VARIAN RT REPORT

2026年9月号

人にやさしいがん医療を放射線治療を中心に No.35

バリアン社製リングアプリケータの臨床評価とコミッショニングについて

バリアン社製3Dリングアプリケータの臨床評価
─子宮頸がんに対する初期使用経験を中心に─
泉  佐知子(東京都立多摩総合医療センター放射線科)

子宮頸がんに対する小線源治療では,腫瘍が左右・背腹に偏在する症例も多く,organ at risk(OAR)の線量制約を順守する必要があることから,腔内照射単独では満足な線量分布を作成できない場合がある。当院では,2025年11月の高線量率密封小線源治療装置「BRAVOS」(バリアン社製)導入に伴い,3Dリングアプリケータの使用を開始した。本アプリケータの特徴は,リング内周への円周状線源配置に加え,タンデムのフランジおよび付属キャップを介した組織針刺入が可能な点にある。タンデムは樹脂製で角度は30°のみであり,金属製に比して径が太い。フランジは固定式であるため,子宮内腔の長さに応じてタンデム長を選択する必要がある(図1)。リング幅は36mm,キャップ装着時は42mmであり,十分な腟展開が可能な症例が適応となる。

図1 BRAVOS用3Dリングアプリケータの外観

図1 BRAVOS用3Dリングアプリケータの外観

 

臨床的に本アプリケータが有用だったのは,前唇優位で膀胱浸潤を認め,子宮背側にS状結腸が近接していた症例である。フランジ腹側2点の組織針と停留点調整により,膀胱側の腫瘍線量を確保しつつ,S状結腸の線量を抑えた分布を作成できた(図2)

図2 前唇優位病変に対する線量分布

図2 前唇優位病変に対する線量分布
フランジ腹側2点の組織針と停留点調整により,標的の線量を確保した上で,S状結腸線量を低減することが可能

 

一方,課題が見られたのは,後唇優位で軽度側方進展を伴う症例である。頸管拡張が不十分な状態でタンデムを挿入したところ,子宮が頭側へ押し上げられ,リングと外子宮口の密着不良からair gapを生じた。そのため次回の治療では,ラミナリア留置と子宮頸管拡張器(ヘガール型)により頸管拡張を行った。組織針刺入時には腹部エコー下で子宮を圧迫しつつリングを外子宮口へ密着させる補助操作が重要であり,これを怠ると針によるair gapを生じやすい点にも注意を要する(図3)。また,本アプリケータではフランジの穴から組織針を刺入するため,十分な視野の確保が必要である。当院では,仙骨麻酔による鎮痛・静脈麻酔での鎮静下でLサイズ以上のクスコや櫻井式クスコを使用するなどで対応している。

図3 Air gapを生じた症例

図3 Air gapを生じた症例

 

以上より,本アプリケータの利点は,腫瘍の左右・背腹の偏在に応じて線量分布を調整しやすいこと,リング状の線源配置により膀胱・直腸・消化管を避けた計画を立てやすいこと,さらに経腟的組織針留置を比較的容易に併用できることが挙げられる。特に,線源停留点や組織針の刺入部位を選択することで,線量分布を柔軟に変えられることは大きな利点である。一方で,タンデム角度が30°固定のため,子宮屈曲例では挿入困難となりうるほか,十分な腟展開を要するため,アプリケータが挿入可能かどうかの事前検討が必要である。また,組織針刺入時に圧迫操作を必要とすることや,線源配列が円形軌道となるため,半円形軌道のアプリケータとはコミッショニングの特性が異なる点にも留意が必要である。こうした課題はあるものの,文献的にもリング型アプリケータはオボイドと比較して標的被覆とOAR線量低減の両立に有利とされている1)〜3)。当院の初期経験からも,腟進展が良好で腹背側方向への分布拡張を要する症例では,有用な選択肢になりうると考えられた。

