Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)
2026年6月号
先進のADCTとモーションアーチファクト低減技術をSHDの術前評価に活用し適切な治療を提供 ~心臓全体の動きを低減する「CLEAR Motion(Whole Heart)」で僧帽弁、三尖弁を解析し外科・内科が連携した治療を支援~
名古屋ハートセンター
名古屋ハートセンター(大川育秀院長、64床)は、循環器疾患に対する高度で先進的な治療や24時間365日の救急医療を行う専門病院である。同センターでは、2025年5月にキヤノンの320列CTのフラッグシップ「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」を導入した。ワンビートと高速撮影でのβブロッカー使用症例の削減や高精細画像による診断能の向上に加えて、新たに搭載されたモーションアーチファクト低減技術「CLEAR Motion(Whole Heart)」による構造的心疾患(structural heart disease:SHD)の弁の描出能向上が期待されている。心臓血管外科の北村英樹副院長、循環器内科の杉浦淳史部長、診療放射線部門の小林俊博技師長、CT担当・川端良拓技師に取材した。
心臓血管外科・ |
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循環器疾患の先進的医療と救急医療の提供で地域に貢献
名古屋ハートセンターは、2008年10月に開院、循環器内科、心臓血管外科を中心に心臓に特化した診療を行っている。北村副院長は、「64床と小規模ながら心臓や血管などの循環器疾患・心臓疾患に特化した病院として先進的な医療を提供しています。心臓血管外科と循環器内科が連携してハートチームとして、カテーテル治療や内視鏡を駆使した低侵襲心臓手術(minimally invasive cardiac surgery:MICS)など、専門的な治療を提供しています」と述べる。カテーテル治療に関しては、PCIが年間1000件、不整脈に対するアブレーション治療は約700件と東海エリアでもトップクラスの件数を行っている。SHDに対しては、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)や僧帽弁閉鎖不全症に対する経皮的僧帽弁クリップ術(M-TEER)などのほか、2026年4月には中部東海地区での第1例となる「経皮的三尖弁接合不全修復システム(TriClipシステム)」による三尖弁の形成術を行った。心臓手術に関しても、虚血性疾患、弁膜症、大血管の全領域をカバーし、北村副院長を中心にMICSなど低侵襲手術を積極的に行っている。
また、心筋梗塞や大動脈解離など緊急対応が必要な疾患に対応するため、24時間365日の救急対応体制を取っているのも特徴だ。北村副院長は、「循環器の専門病院として内科、外科を中心に各診療科や担当部門が連携して、迅速に対応できるのが特徴です。診断から治療までの意思決定の速さ、搬送から治療開始までのスピードが救急疾患に対する治療成績の向上にもつながっています」と説明する。設備としては、手術室が2部屋、心臓カテーテル室が4部屋でうち1部屋が外科手術にも対応可能なハイブリッドオペ室となっている。画像診断装置はCTのほか、1.5T MRIが1台、超音波診断装置が14台、そのほかMICSに使用する3D内視鏡など最新の設備を整えている。
弁膜症などSHDを視野に320列CTを導入
同センターでは、開院から他社製MDCTで心臓CTを年間約5000件行ってきた。2025年5月に、ADCTのフラッグシップで超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」などAI技術を用いて開発した画像再構成技術で高精度な心臓CT検査を可能にするAquilion ONE / INSIGHT Editionに更新した。CTの更新について小林技師長は、「装置更新に当たっては、これからは冠動脈CTだけでなく、SHDの弁膜症の診断や心筋性状の把握なども重要になることから、面検出器と高速回転による心臓の描出能の向上だけでなく、体動補正技術であるCLEAR Motion による弁の描出能向上などを期待してAquilion ONE / INSIGHT Editionを選定しました」と述べる。
SHDに対するCT撮影について杉浦部長は、「SHDの患者に対しては、ほぼ全例で心臓CTを行っています。MICSが可能か、あるいはカテーテル治療の適応となるのかを判断するには、弁の評価だけでなく冠動脈や大動脈の形状や石灰化の状態などの評価が必要で、CTは欠かせません」と述べる。弁膜症に対しては、ハートチームで適応を判断する。SHDに対する適応判断は『弁膜症治療のガイドライン』に沿って行われるが、北村副院長は、「判断が難しい症例については、週1回のハートチームカンファレンスでCTをはじめ検査結果を共有して治療方針を決定しています。CTの精度が上がり、冠動脈の狭窄の程度が正確に把握できれば、カテーテル検査での血管造影が省けたり、閉塞がなければ弁置換術単独でよいなどの術式の判断がより迅速で的確に行えるようになるでしょう」と期待する。
ワンビートと高速撮影でβブロッカー使用症例が減少
