Deep Learning技術(AiCE)を搭載した最新型Aquilion ONE/ GENESIS Editionの臨床評価 
三村 尚輝(福山市民病院医療技術部放射線科)
Session 1

2019-11-25


三村 尚輝(福山市民病院医療技術部放射線科)

キヤノンメディカルシステムズの“AiCE(Advanced intelligent Clear-IQ Engine)”は,人工知能(AI)技術の一つであるディープラーニングを応用した画像再構成技術(Deep Learning Reconstruction:DLR)である。本講演では,AiCEの性能について,物理特性と臨床画像におけるFBP,Hybrid IR(AIDR),MBIR(FIRST)との比較を中心に報告する。

■AiCEの物理特性評価

AiCEは,ディープラーニング技術であるDeep Convolutional Neural Network(DCNN)を用いた画像再構成法である。2018年4月,Aquilion Precisionに先行して搭載され,現在はAquilion ONE/GENESIS Editionにも搭載されている。
当院ではAiCEの物理特性について,Catphan CTファントムを用いて画像SD(standard deviation),MTF(modulation transfer function),NPS(noise power spectrum),CNR(contrast-to-noise ratio)の評価を行った。

1.画像SD
Catphanの均一モジュール(CTP712)を10〜600mAで撮影し,FBP,AIDR,FIRSTとAiCEの画像SDを比較した。100mA以下の低線量域ではAiCEが最も低く,FIRSTを超えるノイズ低減効果が得られた。SD10の5mm厚のデータを再構成すると,AIDR(40mA),FIRST(50mA)に比べてAiCE(30mA)ではノイズの少ないきれいな画像が得られ,FIRSTを超えるノイズ低減効果があることがわかった。

2.MTF
MTF特性について,高線量域(150mA)では,FIRST,AiCE,FBP,AIDRの順で,FIRSTが最も分解能が高かった。一方,低線量域(40mA)では,AiCEがFIRSTよりも空間分解能は低いものの,FIRSTを教師画像としているため,空間分解能を維持したままノイズが低減されていた。次に,FIRSTとAiCEのMTFについて,コントラストの異なる4つのモジュール(120,230,350,900HU)を撮影し比較した(図1)。FIRSTではCT値が高いほどMTFが高くなるが,AiCEではCT値ごとのMTFの変化は小さく,コントラストによらず安定したMTF特性を有していることがわかる。

図1 MTF比較 (撮影条件:80Helical scan,0.5s/rot,HP65,120kVp,150mA,5mm,CTP682,各コントラストモジュール)

図1 MTF比較
(撮影条件:80Helical scan,0.5s/rot,HP65,120kVp,150mA,5mm,CTP682,各コントラストモジュール)

 

3.NPS
水ファントム(40cm径)を用いて10,20,30,40,50,80,100,150,200,250mAと線量を変えて撮影し,FBP,AIDR(共にFC13),FIRST,AiCEでNPSを比較した。低線量域において,FBPとAIDRでは画質低下が見られるが,FIRST,AiCEでは画質低下はなく,均一な画像が得られた。次に,120kVp,250mAで撮影したデータのNPSを比較した(図2)。5mm厚再構成では,低周波域のノイズはAIDR,FIRST,AiCEで差は見られないが,1mm厚のthin sliceでは,AiCEは高周波だけでなく低周波のノイズも効果的に低減されていた。

図2 NPS比較(40cmφ),水ファントム (撮影条件:80Helical scan,0.5s/rot,HP65,120kVp,250mA)

図2 NPS比較(40cmφ),水ファントム
(撮影条件:80Helical scan,0.5s/rot,HP65,120kVp,250mA)

 

4.CNR
低コントラスト検出能を評価するCNRについて,Catphanの低コントラストモジュール(CTP515)を10〜250mAで線量を変えて撮影し,FBP,AIDR(共にFC13),FIRST,AiCEを比較した。低線量域では,AIDR,FIRSTではノイズは低減されるものの,粒状性が劣化している。一方AiCEでは,粒状性を維持したままノイズが低減されている。さらに,150mA(120kVp,5mm厚再構成)で低コントラストモジュールを撮影し,4つの再構成法で比較した。ファントム画像の視覚評価は,AIDRとFIRSTでは粒状性が粗く見えるが,CNRではFIRSTとAiCEが同程度の高い結果を示しており,視覚評価と物理評価が一致しないと言える。従来のCNRは,計算の際に画像の周波数成分が考慮されていないため,逐次近似再構成(IR)アルゴリズムの評価には不十分だと考えられる。そこで,瓜倉らが提唱している,周波数特性と病変サイズに対応する周波数成分の両方を反映するCNRLO(low-contrast object specific CNR)1)を用いて評価し直した。CNRLOでは,視覚的な評価と同様に,AiCEの低コントラスト分解能が高いことが確認できた(図3)。

