技術解説(シーメンスヘルスケア)

2026年4月号

腹部領域における核医学の最新技術

腹部領域におけるSiemens Healthineersの核医学技術

堀次 元気[シーメンスヘルスケア(株)分子イメージング事業部]

本稿では,腹部領域の核医学画像診断におけるSiemens Healthineers技術の活用について紹介する。

■全身ダイナミックPET撮像Whole-body Dynamic PET

Siemens HealthineersのPET/CT装置では,速度変化が可能な連続寝台移動(FlowMotion)を用いることで,全身を連続で複数回撮像し,全身動態画像を収集するWhole-body Dynamic(WBD) PET撮像が可能である。WBD PETは,すでに日常診療にも用いられており,その有用性は多く報告されている。Nishimuraらは,WBD PETで視覚的に集積形状の変化を評価することで,尿路および消化管における生理的集積と病的集積を区別することが可能と報告している1)。Kotaniらは,WBD PETは,大腸領域の集積形状の変化に基づき生理的集積と病的集積を鑑別することが可能であり,early-delayed撮像よりも高い診断価値を提供する可能性があると報告している2)図1は,大腸がん患者においてWBD PETを活用した症例である。S状結腸に閉塞性病変が存在するために,内視鏡で病変より口側の観察ができなかったが,WBD PETにより上行結腸の病変が指摘できた例である。このようにWBD PET撮像を行うことで,従来の静止画像では得られなかった動きの情報を活用し,より精度の高い診断を提供できる可能性がある。

図1 大腸がん患者におけるWBD PETの活用 S状結腸に閉塞性病変(↑)があり,内視鏡では口側の確認ができなかったが,WBD PETにより上行結腸の病変(○)が確認できた症例である。 (画像ご提供:市立青梅総合医療センター様)

図1 大腸がん患者におけるWBD PETの活用 
S状結腸に閉塞性病変()があり,内視鏡では口側の確認ができなかったが,WBD PETにより上行結腸の病変()が確認できた症例である。
(画像ご提供:市立青梅総合医療センター様)

 

■撮像時間の延長が不要なPET呼吸同期技術「OncoFreeze AI」

Siemens HealthineersのPET呼吸同期技術OncoFreeze AIは,動きの情報をPET画像再構成に組み込むことによって100%のカウント情報を使用するため,撮像時間の延長が不要である。さらに,data-driven gatingによるデバイスレス呼吸波形の取得技術や臓器の解剖学的情報を自動認識する技術も含まれており,日常臨床において,簡単にPET呼吸同期技術を活用することが可能となった。
Tatsumiらは,223のがん病変(乳房138例,上部腹部85例)を対象とし,OncoFreeze AIが18F-FDG PET/CT検査における乳房および上部腹部がんの可視化と定量性(SUVmax,metabolic tumor volume)を改善することを報告した3)。Inceらは,18F-FDG,64Cu-DOTATATE,68Ga-DOTATATE検査を受けた78患者を対象に,PET呼吸同期画像と非同期画像において,定量値の比較,視覚的評価を行い,OncoFreeze AIは,病変の定量化および画質全体に有意な改善をもたらすことを報告した4)。Inceらの施設では,胸腹部の腫瘍PET検査において,OncoFreeze AIを標準的なPET画像再構成法として採用しているようである。図2に,多発肝転移病変がOncoFreeze AIによって明瞭に描出された症例を示す。呼吸同期なしの画像では,呼吸の動きによるボケによって病変部がつながって描出されているが,OncoFreeze AIの画像では,それぞれの病変がボケなく明瞭に描出されている。また,呼吸同期なしとOncoFreeze AIの画像は同じ撮像時間から得られたものであり,撮像時間の延長をしなくともSNRの良い呼吸同期画像が得られることがわかる。このようにOncoFreeze AIを活用することで,日常臨床で簡単に呼吸同期画像を取得することができ,腹部領域における精度の高い診断が可能となる。

図2 撮像時間の延長が不要なPET呼吸同期技術 OncoFreeze AIの活用 (画像ご提供:大阪公立大学医学部附属病院様)

