GE Healthcare Japan Edison Seminar 2020

2021年1月号

GE Healthcare Japan Edison Seminar 2020

【MR関連セッション】定量的マルチパラメトリックMRIがもたらすData-driven画像診断の将来

藤田 翔平(順天堂大学医学部附属 順天堂医院 放射線科 助手)

藤田 翔平(順天堂大学医学部附属 順天堂医院 放射線科 助手)

本講演では,定量的パラメトリックMRIの概要と,臨床現場にもたらすインパクトを中心に報告する。

定量的パラメトリックMRIの概要

data-driven画像診断とは,データを用いた画像診断であり,従来の視覚的評価を主体とした(visually-driven)画像診断に対して客観性を補完することが可能となる。そして,これを実現するためには,定量的であること,標準化されていること,高速であることが求められる。これらを満たす技術が,定量的マルチパラメトリックMRIである。
1回の撮像で複数の定量マップを同時に取得可能で,コントラスト強調画像も自由に作成することができる。これにより,定量的評価が可能となり,異なる時期や患者,施設でのデータを統合して解析できるため,臨床研究や治験,人工知能(AI)パイプライン用のデータとしての活用も期待できる。

定量的パラメトリックMRIの代表的技術

1.MR fingerprinting
MR fingerprintingは,従来行っていた緩和曲線推定を行わず,観測された信号変化を,あらかじめシミュレーションした信号変化と照合することで,1回の撮像でT1やT2を含む複数の内的パラメータを同時に取得する技術である1)図1に,3D MR fingerprintingの実際の画像を示す。われわれは,3D MR fingerprintingにて取得されるT1値,T2値および形態情報について検討した結果,非常に高い再現性が得られた2)

図1 3D MR fingerprinting

図1 3D MR fingerprinting

 

2.Synthetic MRI
Synthetic MRI(GEでは“MAGiC”)は,複数のTIとTEで緩和を実測して,指数関数フィッティングによりT1値やT2値を取得し,これらの定量値に基づいて任意のコントラスト強調画像や組織分画マップを取得する技術である。頭部をはじめ,最近では整形領域での報告も散見される。

Visually-drivenとdata-drivenの融合に向けて

1.定量マップの取得におけるトピック
われわれは,GEとの共同研究により3D MAGiCの開発を行った。スライス方向にも高分解能が得られるため,脳形態情報のより正確な値が算出可能となる3),4)。また,3D MAGiCにパラレルイメージングと圧縮センシングを併用して撮像の高速化にも取り組んでいる5)。さらに,3D MAGiCでは,多彩なコントラスト強調画像のすべての断面を一度に取得可能となった(図2)。
このほか,われわれは独自に,深層学習を用いてSynthetic MRIやMR fingerprintingで取得される定量マップからMRA画像を生成する方法を考案し,通常のMRAに近い画質の画像を得ることに成功した6)

図2 3D MAGiC

図2 3D MAGiC

 

2.定量的指標の取得におけるトピック
Synthetic MRIでは定量マップ間に位置ズレが生じないため,既存のアルゴリズムで用いられる3D T1強調画像のセグメンテーションをすべての定量マップに適用し,脳領域ごとの定量値を得ることができる。病変の数・量・性状を定量的指標として取得可能となるほか,過去の検査をデータベースとして蓄積でき,評価者間,評価者内の一致率の向上も期待できる。

3.今後の技術展開
MR fingerprintingやSynthetic MRIに共通の課題として,合成FLAIRの画質改善が挙げられる。解決策の1つが,深層学習を用いた再構成法であり,粒状性の改善が期待できる。2つ目は,体動補正技術である。定量的マルチパラメトリックMRIでは,スキャン途中の体動によりすべての画像が劣化するが,体動にリアルタイムに対応する3D prospective motion correctionを用いることで,静止画に近い良好な画像が取得でき,安定した定量マップが得られる。

まとめ

定量的マルチパラメトリックMRIを用いることで,近い将来,visually-drivenおよびdata-driven画像診断が融合し,より良い患者マネージメントが行えるようになると期待している。

●参考文献
1)Ma, D., et al., Nature, 495(7440): 187-192, 2013.
2)Fujita, S., et al., Hum. Brain. Mapp., doi: 10.1002/hbm.25232, 2020(Online ahead of print).
3)Fujita, S., et al., Magn. Reson. Imaging, 63 : 235-243, 2019.
4)Fujita, S., et al., J. Magn. Reson. Imaging, 50 : 1834-1842, 2019.
5)Fujita, S., et al., Invest. Radiol., doi: 10.1097/RLI.0000000000000744, 2020(Online ahead of print).
6)Fujita, S., et al., Invest. Radiol., 55(4): 249-256, 2020.

 

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