図3 CNRとCNRLO比較

図3 CNRとCNRLO比較

 

■AiCEの臨床画像

ファントム実験を基に臨床画像による評価を行った。

1.腹部画像(通常線量/低線量)
図4は,通常線量(CTDIvol:8.0mGy,DLP:445.3mGy・cm)で撮影した腹部のコロナル画像だが,FIRSTではSDは向上するものの,再構成時間が7分34秒かかる。AiCEでは,FIRSTとほぼ同じSDが44秒で表示され,約10倍の再構成速度があることがわかる。図5は,低線量(CTDIvol:2.9mGy,DLP:86.8mGy・cm)で撮影したリピオドールCTの画像である。FIRSTでは胆嚢の低コントラスト領域に粒状性の粗い部分があるが,AiCEでは粒状性の細かいきれいな画像になっている。AiCEでは,MBIRの課題であった低線量域における粒状性の改善が認められる。

図4 腹部画像(通常線量) (撮影条件:80Helical scan,0.5s/rot,100kVp,CTDIvol 8.0mGy,DLP 445.3mGy・cm)

図4 腹部画像(通常線量)
(撮影条件:80Helical scan,0.5s/rot,100kVp,CTDIvol 8.0mGy,DLP 445.3mGy・cm)

 

図5 腹部画像(低線量域) (撮影条件:80Helical scan,0.5s/rot,120kVp,CTDIvol 2.9mGy,DLP 86.8mGy・cm)

図5 腹部画像(低線量域)
(撮影条件:80Helical scan,0.5s/rot,120kVp,CTDIvol 2.9mGy,DLP 86.8mGy・cm)

 

2.冠動脈CT
高コントラスト領域の冠動脈CTについて,FBP,FIRST Cardiac,AiCE Cardiac,FIRST Cardiac Sharpの画像を高分解能モジュール(CTP714)と併せて提示する(図6)。AiCE CardiacはFIRST Cardiac Sharpに比べて分解能が若干落ちており,高コントラスト領域ではFIRSTの空間分解能が高いことがわかる。一方,実際の冠動脈画像では,AiCE Cardiacが粒状性を維持しつつ,最もノイズが低減されていることが確認できる。高コントラスト領域のFIRSTとAiCEについては,高石灰化,ステント留置など,症例によって選択して使用することが重要と考えられる。

図6 冠動脈CT(高コントラスト領域) (撮影条件:Volume scan,0.275s/rot,100kVp,CTDIvol 8.2mGy,DLP 131.6mGy・cm)

図6 冠動脈CT(高コントラスト領域)
(撮影条件:Volume scan,0.275s/rot,100kVp,CTDIvol 8.2mGy,DLP 131.6mGy・cm)

 

3.肺がん
肺がんのGGO(すりガラス状陰影)の症例であるが,当院では通常,AIDRのFC52とFC81の関数を使い分けて再構成している。AiCEのLungパラメータで再構成した画像と比較すると,AiCEではドット抜けのようなノイズが低減され,クリアになっていることがわかる(図7)。

図7 肺がん(GGO) (撮影条件:80Helical scan,0.35s/rot,120kVp,CTDIvol 5.3mGy,DLP 188.7mGy・cm)

図7 肺がん(GGO)
(撮影条件:80Helical scan,0.35s/rot,120kVp,CTDIvol 5.3mGy,DLP 188.7mGy・cm)

 

■AiCE Body Sharp(W.I.P.)

AiCEは,低線量域や低コントラスト領域での画質改善が期待できる一方で,高コントラスト領域の空間分解能の向上に課題がある。キヤノンメディカルシステムズでは,これに対応するべく新たにAiCE Body Sharp(W.I.P.)を開発中である。AiCE Body Sharpは,MTFの評価では分解能が向上しており(図8 a),臨床画像(膵臓がん)においてもAiCE Body SharpはAiCE Bodyと比較して,細かい粒状性を維持したままノイズが低減され,微小な構造物まで確認できる(図8 c)。

図8 AiCE Body Sharp(W.I.P.) a:MTF b:AiCE Body c:AiCE Body Sharp

図8 AiCE Body Sharp(W.I.P.)
a:MTF b:AiCE Body c:AiCE Body Sharp

 

■まとめ

DLRによるAiCEの登場で,FIRSTに近い画像を短時間で処理でき,特に低線量域でより安定した画像の提供が可能になった。また,MBIRの全般的な課題であった低コントラスト領域が改善されており,高い性能を持った再構成ツールであると考えられる。

●参考文献
1)Urikura, A., et al. : Objective assessment of low-contrast computed tomography images with iterative reconstruction. Physica Medica, 32・8, 992~998, 2016.

 

 

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