,耳鼻科,泌尿器科などを中心に,外来の各診療科の検査や入院時の胸部撮影に対応する。
クリニックの撮影で特徴的なのが下肢全長撮影である(症例3)。X脚やO脚,膝手術前の両足の撮影,骨切り術の術前計測などで下肢全長撮影のニーズが高く,多い日には午前中で10件ほどのオーダがある。CXDI Control Software NEには長尺撮影の画像を貼り合わせる“ステッチング機能”が搭載されており,佐藤科長は,「撮影後,マニュアルで画像を重ね合わせてステッチングのボタンを押すと,すぐに長尺画像が作成されます。下肢全長撮影は,そのほかに通常の膝関節などの撮影オーダもあり,トータルでの撮影時間が若干かかりますが,ステッチングの精度が高いため,ストレスなく検査が進められます」と述べる。

■CXDIによる臨床画像

症例3 下肢全長撮影

症例3 下肢全長撮影
高位脛骨骨切り術,右膝変形性膝関節症術前に撮影された画像。この画像から手術時の補正角度を推定している。

 

スムーズな画像の並べ替えをサポートするタッチ操作での直感的な操作性

スムーズな画像の並べ替えをサポートするタッチ操作での直感的な操作性

 

人口増加で医療ニーズが高まる地域へのさらなる貢献をめざす

佐藤科長は,同院・クリニックのこれからについて,「川崎市は人口が増加傾向にある特殊な地域であることに加え,同時に高齢化も進んでいるため,医療ニーズはますます増えていくと思われます。当院では急性期を維持しつつ,基本理念である『すべては患者さんのために』をモットーに,地域との連携を深めて,これからも安心・安全な医療で地域社会に貢献していきます」と語る。
X線検査を効率化するCXDIが,地域完結型医療をめざす同院・クリニックをこれからも支えていく。

(2022年4月8日取材)

一般的名称:X線平面検出器出力読取式デジタルラジオグラフ
 販売名:デジタルラジオグラフィ CXDI-410C Wireless 認証番号:229ABBZX00049000
 販売名:デジタルラジオグラフィ CXDI-710C Wireless 認証番号:229ABBZX00020000
 販売名:デジタルラジオグラフィ CXDI-810C Wireless 認証番号:229ABBZX00029000
製造販売元:キヤノン株式会社

 

日本鋼管病院

医療法人社団こうかん会
日本鋼管病院
神奈川県川崎市川崎区鋼管通1-2-1
TEL 044-333-5591
https://www.koukankai.or.jp/index.html

 

こうかんクリニック

医療法人社団こうかん会
こうかんクリニック
神奈川県川崎市川崎区鋼管通1-2-3
TEL 044-366-8900
https://www.koukankai.or.jp/index.html

 

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