セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)
2026年10月号
第111回日本消化器内視鏡学会総会 ランチョンセミナー18 胆膵内視鏡診断・治療を究める─Ultimax-iをどう上手に使いこなすか Part2─
〈講演1〉放射線照射はどこまで減らせるか 胆膵内視鏡における透視の最適化
菅野 良秀(仙台市医療センター・仙台オープン病院 消化管・肝胆膵内科)
胆膵内視鏡診断・治療においては、診断・治療に求められる高画質と同時に放射線被ばくの低減が重要な課題である。医療放射線被ばくの低減は、適切な適用管理や発生線量の抑制、低線量化を実現しやすい装置を選択することが効果的と考える。本講演では、効果的な発生線量の抑制について、自施設の経験なども踏まえて報告する。
放射線被ばく低減の考え方
仙台市医療センター・仙台オープン病院(330床)の消化管・肝胆膵内科には現在22名が所属し、そのうち肝胆膵グループは14名が3チーム編成で診療に当たっている。近年の年間の内視鏡件数は上部消化管が約1万1000件台、下部消化管が約7000件台で推移しており、そのうち超音波内視鏡(EUS)が2000件台、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)が800件台で緩やかな増加傾向にあるため、被ばく低減に配慮する必要がある状況となっている。
米国疾病管理予防センター(CDC)は、医療を含む放射線被ばく低減対策について、物理的除去(Elimination)、置換(Substitution)、隔離(Engineering Controls)、働き方の変更(Administrative Controls)、個人防護(PPE)の5つのヒエラルキー構成でとらえている。しかし、医療現場では必要性に基づいて放射線を使用しているため、物理的な線源除去は不可能である。
そこで最も重要となるのは、X線防護以前に、不要な検査・治療の回避、検査室に入室するスタッフ数の限定などの適用管理による発生線量の抑制である。そして次の段階として、低線量を実現できる装置、透視時間の短縮、手技の効率化などの運用が有用と考える。
なお、国際放射線防護委員会(ICRP)が2007年勧告で提示している「放射線防護の三原則」と比較すると、適用管理が「正当化」、それ以外は「最適化」に該当する(図1)。
図1 医療放射線被ばく低減の考え方
運用の最適化による被ばく低減例
運用の最適化について、当院を含めた報告事例をいくつか紹介したい。
●経鼻内視鏡補助下でのイレウス管挿入
従来、癒着性イレウス症例に対してはイレウス管挿入を行っていたが、無麻酔下で長時間かかるケースもあり、患者の負担が大きいことが指摘されていた。近年、経鼻内視鏡下に留置したガイドワイヤを用いてイレウス管を挿入する手法が登場したことから、従来法(透視下)と経鼻内視鏡補助下で手技成功率や手技時間などを比較するランダム化比較試験(RCT)を行った。その結果、経鼻内視鏡補助下での手技成功率は高く、従来法と比較して手技時間が12分短縮し、それに伴い透視時間も有意に低減した1)。事前準備を確実に行うことで、経鼻内視鏡補助下での手法は手技時間の短縮や被ばく線量、患者不快度の低減に貢献することが示された。
●胆管結石除去法の選択(バルーン vs. バスケット)
小型結石(10〜11mm)を対象とした胆膵内視鏡下での胆管結石除去におけるバスケットとバルーンを比較したRCTでは、結石除去率はバルーンで良好であった。また、メタ解析では手技時間、放射線発生量のいずれもバルーンの方が良好であり2)、バスケットとバルーンのいずれも適用可能な場合は、この結果を参考に検討することも有用である。
●EUSガイド下ドレナージにおけるルート拡張
EUSガイド下ドレナージにおけるルート拡張では、ニードル(19G)と細径デリバリーシステムを用いた場合はダイレーションなしで手技成功率は96%、手技時間も短縮し、放射線発生量低減にもつながることが示されている3)。
これらの例が示すように、透視下内視鏡における運用の最適化には多くの対応が考えられるが、特に熟練者による施行での手技時間の短縮化や検査・治療成績が良い手法の選択による回数の低減などを重視することで、発生線量の低減に取り組むことが重要である。
最新機種「Ultimax-i / Unity Edition」による被ばく線量低減
