Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)

2021年3月号

“IVRプランニング”による術前計画支援でより迅速なIVRを実現
帝京大学医学部附属病院では増加する緊急IVRへの対応に活用

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行で医療現場がひっ迫する中,東京都板橋区の帝京大学医学部附属病院では,入念なCOVID-19感染防止対策を行いつつ,連日救急診療に当たっている。救急科との連携の下,安全,確実な緊急IVRに取り組む放射線科教授の近藤浩史氏に,3D医用画像処理ワークステーション「Ziostation2」(ザイオソフト)のカテーテル手術の術前計画をサポートするアプリケーション“IVRプランニング”の有用性について取材した。

近隣からの紹介なども含めIVR施行件数が増加

近藤浩史 教授

近藤浩史 教授

5つのキャンパスに12学部と34学科を抱える総合大学の帝京大学。関東各地に6つの医療拠点を持ち,東京都板橋区で1971年に開院した本院の医学部附属病院は,板橋区のほか,北区や豊島区などの東京都城北エリアの地域医療を支えている。救急医療では,2009年5月の新病院棟開設を機に,高度救命救急センターに加え,2次救急と時間外診療の初療を行う全診療科支援型総合診療ERセンターと外傷センターを新たに立ち上げた。これら3センターが連携し,より質の高い救急医療を提供している。
同院の放射線科は,画像診断,IVR,放射線治療の3部門で構成されている。IVR部門は,画像診断を行いつつも独立したチームとしてIVRに専念し,肝動脈化学塞栓療法(TACE),バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO),肺動静脈奇形,内臓動脈瘤塞栓術などの予定手術だけでなく,24時間365日緊急IVRに対応している。近藤教授は,2015年の着任以降,外傷や緊急IVRなどへの対応を含めてIVRチームの体制拡充に積極的に取り組んできた。その結果,IVR件数は着実に増加しており,2019年度は約900件,2020年度も一時はCOVID-19の影響を受けたものの,年間施行数は約930件に達する見込みだ。IVR件数増加の理由を近藤教授は,「スタッフの充実と同時に,セミナーなどを通じてIVRの有用性を紹介してきました。その結果,近隣からの紹介患者も増えており,当院のIVRが広く認知され始めたと感じています」と述べる。
IVRチームには,日本インターベンショナルラジオロジー(IVR)学会専門医4名を含む8名が在籍。他施設から研修に来る医師も多い。近藤教授はIVRチームについて,「症例数が多く,大変多忙ですが,その分多くを学べる環境だと思います」と話す。また,IVRチームは月に1回,救急科と症例検討会を行っているが,そこには脳外科医,麻酔科医,看護師や診療放射線技師が参加し,問題点を抽出し診療指針の改善に取り組んでいる。近藤教授は,「日常臨床では,個々の症例を掘り下げて討論する時間があまり持てないため,多職種が一同に集まり話し合いができる貴重な時間になっています」とその意義を評価している。

より迅速な緊急IVRの時間短縮をめざす概念が浸透

同院では,2017年7月に,初療室に320列CTを設置したハイブリッドERシステム(HERS)を導入した。救急車から直接患者を搬入することで,迅速な救急診療が可能となった。
同院のIVR症例のうち,年間約300例は緊急IVRである。総IVR件数の増加に伴い,緊急IVRの件数も増加している。HERSでは,IVRの適応と判断された場合は直後にIVRが開始されるため,コールがあってからでは間に合わない。そのため,IVRチームは患者が到着する前からHERSに参集し,救急医と一緒に診療を行うようにしている。近藤教授は,「HERSの運用後,救急科との連携が熟成されて良好なコラボレーションができています」と説明する。
外傷診療は時間との闘いであり,外傷IVRにおいても時間を意識した診断と治療が求められる。そのため,松本純一氏(聖マリアンナ医科大学)らが提唱する“PRESTO(Prompt and Rapid Endovascular Strategies in Trauma Occasions)”と“Damage Control IVR(DCIR)”の概念を理解しておくことが重要である。まず,診断からIVRまでの時間短縮を目的に,上述したように患者が病院に到着する前からIVRチームを招集する。primary survey,CT撮影と読影,IVRの準備を迅速に行い,さらに短時間でのIVR(DCIR)により,外傷初期診療時間の短縮を図る。IVRの普及や質の向上を目的として活動を行うDIRECT(Diagnostic and Interventional Radiology in Emergency,Critical care,and Trauma)研究会(代表幹事:船曳知弘氏・済生会横浜市東部病院)の幹事でもある近藤教授は,これらの概念が共有されるようになったことで,緊急性に対する現場の意思統一が図れるようになったという。

Ziostation2による“IVRプランニング” 血管IVRモードでは,CTデータを読み込むことで仮想透視画像の作成から主要血管の抽出までが自動で行われる。ターゲット(緑の○)を指定することで,そこに至るルート(血管)を自動抽出し複数(最大3本)表示されるため(水色,黄色),IVRの際の最適なルートを事前に確認できる。さらに,主要な血管の分岐部にはマーカーが表示され,画像を回転させることでカテーテルの挿入角度を確認でき,術中の手技をサポートする。

