Philips INNOVATION and VALUE(フィリップス・ジャパン)

2026年10月号

循環器専門施設が画像解析基盤を刷新し既設装置のまま心臓MRI解析の高度化とワークフロー改善を追求 ─自動トレースにより解析時間を短縮しつつストレイン解析など臨床ニーズへの対応力を向上

群馬県立心臓血管センター

群馬県立心臓血管センター

 

群馬県立心臓血管センター(195床)は,県内の循環器医療の拠点として循環器疾患全般に対する高度専門医療を提供している。同センターでは心不全や心筋症の増加を背景に心臓MRIの検査件数が増加傾向にあり,心臓MRI解析においては視覚的評価だけでなく定量評価へのニーズが高まっていた。そこで,フィリップス製MRI「Ingenia 1.5T」と組み合わせて活用してきた画像解析ワークステーション「IntelliSpace Portal」(以下,ISP)を,2025年11月に「Advanced Visualization Workspace 15」(以下,AVW 15)へと更新。既設MRIはそのままに,ストレイン解析やマッピングなど臨床医が求める情報の提供の迅速化に役立つとともに,解析ワークフローも大きく改善しているという。循環器専門施設において需要の高まる心臓MRIの現状と,AVW 15導入によるワークフローの変革について,放射線科の小山恵子部長,放射線科第二課の新保博彦副主幹にインタビューした。

小山恵子 部長

小山恵子 部長

新保博彦 副主幹

新保博彦 副主幹

 

循環器専門施設で進む心臓MRIの活用

群馬県立心臓血管センターは,群馬県立4病院の一つとして循環器疾患診療を担う専門施設であり,虚血性心疾患,不整脈,大動脈疾患,構造的心疾患,心不全,心臓リハビリテーションなど,循環器領域全般にわたる最先端の高度専門医療を提供している。また,群馬県立小児医療センターで治療を受けた先天性心疾患患者の成人期のフォローアップや,循環器疾患を合併する消化器・整形外科疾患の手術にも診療科が連携して対応するなど,循環器医療の拠点としての役割を果たしてきた。
画像診断においては,CT 2台,MRIとSPECT/CTが各1台などを備え,小山部長および非常勤の放射線科医と,診療放射線技師17名(会計年度任用職員含む)の体制で高度専門医療を支えている。なかでも小山部長の専門である核医学検査(心臓シンチグラフィ)は,長年,県内トップの検査数を維持している。これは高齢化により増加傾向にある心不全や心筋症の症例数の増加に起因する。それに伴ってニーズが高まっているのが心臓MRIだ。同センターでは2015年にIngenia 1.5Tを導入し,年間約1000件のMRI検査を実施してきた。このうち心臓MRIが占める割合が年々増加しており,現在は年間約300件の心臓MRIを実施している。Ingenia 1.5Tと同時に導入したISPは,2022年のバージョンアップを機に心臓MRI解析にも活用してきた。
小山部長は,「心臓MRIは,心筋症や心筋炎,虚血性心疾患の診断において心筋の性状評価ができる非常に有用な検査です。当センターでは大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)や不整脈治療に力を入れており,それら症例の中には心筋症が潜在している症例も多いことから,心臓MRIの需要が年々高まっています。画像解析により視覚的評価だけでなく,数値やマッピングの情報を提供できることで臨床医にもわかりやすく,経過把握にも有用です。また,群馬大学の研修施設でもあることから教育面でも大きな意義があります」と話す。

増加する心臓MRI検査に対応する「Ingenia 1.5T」

増加する心臓MRI検査に対応する「Ingenia 1.5T」

 

ストレイン解析への期待が後押ししたAVW 15への更新

心臓MRI解析においては近年,心筋組織性状を評価するT1/T2マッピングやECV解析,さらにはストレイン解析の臨床的重要性が高まっている。その背景について小山部長は,「特にストレイン解析は,学会や論文でその有用性が数多く報告されるようになったことがあります。循環器内科医からも学会などで得た知見や最新ガイドラインに基づく定量指標への要望が増えており,より高度な心臓MRI解析が可能な環境が必要と考えていました」と説明する。
そこで同センターでは,2025年11月にISPからAVW 15へとワークステーション単独の更新に踏み切った。検討時にデモンストレーションを見た小山部長は,「AVW 15ではストレイン解析の実装や,右室解析機能の充実が図られており,臨床ニーズに応えられるものと期待しました」と述べる。また,新保副主幹は,「ストレイン解析が利用可能になったことに加え,従来の心機能解析の効率化を図れることも大きな理由です」と話す。
AVW 15の心臓MRI解析では,新しいユーザーインターフェイス「MR Cardiac Suite」を搭載し,統合的なビューワとシームレスな画像解析環境の提供を支援する(図1)。ストレイン解析や各種マッピング解析などの充実した解析機能に加え,解析時間の短縮やワークフロー改善にフォーカスして設計されている点も特長で,増加する心臓MRI解析への対応が求められていた同センターが採用する決め手の一つとなった。

