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2023年6月号

がん放射線治療の今を知る!~最前線の現場から No.6

サイバーナイフ治療(1):頭蓋内病変に対する脳神経外科との連携 ~ライナック2台プラス「サイバーナイフ M6」体制に向けて~

野末 政志(聖隷浜松病院腫瘍放射線科部長)

はじめに

1990年代から広まった定位放射線治療(STI)の流れを受けて,当院では2001年に汎用ライナックシステム外付けマイクロマルチリーフコリメータ(m-MLC)を使った頭蓋内病変のSTIを開始した。その後,2.5mm幅MLCを備えたライナックによるSTIなど,地方病院でありながらライナック3台体制となった。
しかし,高精度・高機能な放射線治療が頭蓋内のみならず体幹部のさまざまな部位にまで求められるようになってくると,汎用ライナックのみでは対応が不十分な状況が生まれ,かつ増加してきた。この問題に適切に対応するために導入されたのが,MLCを装備した「サイバーナイフM6」である。初期に導入された汎用ライナックをリプレイスする形で既存の放射線治療室に設置されたため,国内最「狭」のサイバーナイフルームとなっている(図1)。
サイバーナイフの適応は広範囲にわたる。一般に,頭蓋内病変が半数以上を占めるが,地方病院ではそれだけで高性能汎用リニアックへの置き換えに見合った稼働を得ることはできない。近年,肺や肝臓,骨などのSTIを要する病変では,その半分程度でサイバーナイフ治療に優位性があることがわかってきた。当院では,これらを見極めながら,まずは頭蓋内病変の治療を充実させた上で,サイバーナイフのフル稼働をめざしている。

図1 恐らく国内最狭のサイバーナイフルーム

図1 恐らく国内最狭のサイバーナイフルーム

 

脳神経外科協力の下 頭蓋内病変をサイバーナイフで治療

転移性脳腫瘍をはじめとする頭蓋内病変へのSTIを施行するに当たって,当院では,2001年当初から脳神経外科の協力を得ている。手術適応はもちろん,経過観察や追加治療適応判断のすべてにおいてである。しかし,汎用ライナックおよびm-MLCでの放射線治療計画には複雑な面があり,当時の脳神経外科医師の関与は転移性病変以外での肉眼的腫瘍体積(GTV)輪郭描出が主体であった。
現在使用している治療計画装置「Accuray Precision」ならびに治療高速化オプション「VOLO」は,脳神経外科医師にも簡便に使っていただける内容である。アキュレイ社の講習を経た上で,導入直後から線量制約・線量処方なども併せて依頼している。特にGTV/臨床的標的体積(CTV)設定と線量分割に関しては,脳神経外科のポリシーが重要視される。転移性脳腫瘍の場合でも,患者の予後やQOLのバランスを取りつつ,適宜適切にSTIを行うためには,脳神経外科の視点は重要である。MLCに加えて,可変シリンドリカルコリメータ機能を持つIris collimator(IRIS)が選択可能なため,治療時間も短くなり,複数部位への対応も可能な点が脳神経外科に好評である(図2)。

図2 症例:多発転移性脳腫瘍 近在している腫瘍は同時に照射を行う。

図2 症例:多発転移性脳腫瘍
近在している腫瘍は同時に照射を行う。

 

具体的な運用

1.頭蓋内病変の相談窓口は脳神経外科に集約
院外からの紹介はもちろん,院内発生の転移性脳腫瘍も脳神経外科の目を通して治療を行うこととしている。特に転移性脳腫瘍では,高精細MR画像を即日撮像の上,手術適応やステロイドなどの併用の可否を含めた検討の後,放射線治療部門にサイバーナイフ治療の要請が行われる。

2.計画準備は腫瘍放射線科で施行
腫瘍放射線科で,要請当日または翌日に治療準備や患者への治療説明などを行う。同時に,固定具作成や治療計画用CT撮影も行う。さらに,Precision/VOLOでMRフュージョン・正常組織輪郭の描出を行い,その日のうちに脳神経外科に連絡する。

