GE Healthcare Japan Edison Seminar 2020

2020年12月号

GE Healthcare Japan Edison Seminar 2020

【基調講演 AI 3】AIプラットフォームへの期待

橋本 正弘(慶應義塾大学医学部 放射線科学教室 特任助教)

橋本 正弘(慶應義塾大学医学部 放射線科学教室 特任助教)

本講演では,「AIプラットフォームへの期待」をテーマに,GEの人工知能(AI)開発環境である「Edison Platform」について,使用経験を交えて述べる。

エジソンが偉大な理由

GEの創業者であるエジソンは,1879年に白熱電球の寿命を600時間以上に保つことに成功した。その後ニューヨークに発電所を開設して,送電線を整備したほか,分電盤や積算電力計ヒューズ,スイッチ,ソケットも開発した。エジソンが偉大なのは,このように発電・送電施設や分電,電力計といったプラットフォームを構築して,さらに白熱電球の長寿命化やヒューズの開発により,実用的な製品として完成させ,利用者の体験価値を向上させたからである。
白熱電球の話をAIに置き換えた場合,プラットフォームとなるのは,AIのソフトウエアを開発者から利用者への橋渡しをするための仕組みであり,Edison Platformがそれに当たる(図1)。また,利用者の体験価値を向上させるのは,GEの「AI Orchestrator」のようなサービスだと言える。AI Orchestratorはプログラミングの知識が不要で,PACSで受信した検査データに基づき,自動的に推論させるAIとの最適な組み合わせを選択し,AIの処理を管理するシステムである(図2)。

図1 開発者から利用者への橋渡しの役目を果たすEdison Platform

図1 開発者から利用者への橋渡しの役目を果たすEdison Platform

 

図2 利用者の体験価値を向上させるAI Orchestrator

図2 利用者の体験価値を向上させるAI Orchestrator

 

AIソフトウエアの橋渡し役Edison Platform

AIの開発および利用のためには,学習・検証・利用のためのデータが必要となる。また,プログラムも重要である。さらに,AIのトレーニングには計算資源も欠かせない。そして,これらを適切に結びつけて運用することが大切である。
計算資源は,仮想化技術により,GPUなどのハードウエア技術をソフトウエアで一括管理することが可能となる。さらに,それを大規模にしたのがクラウドであり,Edison Platformは,アマゾン ウェブ サービス社のクラウドコンピューティングサービス「Amazon Web Services(AWS)」上に構築されている。クラウドのメリットとしては,従量制などの課金の仕組み,容易な操作でサーバを利用できる使いやすいインターフェイス,仮想ネットワークなどが挙げられる。クラウドによって,利用者のニーズに応じて,最適なサーバを短期間で使用できるようになる。さらに,Edison Platformでは,ハードウエアだけでなくソフトウエアも利用することが可能である。クラウドの出現によって,必要なハードウエア・ソフトウエアを購入する従来の形態から,必要なサービスを購入するという変化が起き,AIの開発環境を短期間で柔軟に構築・運用できるようになった。
Edison Platformでは,利用者がGEと共同研究・共同開発を行う場合,AIを開発するための「Edison AI Workbench」にログイン後,契約書類をアップロードする。その上で,教師・検証データを契約に紐づけてアップロードすると,ラベルづけやセグメンテーションなどの処理を行える。さらに,Edison Platformでは,プログラミングを行うための開発環境「Jupyter Notebook」が用意されており,アップロードした画像を用いて開発できる。また,学習にはプログラミング不要で既存モデルをベースに開発を行える「Express」と,プログラミングして開発できる「Amazon SageMaker Studio」が利用可能である。
一方,Edison Platformは,他ベンダーのAI開発を支援する「Edison Developer Program」も提供している。これは,他ベンダーがEdison Platform上の画像データを利用し,Edison Platform上でAIを開発して,利用者がそのAIを使用できるようにするものである。このようにして開発されたAIが,あらゆる施設でそのまま使用でき,また,どのプラットフォームでも大きな改修なくサービスを提供するようにすべきであると考えている。

利用者の体験価値を向上させるAI Orchestrator

AI Orchestratorは,臨床現場でのAIの適用を自動化するサービスである。残念ながら,今回は使用することができなかったが,プログラミングを必要とせず,ワークフローに応じて最適なアプリケーションの適用が可能となるらしい。IHEが進めているAIを用いた検査・画像診断のワークフローのプロファイル「AIW-I」におけるタスクマネージャーの機能を担う。

まとめ

Edison PlatformをはじめとしたAIプラットフォームに期待することは,多様性があり,分断のない世界の実現である。

 

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