図2 撮像時間の延長が不要なPET呼吸同期技術 OncoFreeze AIの活用
(画像ご提供:大阪公立大学医学部附属病院様)

 

■SPECT/CT検査における高精度定量化技術「xSPECT」

RI内用療法では,定量的な線量計測が重要である。従来のSPECT/CT定量化は手順の煩雑さや装置,施設特有の課題があり,臨床ではほとんど使用されていなかった。
「xSPECT Quant」は,さまざまな核種に対して,自動かつ正確で再現性のある定量化を提供するツールである。高精度なアライメントとこれまでにない正確な補正をベースに,57Co密封点線源を用いたクロスキャリブレーションによって,簡便にボクセル値をBq/mlやSUVに定量化することを可能とし,高精度かつ再現性の高い三次元定量画像の提供を実現した。National Institute of Standards and Technology(NIST)トレーサブル線源を採用しており,異なる装置,線量校正器,施設間の定量値を容易に標準化することが可能である。Fajardoらは,177Lu-PSMA-617治療反応評価において,xSPECT Quantによる全身15分間(3ベッド)の高速定量的SPECT/CT検査を実施しており,治療反応を高感度で評価することができると報告している5)図3に,177Lu-PSMA療法後の定量評価を行った症例を提示する。セラノスティクスの実用化が進むとともに,高精度で再現性の高い定量的SPECTイメージングは重要な役目を果たすと考えられる。

図3 全身15分間の高速撮像による177Lu-PSMA療法後の定量評価 177Lu-PSMA療法を8週間隔で2サイクル投与し,48時間後に取得したxSPECT Quant画像では,最初の治療サイクル後に腹部リンパ節転移の病変体積,集積強度,SUVが有意に減少し,奏効が示唆された。 (画像ご提供:スイス・Universitätsspital Basel様)

図3 全身15分間の高速撮像による177Lu-PSMA療法後の定量評価
177Lu-PSMA療法を8週間隔で2サイクル投与し,48時間後に取得したxSPECT Quant画像では,最初の治療サイクル後に腹部リンパ節転移の病変体積,集積強度,SUVが有意に減少し,奏効が示唆された。
(画像ご提供:スイス・Universitätsspital Basel様)

 

●参考文献
1)Nishimura, M., Tamaki, N., Matsushima, S., et al. : Dynamic whole-body 18F-FDG PET for differentiating abnormal lesions from physiological uptake. Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging, 47(10): 2293-2300, 2020.
2)Kotani, T., Nishimura, M., Tamaki, N., et al. : Comparison between dynamic whole-body FDG-PET and early-delayed imaging for the assessment of motion in focal uptake in colorectal area. Ann. Nucl. Med., 35(12): 1305-1311, 2021.
3)Tatsumi, M., Morita, N., Kida, A., et al. : Effects of data-driven respiratory gating on visualization and quantification of breast and upper abdominal cancers in FDG PET/CT examinations. Ann. Nucl. Med., 39(5): 450-457, 2025.
4)Ince, S., Thomas, M.A., Itani, M., et al. : Quantitative and Visual Benefits of Data-Driven Motion Correction on Oncologic PET/CT : 
A Prospective Cross-sectional Study. Acad. Radiol., 32(4): 2257-2269, 2025.
5) Fajardo, A.R., Osborne, J., Sawoszczyk, L. : 
Fast, quantitative SPECT/CT acquisition following multiple therapy cycles of 177Lu-PSMA-617 enables response assessment in a patient with metastatic prostate cancer. Siemens Healthineers, 2023.
https://www.siemens-healthineers.com/molecular-imaging/mi-clinical-corner/clinical-case-studies/fast-quantitative-spect-ct-acquisition
(2023年12月閲覧)

 

●問い合わせ先
シーメンスヘルスケア株式会社
コミュニケーション部
〒141-8644
東京都品川区大崎1-11-1 ゲートシティ大崎ウエストタワー
TEL:03-3493-7500
https://www.siemens-healthineers.com/jp/

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