●参考文献
1)Kilar, C.R., et al. : Selection of hybrid applicators for adaptive cervical cancer brachytherapy : A practical guide. J. Contemp. Brachytherapy, 17(6): 390-399, 2025.
2)Gursel, S., et al. : A comparison of tandem ring and tandem ovoid treatment as a curative brachytherapy component for cervical cancer. J. Contemp. Brachytherapy, 12(2): 111-117, 2020.
3)Bonala, S., et al. : Randomized comparison of tandem-ring versus tandem-ovoid applicators in volume-based brachytherapy for cervical cancer : Dosimetric analysis and early clinical outcomes. Brachytherapy, 25 : 424-431, 2026.

 

バリアン社製リングアプリケータのコミッショニングの実際
─フィルム法とCT法を用いた線源位置評価─
酒井 海渡(がん・感染症センター都立駒込病院放射線治療科放射線物理室)

はじめに

前勤務先である多摩総合医療センターでは,バリアン社製高線量率密封小線源治療装置「BRAVOS」およびリングアプリケータの導入に当たり,コミッショニングを実施した。同社のリングアプリケータは,放射線治療計画装置の線源位置モデルを実際の停留位置へ調整することが必要となる。また,経路が彎曲しているため,線源ワイヤに張力が生じ,実際の線源軌道が内腔中心より偏位する。そのため,線源交換後に,線源位置測定を行うことを推奨している。本稿では,同社の2種類のリングアプリケータ(以下,Ringおよび3D Ring)を対象に,多摩総合医療センターで実施したコミッショニングを紹介する。

リングアプリケータのコミッショニングについて

コミッショニング項目として,「線源位置同定法の評価」と「測定方向の検討」を行った。対象はRingおよび3D Ringの2種類とした。線源位置同定法は,本線源をCT撮影するCT法と,本線源をラジオクロミックフィルム上に停留させるフィルム法を用いて評価を行った(図1)。フィルム法では,電子線を用いてリング外形をフィルム上に描出後,本線源を停留させた。隣接する線源像の重なりを避けるため,停留点を奇数群と偶数群に分けて照射し,各画像から線源位置を同定した。CT法では,アプリケータを同室CTの撮影中心に設置し,本線源を順次停留させて各停留点で撮影し評価した。線源停留点は,第2停留点から5mm間隔で17点とし,停留点位置の安定のため,第1停留点に0.3秒固定で停留させた1)。各線源位置について,両手法で同定した座標間の二次元ベクトル差を算出した。両手法で同定した17点の座標差はRingで平均0.3mm,3D Ringで平均0.2mm,最大値は0.4mmであった(図2)

図1 フィルム法とCT法を用いたコミッショニングの概要

図1 フィルム法とCT法を用いたコミッショニングの概要

 

図2 Ringおよび3D Ringにおける線源停留位置の比較

図2 Ringおよび3D Ringにおける線源停留位置の比較

 

測定方向による線源位置の検討

リングアプリケータは,彎曲構造を線源が移動するため,設置方向によって線源位置が変化する可能性がある。そこで,アプリケータを横,縦方向に設置し,線源位置を評価した。横方向では,第2,4停留点の位置シフトが5回の反復測定中2回で認められたが,縦方向では位置のシフトが認められなかった(図3)。アプリケータの設置方向により,線源位置が変化する可能性が示唆された。

図3 アプリケータ設置方向による線源位置の変化

図3 アプリケータ設置方向による線源位置の変化

 

おわりに

リングアプリケータは,線源ワイヤの剛性,アプリケータ内での接触状態,線源ワイヤの後退動作などが複合的に関与している可能性があり,再現性を確認することが重要である。

●参考文献
1)Aldrovandi,L.G., et al. : Position-Dependent Offset Corrections for Ring Applicator Reconstruction in Cervical Cancer Brachytherapy. J. Appl. Clin. Med. Phys., 26(6): e70079, 2025.

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