ITEM2021 島津製作所 ブースレポート 
頭部・乳房用TOF-PET装置や分析計測技術を活用した遺伝子解析装置「AutoAmp」など独自の強みを生かした多くの新製品・新技術で存在感をアピール


2021-5-6


島津製作所ブース

島津製作所ブース

島津製作所は,“With Your Stories -lifetime healthcare support-”をコンセプトに,ITEM初披露の製品・技術を含む多彩なラインアップを展示した。世界初の頭部・乳房用高精度TOF-PET装置,血管撮影システム「Trinias」の次世代コンセプトモデルなど,同社が長年蓄積してきた技術が新たなステージに到達。また,既存FPDの使用が可能な回診用X線撮影装置やIGRTに特化した放射線治療支援システム「SyncTraX SMART version」など,導入・活用の幅を広げるラインアップにも期待がかかる。
さらに島津製作所は,画像機器のみならず,分析計測分野においても長い歴史と知見,最先端の製品群を持ち,昨年来の新型コロナウイルス感染症流行下では,多くの有用なソリューションを提供し,大きな存在感を示している。今回の展示では,遺伝子解析装置「AutoAmp」を始め,「非接触」や「抗菌」という価値を付加したソリューションも紹介。“withコロナ”が提唱される中,社会生活に不可欠な製品の数々が紹介された。さらに,コロナ禍の状況を鑑み,ブースの一角には京都本社の担当者が来場者へ説明するリモート展示コーナーも設けられた。

 

●回診用X線撮影装置:操作性はそのままに,“DRニュートラル”を実現した新製品を初披露
●血管撮影システム:2021年度発売予定の次世代コンセプトモデルを発表
●頭部・乳房用TOF-PET装置:全身用装置では達成できない高精度なPET検査を実現
●X線テレビシステム:最新装置「SONIALVISION G4 LX edition」に至る60年間の開発の歴史を紹介
●放射線治療支援システム:IGRTに特化した「SyncTraX SMART version」を紹介
●遺伝子解析装置:分析計測技術で新型コロナウイルス感染症対策に貢献する〜遺伝子解析装置「AutoAmp」〜
●クリニック向け:新型コロナウイルス対策を追加したパッケージが登場

●回診用X線撮影装置:操作性はそのままに,“DRニュートラル”を実現した新製品を初披露

島津製作所の一般撮影装置や回診用X線撮影装置にはパワーアシスト技術“GLIDE Technologies”が搭載され,軽く滑らかな操作性を実現している。GLIDE Technologiesは,医療現場での検査環境の改善を図ることを目的とし,“センシング技術”,“トルク制御技術”,“ショック軽減技術”,“スタビリティ制御技術”,“バランス技術”の5つの要素技術で構成され,“GLIDEファミリー”として各装置に搭載されている。

一般撮影システム「RADspeed Pro style edition」には,“GLIDE Technologies”の一つ“POWER GLIDE”が搭載され,高重量のX線管懸垂器を軽々と移動できる

一般撮影システム「RADspeed Pro style edition」には,“GLIDE Technologies”の一つ“POWER GLIDE”が搭載され,高重量のX線管懸垂器を軽々と移動できる

 

回診用X線撮影装置「MX8 Version」は,“GLIDE VIEW”(伸縮支柱とパワーアシスト)が搭載され,滑らかな走行性に加え,支柱の伸縮により走行時に広い視野が確保できるなど,ストレスフリーな操作性が特徴である。そこに今回,新たに加わったのが「MobileArt Evolution MX8 Version」だ。これまで回診用X線撮影装置は,島津社製を始め,キヤノン社,富士フイルム社,コニカミノルタ社など各社のDRシステムを順次搭載し,ラインアップを揃えることで,施設ごとのニーズに応えてきた。しかしITEMで初披露となったMobileArt Evolution MX8 Versionは,DRシステムを組みこまず,施設の既存FPDをそのまま使用できる仕様で,まさに“DRニュートラル”を実現した。低価格で導入できるため,より多くの医療機関での活用が期待される。

回診用X線撮影装置の新ラインアップ「MobileArt Evolution MX8 Version」。操作性はそのままに,既存FPDの使用を可能にし,より活用の幅が広がった。

