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Limelight 医療の明日に向かって

■秋元 聡先生 急逝のお知らせ
秋元聡先生が2009年11月14日(土)の17時46分,脳内出血のため急逝されました。
本連載もまことに無念ですが第19回がご遺稿となってしまいました。 今日までのご愛読に深謝申し上げます。
秋元先生には生前,ひとかたならぬご厚情をいただきましたことに御礼申し上げますとともに,心よりご冥福をお祈り申し上げます。

秋元聡先生
秋元 聡氏
株式会社 Mediwise代表

 
<略歴>
医業経営コンサルタント。病院勤務を経て,株式会社日本医療事務センターに入社し,コンサルティング業務を担当。現在は株式会社Mediwise代表として,医療機関でのコンサルティング,医業経営・介護経営についての講演会や,書籍・雑誌の執筆など多方面で活躍。主な著書『医療機関のためのマンガでわかる「個人情報保護法」対策』『マンガでわかる!「特定健診・特定保健指導」事業の理解と対策』(日本医療企画)。



【最終回】
第19回 進まない改定論議

自民党から民主党への政権交代が実現して以降は,これまでにない事柄が次々と発生している。平成22年4月に実施される予定の診療報酬改定も,その一つだ。前回の20年改定では,10月3日に中医協診療報酬基本問題小委員会が開催され,改定の論点が公表された。つまり,改定論議の“キックオフ”は10月早々に行われていたことになる。診療報酬の検討を妨げている要因は2つ。1つは改定に関わる厚生労働省予算が不明であること。もう1つは,中医協の委員選定が難航していることが挙げられる。

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第18回
後期高齢者医療制度はどこへ向かうのか

先の総選挙は,周知のとおり,民主党の「歴史的圧勝」に終わった。その後,あらゆるマスコミが,民主党のマニフェストを検証し始めている。思えば,従来の選挙後に,政権党の政策(公約)を再確認することなど,我が国にはなかった。その意味では,今回の選挙が“日本の民度”を高めるきっかけになったことは間違いない。選挙後に組閣が発表され,厚生労働大臣には長妻昭氏(民主党)が選ばれた。かつてから「ミスター年金」として,ジャーナリスト経験者らしい,急先鋒な追及で名を馳せた人物である。他の大臣に決定しそうだったところを,“年金はライフワークだから”と直談判し,厚労相に納まったという報道もある。

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第17回
政権交代で医療は変わるか?

総選挙が目前に迫っている。8月18日告示・30日投開票に向け,各政党の「政権公約」であるマニフェストが続々と発表された。従来とは異なり,これほどマニフェストが注目されている選挙はないだろう。我が国が“義理・人情・しがらみに縛られたリーダー選び”から“ビジョンに基づくリーダー選び”へと脱皮する瞬間かもしれない。一般的には「政権選択選挙」と言われているが,各種調査によれば“社会保障政策”が国民の関心のトップに挙げられている。年金・医療・介護に対する不安と不信,そしてこれらを解決できる政策が求められているのである。

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第16回
医療機関経営とコンプライアンス

マスコミ等が大々的に報じているとおり,7月上旬,奈良県の病院で診療報酬の不正受給が発覚した。実施されていない心臓カテーテル検査(以下,「心カテ」。)を,不正に請求したものである。院長,ならびに関与していた医療機器販売会社の社長が,詐欺容疑で逮捕されている。病院は閉院が決定し,入院患者の転院が完了し次第,その幕を下ろすことになるということも報じられた。今月はこの事件について考えてみたい。

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第15回
厚生労働省平成21年度補正予算を斬る

5月21日,衆議院では平成21年度補正予算が成立し,「100年に1度」と言われる不況のなか,その対応策が次々と明らかとなった。その後,2200億円の社会保障費削減が事実上棚上げとなるなど,医療・福祉に関わる見通しも示されている。今回の補正予算は,3年間で約1兆円に上る「地域医療再生基金」を含む,6766億円が医療関連予算として決定したが,内容を見ると,厚生労働省の医療政策の意図をつかむことができるだろう。

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第14回
レセプトオンライン化はどうなるのか

昨年4月の段階で400床以上の病院においてレセプトのオンライン化が実現した。そして本年4月には,さらにオンライン請求が拡大されるはずであった。ところが厚生労働省は,5月8日付で都道府県知事等にあてて,「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令の施行に関する通知」を発表。4月診療分からのレセプトオンライン請求ができない保険医療機関に配慮し,緊急に省令を改正した。

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第13回
期待される「Post acute」 機能

昨年4月から各都道府県で地域医療計画が具体化され,スタートしている。全般的には大きな動きにはなっていないように見受けられるが,厚生労働省の医療機関に対する機能分化・役割分担のアプローチは積極的だ。特に急性期病院においては,DPCの機能評価係数論議を通じた「機能の再定義」は新しい局面を迎えていると言えよう。4月10日のDPC評価分科会では,急性期医療機関を評価するための観点として「DPC対象病院における評価」とともに「急性期入院医療全体における評価」を打ち出している。これらの評価の考え方が,次期診療報酬改定の“骨子”となっていくであろうことは,疑う余地のないことである。

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第12回
変貌を遂げる急性期医療の評価

2010年に予定されている診療報酬改定とDPCの新しい機能係数の導入について,その行方が見え始めてきた。去る3月5日の中医協DPC評価分科会では,新しい病院機能係数の検討事項を整理・公表している。「DPC=急性期医療」と考えてもいい昨今では,この機能係数の内容は「急性期病院が求められる役割と評価の視点」に通じるものと断言できる。厚生労働省は,もともとDPC創設時に「調整係数(=前年度の入院収入を担保するための,医療機関別係数)は2010年に廃止」を明言しており,予定どおりそれに代わる係数が08年から検討されてきた。

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第11回
医師不足の対応策は十分か?

