技術解説(シーメンスヘルスケア)

2021年10月号

核医学装置の最新技術動向

PET/CT装置の最新技術を用いた自動化と品質維持

堀次 元気[シーメンスヘルスケア(株)分子イメージング事業部]

本稿では,Siemens Healthineersの最新技術を活用した自動化機能と,それらを活用したPET検査の品質維持について紹介する。

■新たな呼吸同期撮像技術:OncoFreeze AI

PET撮像は,自由呼吸下でデータ収集を行うことから,呼吸性体動の影響を受ける範囲において定量値や画質の劣化が避けられない。この影響を減らすために呼吸同期技術を用いることが提案されているが,撮像時間延長が避けられないという欠点があり,日常臨床においては広く活用されているとは言えない。Siemens Healthineersでは,2018年に,振幅法による呼吸同期技術を応用した“OncoFreeze”という新たな呼吸同期技術を導入した。OncoFreezeは,mass preservation optical flowアルゴリズムを利用し,三次元的な動きの情報を計算,逐次近似画像再構成の中に情報を組み込み補正することで,収集された100%のカウント情報を使用することができる。そのため,これまで避けられなかった撮像時間の延長が不要になり,呼吸同期検査を日常的に実施することが可能となった。
さらに,2021年にOncoFreezeに新たな機能が追加され,“OncoFreeze AI”となった。まず1つ目の機能は,臓器の解剖学的情報を自動認識する技術“Automatic Landmarking and Parsing of Human Anatomy(ALPHA) technology”である。ALPHA technologyは,CTの位置決め画像を利用し,患者の解剖学的構造を認識する。プロトコール設定時には,呼吸性運動の影響を受ける可能性のある解剖学的構造を検出し,自動的に呼吸同期範囲を設定する。2つ目の機能は,data-driven gating(以下,DDG)による呼吸波形取得のデバイスレス化である。PETの生データから呼吸波形を作り,呼吸体動の補正に利用する。デバイスレス化により,外部デバイスの装着の手間が省けることで煩わしさがなくなり,患者だけでなく,操作者にとっても負担が軽減されるとともに,外部デバイスの設置状況による呼吸波形の信号強度変化も低減することができる。OncoFreezeの収集時間の延長が不要である利点は変わらず,呼吸同期範囲の自動設定,デバイスレス化といった機能が追加されたことで,さらなるスループットの向上が見込まれる。これまで呼吸同期撮像の欠点であったスループットの低下を招く要因がなくなることによって,通常のPET検査と同等のスループットで実施することが可能である。OncoFreeze AIでは,呼吸同期範囲の自動設定,DDGによる呼吸波形抽出,画像再構成処理を全自動で行うことにより,呼吸同期技術の活用を促進し,すべての症例において呼吸体動の影響を補正し,品質が維持された画像を提供することが可能である(図1)。

図1 OncoFreeze AIの特長 a:ALPHA technologyによる呼吸同期範囲の自動設定 b:デバイスレス化 c:収集カウント100%を用いた再構成技術

図1 OncoFreeze AIの特長
a:ALPHA technologyによる呼吸同期範囲の自動設定
b:デバイスレス化
c:収集カウント100%を用いた再構成技術

 

■PET quality controlの自動化:QualityGuard

2017年に,毎日および毎週のPET quality control(以下,QC)を自動的に実施する機能“QualityGuard”を導入した。QualityGuardは,LSOクリスタルから放出される微量なバックグラウンド放射線を利用して,PET/CT装置が稼働していない時間に,自動的にQCを実施する機能である。LSOクリスタルに含まれる176Luの崩壊により発生するイベントの時間差や位置情報を記録することで,PET装置の品質管理に利用する。3か月ごとの点検や停電時以外では校正用線源を使わないため,医療従事者の被ばく低減を実現するとともに,タイマー機能により任意の時間から開始することができ,PET/CT装置を使用しない時間帯に自動的に品質管理を実施できる。従来であればQCを実施していた朝の時間帯を,有効活用することが可能となる。

 

【問い合わせ先】
コミュニケーション部
TEL 0120-041-387
URL https://www.siemens-healthineers.com/jp/

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