回診用X線撮影装置の新ラインアップ「MobileArt Evolution MX8 Version」。操作性はそのままに,既存FPDの使用を可能にし,より活用の幅が広がった。

 

既存FPDとノートPCを乗せて使用できる

既存FPDとノートPCを乗せて使用できる

 

●血管撮影システム:2021年度発売予定の次世代コンセプトモデルを発表

血管撮影システム「Trinias」の新たなラインアップとなる次世代のコンセプトモデルが展示された(2021年度発売予定。W. I. P.)。床置きのCアームは180°のスライド回転が可能であり,横入れコーンビームCT撮影を可能にする。長尺DSAとロードマップ機能を融合させた“SCORE Chase”機能など,現行Triniasシリーズに搭載されているリアルタイムアプリケーションの各機能も搭載予定である。

また,本モデルの開発コンセプトとなったのが,“Lean Design”,“ALARA Design”, “Sustainable Design”だ。現場のリアルな課題を解決することを念頭に,“Lean Design”のコンセプトの下,人間中心設計に基づいたデザインでストレスのないスムーズな操作とワークフローを実現するほか,ALARA(as low as reasonably achievable)の原則に基づき,低被ばくを追究する。さらに,継続的なアフターサービスにより,常に最新の医療環境を持続可能な(sustainable)体制を構築する。

血管撮影システム「Trinias」の次世代コンセプトモデル

血管撮影システム「Trinias」の次世代コンセプトモデル

 

床置きのCアームで,180°自在な回転を実現した

床置きのCアームで,180°自在な回転を実現した

 

人間工学に基づいて開発された操作盤

人間工学に基づいて開発された操作盤

 

●頭部・乳房用TOF-PET装置:全身用装置では達成できない高精度なPET検査を実現

2021年3月に発売された頭部・乳房用の世界初のTOF-PET装置「BresTome」が初展示された。“Brain and Breast Tomography for rest”を体現する同装置は,高性能検出器を頭部撮像モードと乳房撮像モードに切り替えることで,頭部・乳房両方の検査が行える。島津製作所は長年にわたりPET装置の開発を行い,2014年には痛みを伴わず高精度の検査が可能な乳房専用PET装置「Elmammo」を発売している。今回のBresTomeは,それらの蓄積の上に,最新の半導体検出器やTOF(Time of Flight)技術により,全身PET装置では達成できない高解像度な画像を実現した。さらに,減弱補正にCT像を用いないことで,低被ばく化を実現したほか,水冷チラーが不要になったことでコンパクト化が可能となり,導入のハードルを低減した。

頭部で保険適用のPET検査(FDGは7500点,O-15ガスは7000点)と乳房で保険適用のFDG-PET検査(4000点)のいずれも認められており,健診施設などでの需要が見込まれる。また,アルツハイマー型認知症の研究用途での期待が大きい。現在,製薬企業各社でアルツハイマー型認知症の治療薬の開発が進められており,その治療効果の判定に欠かせない装置となりうる。

頭部・乳房用の世界初のTOF-PET装置「BresTome」

頭部・乳房用の世界初のTOF-PET装置「BresTome」

 

位置合わせボタンで検出器の位置を調整する

位置合わせボタンで検出器の位置を調整する

 

乳房検査時は,うつ伏せになり検出器ホールに乳房をセットする。マンモグラフィと異なり,痛みがないのが大きなメリットとなる。

乳房検査時は,うつ伏せになり検出器ホールに乳房をセットする。マンモグラフィと異なり,痛みがないのが大きなメリットとなる。

 

●X線テレビシステム:最新装置「SONIALVISION G4 LX edition」に至る60年間の開発の歴史を紹介

X線テレビシステムのコーナーでは,1961年に遠隔操作方式X線透視診断装置が開発されてから60周年を迎えるのを機に,これまでの開発の歩みが最新装置「SONIALVISION G4 LX edition」とともに紹介された。世界初の遠隔操作方式X線透視診断装置の開発以降,島津製作所はX線画像のデジタル化(1992年),世界初の直截変換方式FPDと断層撮影アプリケーション“Tomosynthesis”の搭載(2004年),透視画像処理技術“SCORE PRO Advance”(2019年)などのさまざまな技術を開発し,低被ばく化や高画質化を実現してきた。