09年1月20〜21日に厚生労働省は「全国厚生労働担当部局長会議」を開催した。その中では,医政局における重点事項の第1点目として,医師不足解消に関わる予算と諸政策が説明された。医師確保対策に関する予算は07年度の92億円,08年度の161億円に引き続き,09年度は272億円が計上された。07年度に比較して,この2年間で約3倍に増加したことになる。

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第10回
介護報酬改定と医療に及ぼす影響

■介護報酬改定のポイント
昨年末の12月26日,社会保障審議会介護給付費分科会が開催され,09年介護報酬改定の内容がほぼ明らかになった。全国の介護施設・事業所では,年明け早々から対応や戦略の練り直しに追われているのではないだろうか。

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第9回
医業未収金と経営管理

■先の見えない「未収金」対策
853億円 − この数は,四病院団体協議会が加盟する5570病院の未収金を推計した金額である。未加盟である病院,さらには診療所を加えれば,我が国の医療機関における未収金の総額は,軽く1000億円を超えると考えられる。2008年診療報酬改定において,診療報酬本体の0.38%プラスにあたる金額が約1000億円と言われている。一時期話題となった「消えた年金」の金額は約950億円である。それを思うと,未収金額の大きさに驚きを禁じ得ない。

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第8回
社会保障国民会議が示す「病床改革」

■社会保障国民会議最終報告の内容
去る11月4日,社会保障国民会議は最終報告を提出し,10か月にわたる協議は終わりを迎えた。10月23日のサービス保障(医療・介護・福祉)分科会では,将来の医療・介護サービス提供体制を検討するためのシミュレーションが公表されたが,その結果を踏まえた最終報告は,まさに“度肝を抜く”と表現していい内容であった。

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第7回
後期高齢者医療制度をめぐって

■悪いのは「制度」か,それとも「運用」か
本年4月にスタートした(はず)の後期高齢者医療制度。半年を経ても定着するどころか,批判は増すばかりである。そこでもう一度,本質に立ち返って考えてみたい。はたして問題点はどこにあるのだろうか。

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第6回
形を変えるDPC

■調整係数廃止論議が進む
この4月のDPC対象病院の拡大は,従来からの360施設に加えて,4月開始が174施設,7月開始が184施設であった。合計718施設が,現在は対象病院として運用されていることになる。経済財政諮問会議は2012年に包括支払対象病院を1000施設まで増加させることを目標としているが,準備病院も約700施設ほど存在していることを考えると,厚生労働省の「急性期病院=DPC」の戦略は着々と進行中であると言っていいだろう。

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第5回
『5つの安心プラン』を斬る

■「5つの安心プラン」とは何か
政府は7月29日,社会保障の機能強化のために実施する緊急対策(「5つの安心プラン」)を公表した。このプランは,(1)高齢者が活力を持って,安心して暮らせる社会 (2)健康に心配があれば,誰もが医療を受けられる社会 (3)未来を担う「子どもたち」を守り育てる社会 (4)派遣やパートなどで働く人が将来に希望を持てる社会 (5)厚生労働行政に対する信頼回復 − となっている。そして項目ごとに,緊急の対策と実施工程を明示した。

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第4回
クリニカルインジケータと医療機関経営

■医療機能情報提供制度とクリニカルインジケータ
平成19年4月,医療法改正にともなって各都道府県では「医療機能情報提供制度」がスタートしている。医療機関の標榜診療科目から専門領域・保有機器,果てはアメニティに関する情報まで,都道府県のホームページを通じて住民に情報を提供しようという制度である。現時点では毎年7月に届け出る病院報告と同様の内容であり,事務職以外のスタッフが情報をまとめるというケースは少ないと思われる。そのため臨床現場では,この制度のことが十分に理解されていないようだ。

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第3回
診療データの提出で,医療はどう変わるのか

■集積される診療データ
約470万件 − 平成19年7月から12月までの間に,厚生労働省が収集したDPCの調査協力データ数である。1428病院から寄せられた総数だが,今後,ますます厚生労働省が持つ診療データは増加していくだろう。DPCに限らず,この4月からは400床以上の病院は電子媒体,あるいはオンライン請求となっている。これからは外来患者のデータも集まってくるのである。果たしてこれらのデータは,どのように使われるのであろうか。

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第2回
医療のIT化と経営戦略

■IT化が進まない3つの理由
“医療へのIT導入”が叫ばれるようになってから久しい。電子カルテや診療報酬のオンライン請求,さらには診療・診断機器の活用など,あらゆる面でITは課題であると同時に必要性自体も高まっている。しかし,現実には厚生労働省の見込みほどIT化は進んでいない。その理由は何であろうか。

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第1回
平成20年度診療報酬改定のポイント - 画像診断,放射線領域を中心に -

2月13日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会では,2008年4月に行われる診療報酬改定について厚生労働大臣からの諮問に対し,答申書を提出した。その後,3月5日には官報告示が行われ,同日,厚生労働省通知が発布されている。今後,疑義解釈などの別途通知が行われるであろうが,昨2007年10月からスタートした改定論議は最終段階を迎えたことになる。

(インナービジョン2008年4月号 より転載)

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