Ziostation2による“IVRプランニング”
血管IVRモードでは,CTデータを読み込むことで仮想透視画像の作成から主要血管の抽出までが自動で行われる。ターゲット(緑の)を指定することで,そこに至るルート(血管)を自動抽出し複数(最大3本)表示されるため(水色,黄色),IVRの際の最適なルートを事前に確認できる。さらに,主要な血管の分岐部にはマーカーが表示され,画像を回転させることでカテーテルの挿入角度を確認でき,術中の手技をサポートする。

 

IVRプランニングの活用でより迅速なPPPを実現

緊急IVRでは,手技を行う術者(operator)とアシスタント(assistant),コンダクター(conductor)による“COA”システムの体制をとる。この時に指示を出すコンダクターを支援する情報として活用されているのが“Pre-procedural Planning(PPP)”だ。PPPは,DIRECT研究会の松本氏と一ノ瀬嘉明氏(国立病院機構災害医療センター)が考案したもので,術前のCT画像からワークステーションを用いて,血管造影画像に近似した仮想透視画像(Virtual Fluoroscopic Image)を作成し,血管走行やターゲットとの位置関係が把握できる画像を提供する。3D医用画像処理ワークステーション「Ziostation2」(ザイオソフト)での仮想透視画像は,Ray Sum画像に白黒反転処理をし,2DフィルタのEdge enhanceをかけて作成する。同院のZiostation2には,ここまでをマクロ化した“PPP”ボタンが設定されており,標準機能として利用できる。作成した仮想透視画像を基に,出血点などのターゲットに向かう血管のパスをマニュアルで描くことで,IVRのアプローチを支援する画像が作成できる。同院では,HERSにZiostation2が導入されているが,術前のPPPについては,CT撮影からIVRまでの時間が短いため,救急症例での全例作成には至っていなかった。
このPPPを含めIVRの術前計画の作成を自動化したのが,Ziostation2のアプリケーションとしてリリースされたIVRプランニングだ。IVRプランニングでは,“血管IVRモード”と“非血管IVRモード”でカテーテル術前のプランニングをサポートする。血管IVRモードでは,造影CTのデータを読み込むと仮想透視画像の作成,大動脈や腸骨動脈の輪郭の自動抽出までが行われる。抽出した血管走行や分岐をサーフェスレンダリング表示し,Ray Sum画像と重ね合わせて表示する。出血や腫瘍などのターゲットを指定すると,ターゲットまでのルート(血管)が自動抽出される。最大3本まで候補が提示され,ルートごとに色や名前をつけ,治療を行う血管を鑑別できる。また,分岐血管の方向が表示され,カテーテルの回転方向も確認できるほか,アングルのシミュレーションをリアルタイムに行うことも可能だ。
IVRプランニングの最大の特徴は,処理の速さにある。近藤教授は,「Ziostation2でのPPPのプランニング画像の作成時間は,従来のマニュアル作業では10分ほどかかっていましたが,IVRプランニングにより,患者データを選択してから目的のターゲットまでの血管ルート作成を2分程度まで縮めることが可能になりました」と話す。特に多発外傷では,より速く,安全,正確に治療ができると評価しており,自身がコンダクターを務める場合は,ほとんどの症例でIVRプランニングを使用しているという。
さらに,PPPは診療放射線技師が作成している施設もあるが,Ziostation2は操作性が良く,ワークステーション操作に慣れていない医師でも短時間で作成しやすいのも利点である。近藤教授は,「外科では,『手術の成功は,術前に8割以上決まる』と言います。それはIVRでも同様ですが,特に緊急IVRは短時間で準備を行う必要があります。そのため,より迅速かつ容易にPPPを作成できることが重要になります」と強調する。

IVRプランニングは操作性も良く,医師でも迅速にPPP作成が可能

IVRプランニングは操作性も良く,
医師でも迅速にPPP作成が可能

 

入念な対策でCOVID-19感染防止と治療継続を両立

2020年から続くCOVID-19の蔓延により,医療現場は対応の変化を余儀なくされた。同院では,救急部にあるCTはHERSのみであるため,CT撮影後,DCIR症例以外は4階の血管造影室に患者を移動して治療を行っていたが,COVID-19が否定できない場合はすべてHERSで完結するように運用を変更した。
日本IVR学会では2020年4月24日に,「新型コロナウイルス陽性および疑い患者に対するIVRに関する提言」(第1報)を公表した。当初,放射線科ではCOVID-19対応の事業継続計画書(BCP)を作成。チーム制にし,オンラインでのカンファレンスを行うなど,時間的・空間的に分離することで感染の拡大を最小限にする体制をとっていた(現在はカンファレンスのみ)。また,4階にある血管造影室5室のうち,2室をCOVID-19陽性/疑い患者用とした。ゾーニングやシミュレーションを行い,血管造影やIVR施行時は不要な機材を別の部屋に移動させるなど,感染対策を徹底して運用している。COVID-19の終息が見えない中,IVRプランニングなどのアプリケーションも活用し,より安全で確実なIVRの継続をめざしていく。

(2020年12月24日取材)

 

帝京大学医学部附属病院

帝京大学医学部附属病院
〒173-8606
東京都板橋区加賀2-11-1
TEL 03-3964-1211(代)

 

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