Aquilion ONE / INSIGHT Editionでは、面検出器と0.24秒の高速回転によって、これまでより高い心拍数でも検査が可能になった。北村副院長は、「旧装置の心臓CTでは、心拍数を抑えて検査することが必要で、βブロッカーの使用が必須でした。面検出器とガントリ回転速度の高速化で、心拍数をシビアにコントロールしなくても検査が可能になり、検査のワークフローが向上しています」と述べる。従来は心拍数65bpm以下を目標として検査前のβブロッカーの投与を行っていた。川端技師は心臓CTの検査プロトコールについて、「Aquilion ONE / INSIGHT Editionでは、検出器の幅が16cmと広がりボリュームスキャンによって1心拍で心臓がカバーできること、また、PIQEとCLEAR Motionによるモーションアーチファクトの低減によって、心拍数80bpm以下ではβブロッカーを投与せず検査を行っています。前機種では心臓検査の80%でβブロッカーを使用していましたが、現在は30%に削減されており、レートコントロールのための待機時間が少なくなり、検査時間の短縮にもつながっています」と言う。また、CLEAR Motionの効果について小林技師長は、「以前は静止位相を探すのに時間がかかっていたのですが、Aquilion ONE / INSIGHT EditionではCLEAR Motionでほぼオートで抽出することが可能で、再構成時間も削減されており、業務の効率化にもつながっています」と評価する。
弁の動きを低減するCLEAR Motion (Whole Heart)
同センターでは、2026年3月からCLEAR Motion(Whole Heart)(以下、CM)の利用を開始した。キヤノンの体動補正技術であるCLEAR Motionには、肺野領域のLung、心臓の冠動脈をターゲットにしたCardiacがラインアップされていたが、新たに冠動脈に加えて弁や心筋を含む心臓全体を対象にしたCMがリリースされた。CMでは、心腔内の弁の動きに対してモーションアーチファクトの低減が可能になる。北村副院長はCMへの期待について、「CMでは、弁の動きのアーチファクトが除去されて、大動脈弁や僧帽弁の弁尖の逸脱や腱索の状態、乳頭筋までの連続性などが確認できました。弁膜症治療の術前プランニングは経食道エコーで行っていますが、CMによってCTによる弁の描出能が向上すれば、術前に精細な設計図が得られることになり治療精度の向上が期待できるため、経食道エコーを省きCTのみでの評価も検討しています。旧装置でも大動脈弁の3D構築は行っていましたが、術前のプランニングに使うほどの精度がありませんでした。CMでは3Dの精度が上がると同時に動きを加えた4Dによる解析が期待できます」と述べる。杉浦部長は、「弁の評価では、解剖学的な評価と4Dによる動きの評価に期待しています。動いている心臓は心電図同期で撮影しても、完全にブレを排除することは難しいことでした。CMで動きの影響を排除できれば、弁の構造の評価がより正確に可能となり、術前のプランニングにも役立ちます。さらに、4Dによって拡張期と収縮期での弁の形態の違いや乳頭筋の位置関係まで把握できれば、より正確な評価やプランニングができます」と述べる。
特に、CMで期待されるのが僧帽弁の評価だ。僧帽弁は大動脈弁に比べて動きが大きく、複雑な構造で描出が難しかった。杉浦部長は、「CMでは、僧帽弁についても弁や腱索、乳頭筋の形状まで描出できる可能性があります。これによって、患者さんによって異なる解剖学的な特徴を把握してアプローチが可能になり、さらに4Dで確認できれば有用性が高いと期待しています」と述べる。CMによる弁構造の描出について川端技師は、「CMでは明らかに止まっている位相が増えたと実感しています。弁膜症については、すべての症例で4Dの再構成を行って技術的な課題を洗い出しているところです。撮影に関しては、CMになって大動脈弁や僧帽弁についてはクリアに描出できていると感じています」と述べる。
■Aquilion ONE / INSIGHT EditionのCLEAR Motion(Whole Heart)による臨床画像
図1 大動脈弁狭窄症(66bpm)収縮期
CLEAR Motionにより大動脈弁に付着した石灰化を含めたモーションアーチファクトが低減されることでより正確な診断が可能
図2 僧帽弁閉鎖不全症(69bpm)収縮期
CLEAR Motionにより僧帽弁のモーションが抑制されており、閉鎖不全の評価に大きく貢献している。
図3 僧帽弁閉鎖不全症(72bpm)
CLEAR Motion + PIQE画像を用いた4D表示により僧帽弁、腱索、乳頭筋の構造関係を明確に観察することが可能(画像は4D表示の1コマ)
CMによる三尖弁の4D解析など今後に期待
今後、CMでの描出が期待されるのが三尖弁だ。三尖弁の閉鎖不全症に対するカテーテル治療は、TriClipを用いた弁形成術の臨床応用が始まったばかりだが、さらに弁置換のためのデバイスの投入も視野に入る。杉浦部長は、「三尖弁は僧帽弁に比べて薄く動きも複雑で、また、右心系は血液の流れが遅いので造影タイミングなどにも工夫が必要で、CTでの描出が難しい弁です。当院では、造影プロトコールを検討してきれいに描出できるようになっていますが、そこにCMが加わることで、将来的な弁置換のための解剖学的な評価や弁輪計測、さらには4DCTによる評価が可能になるのではと期待しています」と言う。
高速撮影や体動補正などの画像技術の進化が、SHDの治療の未来を変えていくことが期待される。
(2026年4月3日取材)
*本記事中のAI技術については設計の段階で用いたものであり、本システムが自己学習することはありません。
*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。
一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion ONE TSX-308A
認証番号:305ACBZX00005000
製造販売元:キヤノン株式会社

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