セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)
2025年11月号
第48回日本呼吸器内視鏡学会学術集会ランチョンセミナー11 気管支鏡医が求める内視鏡透視室
〈講演2〉気管支鏡検査の正確性向上のために透視装置ができること
姫路 大輔(宮崎県立宮崎病院 内科)
当院は、ガイドシース併用気管支内超音波断層法(EBUS-GS)や超音波気管支鏡下穿刺吸引生検法(EBUS-TBNA)、クライオバイオプシーなどの気管支鏡検査を年間約300例行っている。本講演では、肺がん診断における気管支鏡のエビデンスやX線透視の有用性について、自験例を交えて紹介する。
肺がん診断における気管支鏡のエビデンス
肺がんを疑う末梢病変の診断では、ラジアル型超音波気管支鏡(r-EBUS)やナビゲーションを併用した経気管支生検が推奨される1)。一方、X線透視は気胸発症率の低減や診断率に影響するエビデンスはなく(エビデンスレベル3)2)、間質性肺疾患(ILD)疑い患者へのクライオバイオプシーにおけるX線透視の使用は「推奨(グレードなし)」である3)。ただし、限局性肺病変では気胸を減少し(エビデンスレベル3)、診断率の改善に寄与する可能性があることから考慮すべきとされている(グレードD)2)。
気管支鏡検査の診断率向上のためのポイント
気管支鏡検査の診断率向上のためのポイントとして、(1)より末梢に挿入するため、細径や極細径のスコープを使用する、(2)病変への誘導にナビゲーション〔仮想気管支ナビゲーション(VBN)、電磁ナビゲーション(EMN)〕を用いる、(3)EBUSやX線透視などで標的を確認する、(4)信頼性の高い生検を行うためガイドシースを用いる、などが挙げられる。これらのうちX線透視は、被ばくを低減しつつ病変や胸膜とデバイスとの位置関係や、鉗子の開き具合を確認できることに意義がある。
当院の内視鏡センターでは、2室の検査室にキヤノンメディカルシステムズ社製のCアームX線TVシステム「Ultimax-i」を各1台設置している。検査室は消化器・呼吸器領域で共用しているが、モニタと内視鏡は天吊り式のため移動が容易で、効率的な運用が可能である(図1)。また、Ultimax-iはコンパクト設計のため複数人で手技が可能なワークスペースを確保でき、クリーンベンチや顕微鏡を配置した迅速細胞診(ROSE)用スペースや陰圧可能な前処置室も備えている(図2)。
Cアームは病変とデバイスの位置関係の確認に有用であり、正面視ではデバイスと病変または胸膜の距離を反映していないケースでも、CアームをLAO/RAOに回転し、X線とデバイスの進行方向を直交させることで正確に位置関係を把握できる。
また、当院では3D画像解析システムを用いて事前シミュレーションを行っている。CT画像からバーチャルフルオログラフィを作成してCアームを回転させた際の病変と胸膜の距離を把握し、術中は検査室内でバーチャルフルオログラフィを確認しながら、医師がCアームの操作を行い手技を進める(図3、4)。正面視ではデバイスが到達しているように見えてもRAO20°では到達していないことがわかるケースもあり、Cアームの角度付けは重要である(図5)。また、病変へのデバイス到達が難しいと考えられた背側の腫瘤陰影症例において、LAOの角度をつけて背側縦隔側への穿刺のシミュレーションを行い、バーチャルフルオログラフィどおりに縦郭側に穿刺を行ったところ、吸引生検と同時にEBUSを挿入できた。
図1 当院内視鏡センターの検査室
図2 検査室の隣に前処置・ROSE用の部屋を用意
図3 バーチャルフルオログラフィを作成しCアーム角度を確認
図4 バーチャルフルオログラフィで確認したCアーム角度まで回転
図5 Cアームの角度付けによる透視像の比較
Accent適用、スコープ:BF-P290、ガイドシース:SG-400C、EBUS:US-S20-20R(オリンパス社製)
被ばく線量を低減するUltimax-iの機能
Cアームの角度付けは鉗子の開き具合の確認などでも有用だが、時間をかけて丁寧に観察するほど被ばく線量の増加が問題になる。特に次世代シーケンサー(NGS)などを考慮し、多くの組織を採取する場合は透視時間が長くなるため、被ばく低減の取り組みが重要となる。
1.高画質・低線量検査コンセプト「octave SP」
