GE Healthcare Japan Edison Seminar 2020

2020年12月号

GE Healthcare Japan Edison Seminar 2020

【特別シンポジウム セッション1】医師の働き方における多様性

隈丸加奈子[順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 非常勤講師(元・准教授)]

隈丸加奈子[順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 非常勤講師(元・准教授)]

医師には,病院勤務医,開業医,研究者など多様な働き方がある。本講演では,医師の働き方の多様性について,自身の経験を踏まえて述べる。

診療での働き方の多様性

私の場合,出産前後で働き方が一変した。出産前は,仕事中心の生活で,自分の能力や知識が向上していくことに喜びを感じ,夜も週末も仕事をする日々を送っていた。しかし,出産後は,仕事以外にやらなければならないこと,やりたいことが増え,「平日の就業時間に仕事をして,それ以外の時間はそれ以外のことに充てる」働き方に変化した。この働き方に後悔はないものの,医師としての能力の維持・向上や,周囲とのバランスが課題となった。
このことは,現在進められている医師の働き方改革の論点にも通じる。医師の働き方改革では,長時間・時間外勤務を抑制しつつ,医療の質を保つための議論がなされており,意識改革・啓発や,タスクシフティング,勤務時間・環境の多様化,教育・修練技術とカリキュラムの改善のための方策が検討されている。
一方,放射線科領域では,2018年度の診療報酬改定において,画像診断管理加算が見直され,一定の条件を満たせば常勤医が院外で読影しても算定できるようになった。これにより,育児のため平日15時までしか勤務できないような場合でも,常勤医として在宅で業務を行えるようになった(図1)。
しかし,日本医学放射線学会(JRS)と日本放射線科専門医会・医会(JCR)が2018年6月に行ったアンケートでは,院外で読影可能なシステムを導入している施設は16.7%であった。また,2020年6月にJCRが行ったCOVID-19に関するアンケートでは,遠隔読影・治療計画が可能と回答したのは17.5%にとどまっており,大きな変化は見られなかった。今後,インフラなど読影環境が整備され,多様な勤務形態が実現することが期待される。

図1 テレワークを利用した働き方

図1 テレワークを利用した働き方

 

診療以外の働き方の多様性

1.海外での研究者としての働き方
私自身の海外での研究者の経験を基に,勤務先の探し方,職務内容,現地での生活について述べる。勤務先の探し方としては,通常,医局の紹介などが多いと思われるが,私は勤務可能な地域が限られていたため,Webサイトなどで求人を探した。職務内容は,研究や学会発表,論文執筆のほか,在職期間の後半には若手研究者の指導も行った。また,日本の研究機関に積極的に連絡をとって連携を図った。現地での生活について,経済面では当初research fellowだけの収入で厳しかったものの,その後,日本学術振興会の海外特別研究員,さらにassistant professorとなり収入は増えた。ただし,保育園の費用が高額なため,生活は決して楽ではなかった。同様に,語学面においても,最初は苦労が多かったが,「伝えたいことを伝える」という強い意志があれば乗り切れる。語学が不得手でも海外に行くのを諦める必要はないと強調したい。
このような苦労はあっても,海外で研究生活を送ったことには満足している。研究に専念し業績にも貢献でき,そして何よりも“外国人”として生活して多様な視点を身につけることができた。ぜひ多くの方に海外で働くという貴重な経験をしてほしいと考える。

2.医系技官としての働き方
私は現在,厚生労働省医政局で医系技官として勤務している。医系技官は,部署にもよるが,許可があれば勤務時間外に診療業務を行うことが認められており,許可があれば土曜日に読影業務を行うことも可能である。また,育児をはじめワークライフバランスのための制度も充実している。
例として私自身のある1週間の勤務内容を紹介する(図2)。医系技官になったことで,放射線科医では得られなかった多くのことを学んでいる。

図2 医系技官としての1週間の勤務例

図2 医系技官としての1週間の勤務例

 

多様性の受容と推進

多様性とは,多様な価値観によるグラデーションである。働く人それぞれが仕事に対して異なる価値観を持っている。多様性を受容するというのは,「あなたと私は違う」ことを認めた上で,異なる考えを自分の考えと同じように尊重することである。そして,そのような状態の達成をめざすことが,多様性の推進である。

まとめ

医師の働き方には多くの選択肢がある。そして,多様な働き方をしている人がいることは,その集団の強みにもなる。今後さらに,多様な価値観と働き方を尊重し合える環境整備が進むことが望まれる。

 

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