Philips INNOVATION and VALUE(フィリップス・ジャパン)

2026年5月号

知多半島の地域医療の持続的発展のため公立病院を経営統合し独立行政法人化,2病院での機能分化で社会的要請に対応 ─高度急性期医療を支える画像診断機器が検査効率向上と検査内容の充実,病院経営にも寄与

知多半島総合医療センター

知多半島総合医療センター

 

名古屋市の南に突き出た知多半島の地域医療を守るため,2025年4月に半田市立半田病院と常滑市民病院が経営統合し,地方独立行政法人化した。それぞれ「知多半島総合医療センター(以下,医療センター)」と「知多半島りんくう病院(以下,りんくう病院)」に改称して2病院体制を維持しながら,急性期と回復期・在宅に機能分化を進めることで効率的で柔軟な病院経営や診療提供をめざしている。地域医療構想を背景とした機能分化や病院再編が全国で盛んに議論される中,注目されている公立2病院の経営統合と運営について,渡邉和彦理事長と品田正樹理事,放射線技術科の水口 敬技師長と鳴海 樹係長にインタビューした。

渡邉和彦 理事長

渡邉和彦 理事長

品田正樹 理事

品田正樹 理事

水口 敬 技師長

水口 敬 技師長

鳴海 樹 係長

鳴海 樹 係長

 

知多半島の医療を守るため2つの公立病院を経営統合

半田市立半田病院の新築移転に合わせ,隣接する常滑市民病院と経営統合し,新たに地方独立行政法人知多半島総合医療機構が誕生した。機構の初代理事長を務める渡邉理事長は,「これまで自治体が公立病院を統合して1つの病院にする事例はありましたが,2自治体がそれぞれの病院を存続したまま経営統合するケースは全国初となります」と述べる。
経営統合への動きは,2015年に老朽化に伴い半田病院の建て替えが決まったことに端を発する。旧病院隣接地への移転案と,津波・高潮リスクを考慮した高台への移転案で市民を二分する議論が起こったが,知事の助言もあり知多半島のほぼ中央に位置する丘陵地への移転が決まった。当時,半田病院の副院長として新病院建設を任されていた渡邉理事長は,「移転により2015年に新築移転していた常滑市民病院と直線3kmの距離となることから,将来的に知多半島全体の医療を守っていくためには,立地を生かして常滑市民病院と一体化して機能分化を進めることが不可欠だと考えました。地域社会に必要なことであるという信念を持って自治体や議会,市民,病院に働きかけ,両市が話し合い2病院を経営統合し急性期と回復期・在宅医療で役割を分担する方向で調整を進めました」と経緯を説明する。また,統合に当たっては公立病院のまま共同経営する一部事務組合ではなく,地方独立行政法人化を選択した。渡邉理事長は,「経営状況も組織文化も異なる病院の統合を円滑に進めるために,独法化することで迅速な意思決定や適材適所の人材配置を可能にしました。『機能の異なる2つの病棟を持つ一つの病院』という意識の浸透に努め,改革を進めています」と話す。

2病院での機能分化と連携で社会的要請に柔軟に対応

経営統合が決まり,両院の相互理解を深めるためコメディカルの人事交流を進める中で直面したのがコロナ禍だった。この難局を乗り切るため,特定感染症指定医療機関であった常滑市民病院がコロナ患者を,半田病院が救急患者を受け入れる役割分担を行い,コロナ対応のために看護師や医師を派遣した。渡邉理事長は当時を振り返り,「この時の経験から2病院で機能を分担,連携することのメリットを強く感じ,一見,非効率とも思われる2病院存続での経営統合が大きな強みになると確信しました。感染症や災害発生時にも止まらない医療を実現でき,将来的に地域の医療ニーズが変化したときにも柔軟に機能を変えて対応することができます」と話す。
法人として自立的に経営していくため,2022年には品田理事が室長を務める経営企画室を設置し,院内の意識改革や病院機能の検討が進められた。地域の人口・疾患の動態を踏まえ,医療センターは移転に伴い病床数を499床から416床へと減らし,高度急性期の機能を強化。急性期を脱した患者をりんくう病院へと転院させることで,病床の効率的な運用をめざした。
開院から約1年が経過した医療センターは想定通りに機能しつつある。品田理事は,「高速道路のインターチェンジが近いことから,近隣だけでなく知多半島南部からの救急搬送も増加しており,2025年度の救急車受け入れ台数は1万件(1000台以上増加)を超える見込みです。手術件数は約4300件(約440件増加),在院日数は8日台(約2日短縮),病床稼働率は90〜100%を維持しています」と説明する。

