Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)
2026年10月号
ADCTを融合したAngio CTとハイエンド超音波診断装置の強みを生かしたIVRを実践 〜ADCTの16cmのカバレッジと高時間分解能、超音波の低流速血流イメージングがIVRの精度向上に貢献〜
埼玉医科大学国際医療センター
埼玉医科大学国際医療センター(佐伯俊昭病院長、756床)は、がん、心臓病、救命救急に特化しており、世界最高水準の医療の提供をめざしている。埼玉県西部地域医療における最後の砦としての役割を果たすべく、2025年7月に、キヤノンの320列Area Detector CT(ADCT)「Aquilion ONE」と高速Cアーム回転による短時間撮影が可能な血管撮影装置「Alphenix Sky+」を同室設置したAngio CTに加え、全身の検査に対応する高性能超音波診断装置「Aplio i800 / Prism Edition(Aplio i800)」を導入した。同センターにおける各モダリティの強みを生かした高精度な画像下治療(IVR)の実際について、画像診断科の中澤賢准教授、宇佐見陽子准教授、中央放射線部の鈴木英之技師に取材した。
中澤 賢 准教授 |
宇佐見陽子 准教授 |
鈴木英之 技師 |
がん、心臓病、救急医療に特化し専門性の高い高度な医療を提供
埼玉医科大学国際医療センターは、「患者中心主義」を基本理念に掲げ、2007年4月、埼玉医科大学の日高キャンパスに開設された。3kmほど離れた場所に位置する埼玉医科大学病院とは2施設で1つの大きなメディカルセンターを形成しており、大学病院では良性疾患から高度医療なども含めた幅広い診療を、国際医療センターでは「がん」「心臓病」「脳卒中を含めた救急医療」に特化した高度先進医療を提供するなど、専門領域を担って診療に当たっている。国際医療センターは、包括的がんセンター、心臓病センター、救命救急センターの大きく3つで構成されており、横のつながりを重視したチーム医療を実践。また、救命救急センターでは「断らない救急」をモットーに掲げ、国内最高水準の救急医療を24時間体制で提供している。
より質の高いIVRの実現に向け高機能なAngio CTと超音波診断装置を選定
画像診断科では、あらゆる臓器・疾患の検査に対応するため、320列ADCTや3T MRIなどの高性能な画像診断装置をそろえている。また、IVRを24時間体制で積極的に実施していることも特徴であるが、以前はIVRにおいて2つの大きな課題を抱えていた。
1つ目は、画像診断科が主に使用する血管撮影装置が開院時の2007年に導入した1台体制という状況が2024年まで続き、地域医療の最後の砦としての役割を果たすのに十分とは言えなかったことである。中澤准教授は、Angio CTの重要性を訴え続け、旧装置の老朽化に伴う機器更新のタイミングで、念願のAngio CT導入に至った。
選定されたのは、320列ADCTのAquilion ONEと血管撮影装置Alphenix Sky+を融合したシステムである。その理由について、中澤准教授は、「最も大きかったのは、Aquilion ONEのVolume Scanです。1回転で16cmという圧倒的なボリュームを0.35秒スキャンという高い時間分解能で撮影し、撮影範囲の断面画像を一度に取得できることは、とても大きな利点です。特に、当科では、心臓血管外科との併診により大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR)の症例数が多いので、Volume Scanを複数回撮影して取得する4D-CTが有用であると考えました」と述べている。
次に、2つ目の課題として宇佐見准教授は、血管造影室専用の超音波診断装置がなかったことを挙げている。当時は手技のたびに、機器の保守点検や管理を行うME室から装置を借り出していたが、PC型の簡易的な装置であったため機能的に十分とは言えなかった。そこで、Angio CTの導入と併せて専用の超音波診断装置の導入が検討された。最終的にハイエンドなAplio i800を選定した理由について、宇佐見准教授は、「穿刺手技において有用なFusionが可能なことや、将来的には造影超音波下のラジオ波焼灼療法(RFA)の実施も視野に入れていました。また、当院はエンドリークの症例が多いため、低流速血流イメージングのiSMI(Superb Micro-vascular Imaging)を生かした新しい使い方ができるのではと考え、より高性能な装置がよいと判断しました」と話す。以前に使用経験のある「Aplio 500」において、BモードやSMIの画質を高く評価していたことも、Aplio i800選定の決め手となった。
各モダリティの強みが安全かつ確実な手技に貢献
Angio CTとAplio i800は2025年7月に稼働を開始し、1年以上が経過した。血管系IVRでは、頭頸部がんに対する動注化学療法や、EVAR後のエンドリークに対する追加治療、コイル塞栓術などの動脈瘤関連の手技、緊急止血術などが多く、非血管系ではリンパ管造影および塞栓術が多く行われている。