図1 Advanced Visualization Workspace 15によるストレイン解析

図1 Advanced Visualization Workspace 15によるストレイン解析

 

自動化と精度向上がもたらした解析ワークフローの革新

AVW 15導入による効果として新保副主幹が最も評価するのは,バックグラウンドで実行される自動トレースにおいて,従来のISPと比べ特に改善が見られることである。新保副主幹は,「当センターの患者さんは,心筋症や先天性心疾患などの構造異常によりトレースが容易でない症例がほとんどですが,AVW 15では左室・右室機能解析(MR Cardiac Functional LV/RV解析)の自動トレース結果の修正作業が大幅に減少しており,有用性を実感しています。左室の心基部,心尖部において血液と心筋の認識能力が向上し,構造的にトレースが難しい右室においても拡張期・収縮期のトレース精度が高くなったと感じています」と説明する。同センターでは,更新前後で左室・右室解析に要する時間は,以前の約10分から5分へと半減したとの報告もある(図2)。新保副主幹は,AVW15の自動トレース機能は若手技師への教育や,技師間の解析の標準化にも貢献していると言う。
トレース結果は各解析にも引き継がれるため,心臓解析全体のワークフローも改善が見られる。以前はルーチン解析として,左室・右室機能解析,遅延造影(LGE)解析,T1マッピングを行い,全体で45分ほどかかっていたが,AVW 15更新後はT2マッピングとストレイン解析を追加しても,解析時間は20分強と半分以下に短縮しているという。新保副主幹は,「レイアウトもわかりやすく,解析結果を1か所に集約したファインディングダッシュボードで確認できるため,容易に参照しながら直観的に解析を進めることができます」と述べる。MRI検査・解析はローテーションで1人の診療放射線技師が担当し,1日最大3件の心臓MRI解析を検査業務後に行っていることから,解析ワークフローの改善は担当技師の負担軽減につながっている。また,小山部長は,「解析結果が早く上がってくることで読影レポートの提供も迅速化し,疾患の特徴を踏まえた投薬などの治療介入ができるようになっています」と,治療方針決定に有用な情報の提供に寄与していると話す。

 

図2 更新前後の心臓MRI解析の時間・スループット比較(データ提供:群馬県立心臓血管センター様)

図2 更新前後の心臓MRI解析の時間・スループット比較
(データ提供:群馬県立心臓血管センター様)

 

新たな解析機能により診療支援をさらに強化

T2マッピングについては,ISPの頃にはMRIコンソールでキャプチャしたカラーマップを提供していたが,AVW 15では解析メニューに加えられた。新保副主幹は,「以前は先生方にカラーマップで視覚的に評価してもらっていましたが,数値の提供が可能になりました。また,予想以上に役立っているのがモーションコレクション機能です。T2マッピングは撮像時間が長く,当センターのIngenia 1.5Tでは,息止めをしても動きの影響を避けられないことがありました。AVW 15のモーションコレクションは,既存のMRIでもマッピング精度を向上させる一助になっています」と,解析結果における新機能の有用性も評価する。
循環器内科から強く求められていたストレイン解析にも対応し,心筋症や心アミロイドーシスの評価などに活用している。小山部長は,「シネ撮像のデータがあればレトロスペクティブに解析できるため,虚血性心疾患でも気になる症例や,心不全症例を後から解析して見返すなど,臨床にとても役立っています」と話す。
さらに,他院からの紹介検査で採血データがない場合にはSynthetic ECV機能を活用しており,地域医療連携においてもAVW 15が貢献していることがうかがえる。

県内の循環器診療拠点として心臓MRIの知見を発信

放射線科では他診療科と密にコミュニケーションをとりながら,臨床ニーズに応える情報の提供に努めており,今後は心臓MRIと心エコーのストレインの比較検討や,要望の多い4D Flow解析の導入も視野に,AVW 15の活用・検討を進めていくという。
小山部長は今後について,「心臓MRIの安全な実施や解析の実例について,県内の症例検討会や研究会を通じて積極的に発信していきたいと考えています」と展望し,循環器専門施設として蓄積した知見を広く共有しながら,地域医療の中核として心臓MRI診療をさらに発展させていく考えだ。
AVW 15は単なるワークステーション更新にとどまらず,心臓MRIの定量評価,診断精度,業務効率,地域連携を包括的に支える解析基盤として,同センターの診療を新たなステージへと押し上げている。

(2026年7月31日取材)

 

群馬県立心臓血管センター
〒371-0004 群馬県前橋市亀泉町甲3-12
https://www.cvc.pref.gunma.jp

 

    

 

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