当院では、透視装置としてキヤノンのCアームX線TVシステム「Ultimax-i」を約10年間使用していたが、2026年1月に最新機種である「Ultimax-i / Unity Edition」に更新した。最新機種では、従来製品の高画質・低線量検査コンセプト「octave」が進化した「octave i」が適用されている。octave iは、周波数帯域別にノイズを除去する多重解像度SNRFほか、独自のリアルタイム画像処理を含めた計8つの要素技術からなり、従来と比較して照射線量を約65%も低減する。
そこで、octave iの効果を確認するため、装置更新前後の各3か月間の胆膵内視鏡の線量比較を試みた。その結果、透視時間に大きな変化はなかったものの、線量率は4.0mGy/minから0.4mGy/min、総線量は28.5mGyから3.9mGyと大幅に低減した(図2、いずれも中央値)。医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)の「日本の診断参考レベル(2025年版)」(Japan DRLs 2025)では、ERCP関連処置のDRL値は107.8mGyとされており、当院では、octave iへの更新後の総線量は3.9mGyで、DRLsを大きく下回っている(図3)。
また、Ultimax-i / Unity Editionは透視線量を透視中にワンタッチで設定可能な透視線量モードも搭載されている。タッチパネルでNormalモード、Midモード(Normalモードの50%)、Lowモード(同35%)に設定可能で、MidモードやLowモードでも診断に十分耐えうる画質が得られている(図4)。
図2 装置更新前後の当院の胆膵内視鏡の線量比較
図3 装置更新前後の当院の胆膵内視鏡の総入射線量比較
図4 Ultimax-i / Unity Editionの透視線量モードの比較
新画像処理条件「Accent」と透視パルスレート管理
低線量では時として、患者の体厚によりデバイスなどが見えにくくなってしまうことがある。しかしながらUltimax-i / Unity Editionではoctave iに加え、新画像処理条件「Accent」が搭載されている。Accentは、octave iの見やすい画質はそのままに、ガイドワイヤなどの見にくい部分を強調する画像処理条件である。Accentは、透視を切ることなく簡単に5段階の切り替えが可能なため、場面に応じて切り替えることで手技の効率を向上させ、安全に手技を実施することができる(図5)。
また、Ultimax-i / Unity Editionはフレームレート1.0〜30fpsの範囲で9段階でパルスレートを選択できる(図6)。ステント抜去時や管腔内超音波(IDUS)、内視鏡的乳頭切開術(EST)などの処置時は、状況に応じて適宜パルスレートを低減することで適切な線量調整につながる。当院では2、3fpsの透視レートを使用しているが、特に問題なく低線量で検査を実施できている。
以上の機能をまとめると、理論上はoctave iを使用して(×0.35)、透視線量モードをLowモードに設定し(×0.35)、さらに透視パルスレートを15fpsから1fpsに下げる(×0.067)ことで、放射線の発生線量を合計で99.2%低減(×0.008)することが可能である。
図5 新画像処理条件Accentによる視認性の向上
図6 検査に応じた透視パルスレートの切り替えが可能
まとめ
医療放射線被ばくの低減については、各対策を層別的に理解し、より上流での対策にも取り組むことが効果的である。特にパルスレートの積極的な管理は即効性が高く、さらに十分な準備や適切な処置部の選択、効率的な処理などが放射線の発生量自体の低減に有用である。
●参考文献
1)Kanno, Y., et al. : Gastrointest. Endosc., 69 : 1363-1368, 2009.
2)Ekmektzoglou, K., et al. : Acta Gastroenterol. Belg., 83 : 577-584, 2020.
3)Koga, T., et al. : Endoscopic Ultrasound, 12(5) : 409-416, 2023.
* 記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。
一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名:多目的デジタルX線TVシステム Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000
製造販売元:キヤノン株式会社
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