非血管系の生検手技においては、リアルタイム性の高い超音波が安全で確実な穿刺に貢献している。BモードやiSMIなどの画質も良好で、宇佐見准教授は、「穿刺部出血やエンドリークなどの微小な出血部位を、iSMIのみがピンポイントで描出できた例も経験しています」と話す。
また、血管撮影装置について、中澤准教授は、「画像処理によって、金属製デバイスと軟部影がそれぞれエッジを立てた見やすい画像になるよう調整されており、コイル内の塞栓時にガイドワイヤが動いている様子なども明瞭に視認できます」と評価している。
一方、撮影の観点から見たAngio CTの有用性について、鈴木技師は、「Aquilion ONEの16cmのカバレッジと、0.35秒回転による高速撮影は、かなり大きな強みです。頭頸部がんのRADPLAT(超選択的動注化学療法併用放射線治療)では、腫瘍を栄養するfeederの正確な把握にFusion画像が有用ですが、Angio CTの広いカバレッジと高速撮影により、体動の影響を抑えた高精度な画像を作成できます。呼吸停止や静止ができない患者さんの出血部位の確認などにも、広いカバレッジと0.35秒のscan timeが威力を発揮しています」と述べている。
同院では、以前から稼働するCTのうち5台がキヤノン製であり、鈴木氏は、同じインターフェイスで操作できる利点も実感している。
Angio CTとAplio i800を用いたIVRの症例提示
同院では、Angio CTとAplio i800を活用して順調に症例を積み重ねている。中澤准教授は、Angio CTが特に有用だった症例として、右上顎洞がんとエンドリークの症例を挙げた。
右上顎洞がんの症例(症例1)は、右上顎洞から鼻腔内に進展する腫瘍を認め、一部は右篩骨に浸潤しており、RADPLATの方針となった。眼動脈への薬剤流入に伴う視覚障害のリスクを回避するため、右篩骨洞の腫瘍浸潤部における血流支配を正確に評価する必要があったが、通常CTA(図1 a、b)では困難であった。中澤准教授は、「このような症例でも、Dual Energyを用いた造影CTから作成したヨードマップ(図1c、d)では、造影剤分布を明瞭に把握できるので、非常に有用です。本症例では右顎動脈から浸潤部への十分な灌流が得られていると判断でき、眼動脈からの動注の回避につながりました」と説明している。
エンドリークの症例(症例2)は、造影CTを施行し瘤径の拡大とエンドリークを認めたが、正確なtype診断が難しく血管造影を実施。血管撮影のみで造影剤の漏出部分の同定は困難であったが(図2 a←)、大動脈造影下4D-CTではステントグラフト右脚のピンホール状の欠損部から瘤内への造影剤漏出が明瞭に描出され(b←)、typeⅢbエンドリークの診断となった。Aquilion ONEの16cmのカバレッジにより、1回の撮影でステントグラフト全体を描出可能であった。
また、宇佐見准教授は、Aplio i800が有用であった症例として、卵巣がんの腹膜播種の症例(症例3:図3)を挙げ、「CTでは腸管と見分けのつきにくい微小な病変も、超音波では明瞭に区別でき、安全かつ正確に生検を施行できました」と語る。宇佐見准教授はこのほか、「以前はCTの間欠透視で対応していた症例でも、最近では診療科から超音波ガイド下での手技を依頼されることが増えています」と述べており、Aplio i800が院内で徐々に存在感を増している様子がうかがえる。
■Angio CTおよびAplio i800の臨床画像
図1 症例1:RADPLATにおいてヨードマップ画像が有用であった症例
図2 症例2:4D-CTが診断と治療方針決定に有用であったtypeⅢbエンドリーク症例
図3 症例3:超音波ガイド下生検(卵巣がん:腹膜播種病変)
各モダリティの潜在能力が新たな可能性を切り開く
Aquilion ONEについて、鈴木技師は、「Aquilion ONEの高い性能をさらに生かすため、Dual Energyなどの新たな活用法についても検討していきたい」と話す。また、宇佐見准教授はAplio i800について、「今後、RFAの症例が増加すれば、超音波でなければ穿刺が難しい肝臓の結節なども出てくると思うので、造影やFusionなどの機能を積極的に活用していきたい」と語る。各モダリティの持つ潜在能力が、同院で新たな可能性を切り開いていく。
(2026年8月18日、28日取材)
*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。
一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion ONE TSX-305A
認証番号:227ADBZX00178000
製造販売元:キヤノン株式会社
一般的名称:据置型デジタル式循環器用X線透視診断装置
販売名:X線循環器診断システム Alphenix INFX-8000C
認証番号:218ACBZX00004000
製造販売元:キヤノン株式会社
一般的名称:汎用超音波画像診断装置
販売名:超音波診断装置 Aplio i800 TUS-AI800
認証番号:228ABBZX00021000
製造販売元:キヤノン株式会社
Alphenix Sky+
Aplio i800 / Prism Edition
