セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)

2022年7月号

第1回 CXDIオンラインユーザーセミナー

1Shot長尺撮影のバージョンアップ

木村 友昭(獨協医科大学病院 放射線部)

木村 友昭

獨協医科大学病院では,2016年に長尺撮影立位架台,2021年に立臥位兼用長尺撮影架台をそれぞれ導入した。本講演では,当院でのこれらの使用状況や,キヤノンメディカルシステムズが取り扱う「CXDI-410C Wireless」(以下,CXDI-410CW)を使いこなすための工夫について紹介する。

長尺撮影立位架台導入の背景

当院では一般撮影用DR撮影装置を5台保有し,うち2台は長尺撮影対応である。2020年のX線撮影(ポータブル撮影を含む)による検査人数は,年間約12万人であった。当院の整形外科には,特に脊柱変形疾患の患者が全国から多く集まり,手術を積極的に行っている。全脊椎撮影の月ごとの平均人数は,2011年度は244人,2015年度は289人,2018年度は315人と,年々増加している。
2016年の長尺撮影立位架台導入以前,当院ではコンピューテッドラジオグラフィ(CR)や長尺用イメージングプレート(IP)を使用していたが,CRは読み取り時間が長く,半切2連タイプでは1枚あたり約2分を要した。そのため画像確認までの時間が長く,撮影人数が多いことから,患者の待ち時間が長くなることに苦慮していた。また,脊椎側面像では,仙骨上縁から引いた水平線と第7頸椎から引いた垂線との距離であるsagittal vertical axis(SVA)を自然立位で計測する。SVAが50mmを超えるとQOLに影響するため,SVAは重要な計測点の一つである。しかし,後彎が強い患者はCR 1枚に収まらず,SVAが計測できないケースもある。そのような場合は自然立位で前後を含め2枚,体を伸展させて1枚の,計3回撮影するが,被ばく線量の増加や撮影時間の延長による患者負担の増加が課題であった。

長尺撮影におけるFPDのメリット

1.検査効率の向上
これらを改善するため,当院では長尺撮影立位架台「AS-S03」(オートシステム製)を導入した。AS-S03は,フルサイズ(17×17インチ)のフラットパネルディテクタ(FPD)であるCXDI-410CWを最大3枚収納可能である(図1)。FPDは着脱可能なためコスト効率が良く,故障しても他検査室のFPDと入れ替え可能でバックアップになるという利点がある。
また,CXDI-410CWの撮影横幅はCRよりも5.6cm大きいため,後彎が強くCRでは1枚に収まらない患者でも,CXDI-410CWでは1枚でSVAの計測が可能となり(図2),撮影回数が減少する。さらに,撮影後の画像合成に要する時間が,CRの約110秒に対して,CXDI-410CWでは自動合成により約20秒に短縮した。これらの結果,CXDI-410CWではCRの3回撮影と比較し,撮影から画像表示までの時間が約240秒短縮するため,検査効率が向上し,患者の負担が軽減した。

図1 長尺撮影立位架台「AS-S03」1)

図1 長尺撮影立位架台「AS-S03」1)

 

図2 CRとCXDI-410CWによるSVAの計測1)

図2 CRとCXDI-410CWによるSVAの計測1)

 

2.被ばく線量の低減
CXDIシリーズで使用可能な“アドバンスエッジ強調”は,ワンクリックで目的に応じた強調画像を作成する機能である。アドバンスエッジ強調を用いた全脊椎側面撮影では,従来画像処理の利用における撮影線量に対して,半分の撮影線量で臨床使用可能であることを示唆した報告もある2)。50%線量の全脊椎正面および側面の画像を示す(図3,4)。アドバンスエッジ強調を使用し,撮影条件の最適化を行ったところ,被ばく線量を50%低減でき,正面は0.23mGy,側面は0.66mGyで撮影可能であった。「日本の診断参考レベル(2020版)」(Japan DRLs 2020)のDRL値は,腰椎正面が3.5mGy,側面が9mGyであることからも,非常に低線量であると言える。

図3 50%線量の全脊椎正面像2)

図3 50%線量の全脊椎正面像2)

 

図4 50%線量の全脊椎側面像2)

図4 50%線量の全脊椎側面像2)

 

立臥位兼用長尺撮影架台の追加導入

1.追加導入の背景と有用性
AS-S03とCXDI-410CWの組み合わせにより,処理時間短縮による患者負担の軽減や被ばく線量低減などの効果が得られた。一方,AS-S03は,臥位撮影やストレス撮影には対応できないため,全脊椎臥位撮影のみを目的にCRを維持する必要があった。そこで当院では,2021年に立臥位兼用長尺撮影架台「AS-S05」(図5)および平面撮影台「AS-ML01」(共にオートシステム製)を同時に追加導入した。
AS-S05は,寝台を電動で立位から側臥位や臥位に変更できるため,臥位撮影やストレス撮影をFPDで行うことが可能となった。これにより,ストレス撮影時のCRカセッテの入れ替えが不要となったほか,患者移動の負担が軽減し,また,画像表示までの時間が短縮したことで検査効率が向上した。さらに,サポートが終了したCRを廃棄することができ,保守点検のコストが削減された。AS-S03と同様に,FPDの故障時には他検査室のFPDをバックアップとして使用できることも利点として挙げられる。