3.治療計画は脳神経外科カンファレンスルームでも可能
脳神経外科医による治療計画は,脳神経外科のカンファレンスルームに設置されたリモートデスクトップの端末からも可能である。セキュリティの面からも操作スピードの面からも問題はない。何より時間を問わず,病棟業務の合間に,複数医師がディスカッションしながら計画を行うことができるのが最大のメリットである。

4.最終確認は腫瘍放射線科と物理部門が行う
パラメータの確認や処方線量の確認・低線量域の広がりなどのチェックも行って,腫瘍放射線科医師が計画を確定する。その後,物理部門での検証や治療装置登録を行う。

5.治療開始日決定は放射線治療部門の看護師が担う
緊急性を要しない病態の場合は,治療開始日時は患者もしくは患者家族などの都合も併せて相談の上,予定を組んでいる。緊急の場合は,当科初診の翌々日~開始可能である。

6.経過観察は脳神経外科で行われる
照射期間中の緊急対応はもとより,転移性脳腫瘍も含め,照射後の長期の経過観察も脳神経外科で行っている。

脳神経外科との連携を考える

当院では,サイバーナイフを汎用ライナック利用に比べて,ワンランク上の特殊機器ととらえている。例えば,多発転移性脳腫瘍は今では汎用ライナックを利用した複数病変同時照射も可能になっており,サイバーナイフでなければならないとは言えない。したがって,ワンランク上の放射線治療が必要な症例に対して,サイバーナイフを地域で簡便に活用できる環境を整えることは導入施設の責任であろう。
また,院外からの紹介は手続きが簡素であることが求められる。紹介くださる医師の目の前の患者に即時対応しなければならない。脳神経外科(または腫瘍放射線科)受診の気安さも重要である。脳神経外科医同士での顔の見える環境下での依頼増加が今後期待される。
良性疾患も多く見られる中枢神経系腫瘍では,手術と放射線治療のすみ分け〜併用を長期にわたって判断しているのが脳神経外科である。脳神経外科の望むタイミングで定位照射が行える環境は,脳神経外科にとって有用ではないだろうか(図3)。
放射線治療部門の柔軟な対応も必須である。中枢神経系疾患は症状が明らかな場合も多く,患者の状態に素早く対応する体制が求められる。そのためには,スタッフの充実と施設の規模はカギとなる。
一方,欠点は脳神経外科医への負担増であろう。脳神経外科医も複数在籍していないと,このシステムの維持は困難である。もし,複数の脳神経外科医が積極的に関与できれば,放射線治療部門からすれば継続的なシステムの運用が可能になる。また,脳神経外科からすれば,科内の研修・指導に利用できる。つまり,両者にとって将来に続く良い関係が構築できると考えている。リモートデスクトップによる院内・遠隔治療計画は,総合病院における脳神経外科医の負担軽減を図った上で,放射線治療に対する理解を深め,より一層放射線治療の利用拡大につながる重要なアイテムだと考えている。

図3 症例:巨大髄膜腫 手術との併用を念頭に経過を観察し,状態に応じて照射を選択する。

図3 症例:巨大髄膜腫
手術との併用を念頭に経過を観察し,状態に応じて照射を選択する。

 

最後に

サイバーナイフのような特殊な機器を,地域で効果的に共用することは簡単ではない。最近では,高精度な汎用ライナックの利用がさまざまな方面で高まっているからである。当院では,高精度な汎用ライナックを使いこなした上で,その一部をサイバーナイフに置き換えた方が,より今の時代に即していると考えた末の導入である。しかし,そのサイバーナイフの一歩進んだメリットを,知識の枠を超えて実感してもらうことは,放射線治療医に対してもなかなか困難であり,むしろ脳神経外科医の方が認識が早い。この点を踏まえても,脳神経外科との連携は欠くことができない。現在の放射線治療は,より有害事象少なく,より限定した領域に,より短期間で行うようになってきている。サイバーナイフはその可能性を広げている。一歩進んだ放射線治療が,地域の患者にとってより有益な選択肢の一つとなるように活動を広げたい。

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