VARIAN REPORT

2021年3月号

人にやさしいがん医療を 放射線治療を中心に No.2

TrueBeam Version 2.7 1台体制で行える放射線治療─HyperArcを含めて

片山 通章(けいゆう病院放射線科)

はじめに

最近の放射線治療は,画像誘導放射線治療(IGRT),強度変調放射線治療(IMRT),定位放射線治療(SRS/SRT)などの高精度放射線治療を行うようになり,1人の患者にかかる治療時間も延長してきている。効率的に高精度放射線治療を行うため,SRS/SRTやIMRTに特化したさまざまな放射線治療装置も登場してきているが,通常の放射線治療装置以外に特化した放射線治療装置を導入するには,病院施設や費用の点でハードルが高くなっている。
バリアン社製リニアック「TrueBeam」は,1台でIGRT,IMRT,SRS/SRTなどの高精度放射線治療を効率的に行うことが可能である。特に,TrueBeam Version2.7から,転移性脳腫瘍に対するSRS/SRTが効率的に実施できる“HyperArc”が搭載されている。本稿では,TrueBeam Version2.7における最新治療技法およびその有用性について報告する。

TrueBeam Version2.7にて導入された新機能について

TrueBeam Version2.7より,“Iterative CBCT”,HyperArcが新たな機能として搭載された。
高精度放射線治療を行うには,直前に画像を取得し,患者の位置変位を計測・修正して治療を行うIGRTが必須である。TrueBeam Version2.7より,IGRTに必要なkVシステムによる位置照合cone beam CT(CBCT)において,散乱補正モデルおよび逐次近似法を用いた画像再構成技術であるIterative CBCT(iCBCT)が搭載された。これにより,画像のノイズの低減および散乱線アーチファクトなどの低減が図られることで,軟組織構造が良好に画像化され,高品質な画像での撮影が可能となった1)図1)。特に,HyperArcでの位置照合時に脳転移病変周囲の脳溝や脳構造を確認できるため,安心して治療を行うことができる。
HyperArcは,バリアン社が開発した転移性脳腫瘍に対するSRS/SRTを簡便に行えるシステムである。強度変調回転放射線治療(VMAT)を発展させたシステムであり,多軌道ノンコプラナーVMATを行うことができる。治療中にカウチアングルを変更しながら,VMATを多軌道で行う方法で,シングルアイソセンタで複数病変への照射が可能である。通常のVMATでも複数病変への治療は可能であるが,最適な治療計画を作成するのは容易でなく,計画の複雑さから治療計画にはかなりの時間を要する。一方,HyperArcには専用のワークフローテンプレートが搭載されており,複雑な操作を行う必要はほとんどなく,治療計画時間の短縮が実現可能である。
実際の治療計画は,まずノンコプラナー角度(最大4アーク)を決定し,その後,コリメータ角度の最適化を行う。また,バーチャル・ドライランにて軌道の事前確認を行い,患者と寝台との衝突を防ぐ。VMATでは理想とする線量分布になるように最適化を行うが,HyperArcでは専用アルゴリズムを用いて最適化を行う。
HyperArcの治療はフルオートメーションで行うことができるが,当院ではセミオートメーションで行っている。患者をセットアップ後に,まずiCBCTを撮影して位置補正を行う。照射開始後,カウチアングルの変更ごとにリニアックグラフィを撮影し,必要に応じて照合結果から再度の位置補正を行う。フルオートメーションでの治療は15分程度で終了するようであるが,セミオートメーションでも30分以内には終了する。
HyperArcで最も有用な点は,複数病変に対して簡便な治療が可能なことである。HyperArc専用のワークフローテンプレートで,平均数時間程度にて治療計画作成を行うことができる。実際の治療は転移の個数と関係なく30分以内で終了でき,治療装置の占有時間も少ない。また,HyperArcには標的腫瘍間や正常組織への線量を低減させるツールである“SRS-NTO”が搭載されている。これを使用することで標的病変への線量集中性が高くなり,サイバーナイフにも匹敵する治療が可能となる2),3)。特に,脳転移は他部位に再発を来すことが多く,再治療が必要となることも多い。正常脳線量の低減は,再発病変に対して再度SRS/SRTを行う場合に有利となる。

図1 Standard CBCTとiCBCTの比較 a:standard CBCT b:iCBCT

図1 Standard CBCTとiCBCTの比較
a:standard CBCT b:iCBCT

 

当院におけるTrueBeamの運用の実際

当院は2019年12月にTrueBeamを導入し,2020年4月よりHyperArcを開始した。当院の放射線治療装置は,食道がんなどの広範囲の放射線治療も行うため,マルチリーフコリメータはMillennium120 MLC(5mmリーフ40枚+10mmリーフ20枚)を導入している。そのため,HyperArcに関しては,5mm以下の病変については線量検証の点から線量や安全性が担保されない可能性があるため治療は行っていない。HyperArcの治療時には,臨床的標的体積(CTV)に対して1mmのマージンを付けて計画的標的体積(PTV)を設定しているため,実際には最低7mmのPTVに対して線量処方を行っている。5mm以下の病変に関しては,経過観察のMRIで増大時に再度SRS/SRTを検討する方針としているが,放射線治療後に分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が使用されているためか,それらが増大して再治療となった症例はまだ見られていない。HyperArcに関してはこれまで9例に行い,照射した最大個数は
12病変であった(図2)。それらの検証に関しては,いずれも絶対線量検証にて線量誤差3%以内,線量分布検証にて3%/2mmのガンマパス率90%以上を得られている。

図2 HyperArcでの治療の一例(肺がん・脳転移) a:4アークでのHyperArc b:線量分布図 c:治療前のMRI(ガドリニウム造影T1強調画像) d:治療終了5か月後のMRI(ガドリニウム造影T1強調画像) PTV-D98%,35Gy/5回の治療を12か所に行った例。5か月後のMRIで病変の縮小,消失および内部の壊死が認められた。

図2 HyperArcでの治療の一例(肺がん・脳転移)
a:4アークでのHyperArc
b:線量分布図
c:治療前のMRI(ガドリニウム造影T1強調画像)
d:治療終了5か月後のMRI(ガドリニウム造影T1強調画像)
PTV-D98%,35Gy/5回の治療を12か所に行った例。5か月後のMRIで病変の縮小,消失および内部の壊死が認められた。

 

おわりに

TrueBeamは,SRS/SRT,IMRTなどの高精度放射線治療を効率的に行えるため,以前の装置と比べて1日に行える症例数は変わらずに,より高精度な治療を行えるようになった。特にVersion2.7より搭載された新機能であるiCBCTおよびHyperArcは,IMRTやSRS/SRTを効率的に行うのに有用なツールと考えられる。

●参考文献

1) Gardner, S.J., Mao, W., Liu, C., et al. : Improvements in CBCT image quality using a novel iterative reconstruction algorithm : A clinical evaluation. Adv. Radiat. Oncol., 4(2) : 390-400, 2019.
2) Slosarek, K., Bekman, B., Wendykier, J., et al. : In silico assessment of the dosimetric quality of a novel, automated radiation treatment planning strategy for linac-based radiosurgery of multiple brain metastases and a comparison with robotic methods. Radiat. Oncol., 13(1) : 41, 2018.
3) Ueda Y., Ohira, S., Yamazaki, H., et al. : Dosimetric performance of two linear accelerator-based radiosurgery systems to treat single and multiplebrain metastases., Br. J. Radiol., 92(1100) : 2019004, 2019.

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