図5 立臥位兼用長尺撮影架台「AS-S05」

図5 立臥位兼用長尺撮影架台「AS-S05」

 

2.AS-S05の運用上の課題
AS-S05を実際に使用した診療放射線技師や整形外科医からは,以下のような課題が示された。
臥位撮影ポジション時は床から天板までの高さが15cmと低く,装置中央部の支柱が邪魔となり,患者がベッドで移動してきた際には移乗が難しい。また,ストレス撮影を行った整形外科医からは,(1) 側彎症患者のベンディング時に足元が狭い,(2) 寝台が低く腰に負担がかかる,(3) 患者の足が装置の支柱に当たることがあり,ストレスをかけにくいこともある,との指摘があった。

3.AS-ML01の有用性と課題
AS-ML01を実際に使用した診療放射線技師からは,取っ手があり移動可能なため複数の検査室で撮影でき,AS-S05故障時のバックアップとして使用できることが利点として挙げられた(図6)。一方,重量が10kgとやや重いことが課題として示された。また,別の診療放射線技師は,平面撮影台を寝台上に置くことでベッドと高さをそろえられ,ベッドから安全に患者を移乗できること,FPDの着脱が可能なためコスト効率が良いことなどが評価された。しかし,FPDが固定されておらず,フルクラム撮影ができないことが課題として挙げられた。

図6 平面撮影台「AS-ML01」の有用性

図6 平面撮影台「AS-ML01」の有用性

 

4.当院での工夫
上記の課題に対し,当院では運用上の工夫による解決を試みた。患者の寝台への移乗時やベンディング時の腰の負担については,平面撮影台を寝台に乗せて行うことで解決できた。しかし,フルクラム撮影時に立位でFPDを入れ替えてからクロステーブル撮影を行うまでに45秒を要し,整形外科医から効率が悪いとの指摘があった。そこで,ストレス撮影時は他検査室からFPDを移動して,各装置に2枚ずつ,合計4枚使用することを提案したところ,FPDの入れ替えが不要で連続撮影が可能となり,検査効率が大幅に向上したとの評価が得られた。

まとめ

立臥位兼用長尺撮影架台および平面撮影台とCXDI-410CWの組み合わせにより,検査効率の向上,被ばく線量の低減,保守点検コストの削減などが実現できた。今後もCXDI-410CWを使いこなすとともに,われわれの経験をメーカーにフィードバックすることで,新たな創造につながっていくことを期待したい。

〈謝辞〉
本講演に当たり,機会を与えていただいた獨協医科大学病院放射線部・楫 靖教授ならびに小黒 清技師長,ご協力いただいた放射線部の皆様,キヤノンメディカルシステムズ株式会社の皆様,そして,日頃より私を支えてくれる家族に感謝申し上げます。

* 記事内容はご経験や知見による,ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

●参考文献
1)山口真奈:後湾症患者に対するCXDIワンショット長尺を使用した全脊椎側面撮影の有用性.栃木県診療放射線技師会第12回学術研究発表会, 2017.
2)Sezaki, H., et al. : Utility of frequencyemphasized image in full spinal imaging with an aim to reduce exposure dose. The 52nd Annual Meeting of TWSRT and the International Conference of Medical Imaging, 2019.

一般的名称:X線平面検出器出力読取式デジタルラジオグラフ
販売名:デジタルラジオグラフィCXDI-410C Wireless 認証番号:229ABBZX00049000
製造販売元:キヤノン株式会社

一般的名称:汎用X線診断装置用電動式患者台
販売名:⾧尺撮影立位架台 AS-S03
届出番号:40B2X00006000093
製造販売元:株式会社オートシステム

一般的名称:汎用X線診断装置用電動式患者台 
販売名:臥位兼用長尺撮影立位架台 AS-S05
届出番号:40B2X00006000100
製造販売元:株式会社オートシステム

一般的名称:汎用X線診断装置用非電動式患者台
販売名:平面撮影台 AS-ML01
届出番号:40B2X00006000095
製造販売元:株式会社オートシステム

 

木村 友昭
Kimura Tomoaki
1998年 東北大学医療技術短期大学部卒業。同年 獨協医科大学病院放射線部入職。2020年 保健衛生学士取得。2021年 国際医療福祉大学大学院保健医療学専攻修士課程入学。医療画像情報精度管理士。

 

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