2019年に発売されたSONIALVISION G4 LX editionは,大視野17×17インチFPDを搭載し,SIDを180cmまで引き延ばし可能にするなど,“あらゆる検査を快適に行う”ための機能が細部まで追究されている。同時に,人工知能(AI)技術を用いた骨密度測定機能“Smart BMD”(オプション)や,長尺画像を再構成する“SLOT Advance”などのアプリケーションが次々に搭載されており,今後の展開が期待される。

島津製作所の最新式X線テレビシステム「SONIALVISION G4 LX edition」

島津製作所の最新式X線テレビシステム「SONIALVISION G4 LX edition」

 

遠隔操作方式X線透視診断装置生誕から60周年の歴史を紹介

遠隔操作方式X線透視診断装置生誕から60周年の歴史を紹介

 

●放射線治療支援システム:IGRTに特化した「SyncTraX SMART version」を紹介

放射線治療支援システム「SyncTraX SMART versionは,従来はオプションで搭載されていたIGRT(画像誘導放射線治療)支援機能“Smart Aligner”を標準搭載するバージョンが紹介された。SyncTraX SMART versionはバリアンメディカルシステムズ社製治療装置「TrueBeam」と組み合わせ,4式の12インチFPDとX線管を搭載,治療装置のガントリヘッドを避けるFPDとX線管の組み合わせを装置側で自動選択することで死角なく位置決め撮影を行うことを可能にする。今回,動体追跡機能をオプションにすることで基本システムのみで導入し,後から動体追跡機能を追加するという選択肢が設定され,装置の導入ハードルが低くなったことからいっそうの普及が期待される。

SyncTrax SMART versionの操作画面

SyncTrax SMART versionの操作画面

 

●遺伝子解析装置:分析計測技術で新型コロナウイルス感染症対策に貢献する〜遺伝子解析装置「AutoAmp」〜

島津製作所は,もう一つのコアである分析計測技術の領域で,新型コロナウイルスに関連する多くの製品・技術を提供している。初出展の遺伝子解析装置「AutoAmp」は,同社の「Ampdirect/2019-nCoV検出キット(12テスト用)」を使用し,前処理からPCR検査までを全自動で行える。最大4検体まで同時検査が可能で,幅30cm,奥行65cm,高さ66cmと小型で省スペースに設置でき,一般のクリニックでの需要に対応可能だ。“withコロナ”が提唱される中,陰性証明のニーズが高まることが予想され,ますます需要が拡大しそうな装置である。

2020年11月に発売された遺伝子解析装置「AutoAmp」

2020年11月に発売された遺伝子解析装置「AutoAmp」

 

最大4検体まで検査を同時に行える

最大4検体まで検査を同時に行える

 

●クリニック向け:新型コロナウイルス対策を追加したパッケージが登場

新型コロナウイルス対策を施したクリニック向けシステムも展示された。2019年に島津エス・ディー(株)から販売業務を移管した問診受付システム「MERSYS-Ⅳ」は,大画面19インチの液晶タッチパネルモニタで画面が見やすく,音声ガイダンスでスムーズな受付を実現する。2020年6月に発売された「感染症パッケージ」は,来院患者が画面に表示される問診に回答すると,状態に応じて感染対策エリアまたは一般診療エリアへそれぞれ誘導される。医療スタッフとの接触を減らすことで感染リスクを低減するほか,画面への非接触パネルの装着や自動検温装置の併設により,来院患者に安心を提供する。

問診受付システム「MERSYS-Ⅳ(感染症パッケージ)」(写真は17インチモニタのもの)。非接触パネルを後付けすることで,タッチパネル操作が可能になる。右側が自動検温装置。

問診受付システム「MERSYS-Ⅳ(感染症パッケージ)」(写真は17インチモニタのもの)。非接触パネルを後付けすることで,タッチパネル操作が可能になる。右側が自動検温装置。

 

●お問い合わせ先
社名:株式会社島津製作所
URL:https://www.med.shimadzu.co.jp/


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