高度急性期医療に貢献する投資対効果重視の装置選定

病院経営においては画像診断装置の整備・運用も重要なポイントとなるが,医療センターでは高度急性期の役割を十分に果たしつつ,投資対効果も見込める装置の選定をめざした。品田理事は,「当院が担うべき医療や高齢化による画像検査増加を踏まえて,画像診断装置への投資を決め,CT,MRI,アンギオ装置を各3台設置することにしました。フィリップス社製の装置は多様な撮像メニューにより多くの患者への対応力と医療貢献度への期待も高く,費用対効果の観点から必要な投資と評価しました」と話す。
フィリップス装置は,CTが「Incisive CT」と2層検出器を搭載した「Spectral CT 7500」,「IQon Spectral CT」(旧病院から移設)の3台,MRIは「Ingenia Elition 3.0T」(他2台は他社製),アンギオ装置は「Azurion 7」シリーズ3台(うち1台は旧病院から移設)を導入。放射線検査エリアをERと隣接させ,救急と入院・外来の検査に対応している。CTの選定について水口技師長は,「ERは全身撮影も多く,入院・外来と合わせて多くの検査に対応するためパワーのある装置が求められます。旧病院で使用していたフィリップスCTのX線管球は短いウェイトタイムで次々と撮影でき高耐久に感じました。管球交換によるダウンタイムは現場にも経営にも負担となるため,丈夫で長持ちする点が選定の決め手になりました。また,2層検出器CTは全例でデュアルエナジー解析ができる有用性は高く,メーカーの統一より操作性やメンテナンスの面でも利点があります」と説明する。
月間の検査件数は,CTが約3000件,MRIが1000件弱で旧病院から10%増,アンギオは120〜130件で約20%増加しており,さらなる増加を見込む。

検査の効率化と内容の充実に貢献するフィリップス装置

放射線技術科では2026年4月から2病院の勤務表を統合し,全48名の診療放射線技師がボーダーレスに配置されるようになった。業務効率化の取り組みについて水口技師長は,「新病院は広い操作室を囲むようにCT,MRI室をレイアウトし,負荷の高い検査の応援対応をしやすくしました。また,タスク・シフトにも取り組み,造影検査の血管確保から投与,抜針までやMRI検査前のペースメーカー設定変更なども診療放射線技師で対応しています」と説明する。
CT,MRI検査では装置の特長を踏まえて使い分け,効率化や検査内容の充実を図っている。CT検査は,AI画像再構成「Precise Image」など多くのAI技術を搭載したIncisive CTを救急と単純撮影に,2層検出器CTを造影検査や特殊検査に活用している。鳴海係長は,「Incisive CTはAIカメラによる自動ポジショニングがスループット向上に貢献しており,操作性もシンプルで普段CTを担当していない技師でも夜勤時などに扱いやすいです。年間1000件ほどの心臓CTを撮影していますが,AI再構成では明瞭でブレのない,自然な質感の画像を得られています。また,市中病院として患者の経過観察を行っていく上で,2層検出器CTではデュアルエナジー解析ができつつ通常の120kVp画像を取得できることも有用です」と述べる。
一方,MRIのIngenia Elition 3.0Tは主に特殊検査に用いており,DWIBS撮像なども行っている。水口技師長は,「PET装置が半田市医師会健康管理センターにあるため,地域での機能分担を考えPET検査は外部委託することにしました。院内では代替的にDWIBSを利用していますが,Ingenia Elition 3.0Tは特殊検査も容易に行えることが特長です」と話す。
経営的には検査数を増やしつつ残業を抑えた働きやすい環境づくりが求められるが,同院ではフィリップス装置がその両立を効率良く支援すると期待している。放射線技術科では医師と活発に意見交換し,スペクトラルイメージングなどの新しい技術や活用法を紹介することで,臨床応用の拡大とオーダの増加をめざしている。

Incisive CT

Incisive CT

Spectral CT 7500

Spectral CT 7500

IQon Spectral CT

IQon Spectral CT

     
Ingenia Elition 3.0T

Ingenia Elition 3.0T

Azurion 7シリーズ

Azurion 7シリーズ

 

 

丘陵地に移転した知多半島総合医療センターは,高度な免震機構とライフラインを整備。市の防災センターや災害ヘリポートと隣接し,災害対応の拠点となる。

丘陵地に移転した知多半島総合医療センターは,高度な免震機構とライフラインを整備。市の防災センターや災害ヘリポートと隣接し,災害対応の拠点となる。

 

地域全体での最適化が持続可能な医療を可能に

知多半島総合医療機構の取り組みは地域医療再編を進める全国の自治体・医療機関から注目されているが,渡邉理事長は,「まだまだ改革の途上です。適材適所の人材登用や配置,診療科再編などを進めていますが,それぞれの病院の文化を理解してコミュニケーションをとり,信念と熱意を持って丁寧な働きかけを続けていきます」と述べる。
2026年3月にはりんくう病院の急性期病棟を削減し,健診事業も廃止した。健診は半田市医師会健康管理センターに委ねるなど,2病院だけでなく地域医療機関とも機能分担・連携し,地域全体で医療の最適化をめざして取り組みを進めている。将来にわたり地域医療を提供していくための一つのモデルケースとして,今後の展開から目が離せない。

(2026年3月4日取材)

 

知多半島総合医療センター
〒475-8599 愛知県半田市横山町192番地
https://www.chitahantogmo.or.jp/cmc/

 

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