Ultimax-iの高画質・低線量検査コンセプト「octave SP」は、独自のリアルタイム画像処理技術と低線量検査のための機能によって、従来より65%被ばくを低減する(従来の35%の線量)と同時に、ノイズ低減と低コントラスト改善による高画質を実現する。例えば、DCF(デジタル補償フィルタ)の適用により、肋骨のラインや腫瘤陰影の濃度、ガイドシースなどが明瞭に確認できる(図6)。
図6 DCF(デジタル補償フィルタ)適用例
肺野が白とびせず、病変・シースが見やすい。
Accent適用、スコープ:BF-P290、ガイドシース:SG-400C(オリンパス社製)
2.新画像処理条件「Accent」
内視鏡検査に用いるデバイスは通過性や柔軟性が優先され、透視下での視認性に課題がある製品もある。Ultimax-i の新画像処理条件「Accent」は、ガイドシースや生検針などのデバイスや関心領域を強調し、より手技がしやすい環境を提供する。実際の透視像(図7〜9)でも、Accent適用により腫瘤やEBUSプローブ、ガイドシース、ブラシなどのデバイスが明瞭に確認できる。
図7 AccentによるEBUSプローブや関心領域の強調
スコープ:BF-MP290、EBUS:UM-S20-17S(オリンパス社製)
図8 Accentによる鉗子や関心領域の強調
スコープ:BF-MP290、生検鉗子:FB-433D(オリンパス社製)
図9 Accentによるブラシや関心領域の強調
スコープ:BF-MP290、細胞診ブラシ:BC-205D-2010(オリンパス社製)
3.透視パルスレートと透視線量モード
Ultimax-iは、ダイヤルを回すだけで透視パルスレートを1.0~15fpsまで調整可能で、例えばoctave SPに加え透視パルスレートを7.5fpsに設定することで、従来よりも約82.5%の被ばく低減(従来の17.5%の線量)が実現する。さらに、透視線量モードをNormalモード(標準の線量)、Midモード(標準の50%の線量)、Lowモード(標準の35%の線量)の3段階から透視を切らずにワンタッチで選択できる(図10)。画質は大きく変わらないため、ルート確認後はNormalモードからMidモードにするなど、透視パルスレートと同様に細やかな使い分けが可能である(図11)。
なお、被ばく低減には防護衣やネックガード、防護用メガネなどの使用も重要である。
図10 検査に応じた透視線量モードの切替はワンタッチ
図11 透視線量モードによる画質の比較
Accent適用、スコープ:BF-P290、ガイドシース:SG-400C(オリンパス社製)
まとめ
病変や胸膜、デバイスの位置関係の確認に、事前シミュレーションによるナビゲーションやCアームを用いることは有用である。また、気管支鏡検査におけるX線透視の画質は非常に重要だが、被ばく線量と画質はトレードオフの関係にある。適切な透視線量モードやパルス透視を活用することにより、画質を維持しつつ被ばく線量を低減する努力が今後、よりいっそう重要になる。
*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。
*病変・疾病の記載は、医師による診断結果に基づきます。装置やソフトウェアが判断するものではありません。
●参考文献
1)日本肺癌学会 編:肺癌診療ガイドライン-悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む-2024年版 第8版.金原出版,東京,2024.
2)Du Rand, I.A., Blaikley, J., Booton, R., et al.: Thorax, 68(8)(Suppl.1): i1-i44, 2013.
3)Maldonado, F., Dano, S.K., Wells, A.U., et al.: Chest, 157(4): 1030-1042, 2020.
一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名:多目的デジタルX線TVシステム Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000
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