VARIAN REPORT

2019年9月号

がん医療における放射線治療最前線 No.5

TrueBeamおよびHalcyonの画像誘導放射線治療(IGRT)の機能について

松本賢治(近畿大学病院中央放射線部)

はじめに

画像誘導放射線治療(image guided radiotherapy:IGRT)は,IGRT機器を用いて位置照合を実施することにより照射位置精度を向上させるための技術であり,現在の放射線治療では必要不可欠となっている。特に,定位放射線治療や強度変調放射線治療などの高精度放射線治療においては,空間的線量分布がターゲットに対して限局されるため,より高い照合精度が要求される。近年,各社より提供されている直線加速器(リニアック)にはIGRT機器が標準搭載されるようになり,2010年4月に「画像誘導放射線治療加算」として保険収載されて以来,IGRT導入施設が増加し,多くの施設で用いられている。IGRTを安全に実施するためには,各施設で定期的な品質管理(quality control:QC)および品質保証(quality assurance:QA)を行うことが重要であり,ガイドラインなどによる指針が示されている1)〜3)。医療法施行規則の一部を改正する省令が2019年3月11日に公布され,医療被ばくの線量管理の実施が掲げられており,現在のところ,IGRT線量は管理対象にはなっていないが,今後は被ばく線量の最適化について,放射線治療においても検討が必要であると考える。
本稿では,「TrueBeam」および「Halcyon」(共にバリアン社製リニアック)に搭載されているIGRT機器の特徴について述べるとともに,cone beam computed tomography(CBCT)の撮影条件における当院での取り組みについて報告する。

TrueBeamおよびHalcyonのIGRTシステムについて

汎用型のリニアックであるTrueBeam(図1 a)は,2種類のIGRTシステムを搭載している。electronic portal imaging device(EPID)を用いたmegavoltage(MV)のX線画像,および「On Board Imager」(OBI)を用いたkilovoltage(kV)のX線画像による2D照合が可能である。また,OBIではCBCTの撮影も可能であり,骨および軟部組織に対する3D照合が可能となる。OBIを用いたCBCTの撮影時間は,体幹部の撮影で約60秒となる。バリアン社のIGRT機器は,その照合精度を担保するため,IsoCal phantomを使用したIGRT中心軸のキャリブレーションの定期的な実施が必須である。
リング形状の新型リニアックであるHalcyon(図1 b)は,TrueBeamと同様に2種類のIGRTシステムを搭載している。「Digital Megavoltage Imager」(DMI)を用いたMVのX線による2D照合もしくはCBCT照合が可能である。また,kV用のkV DMIを用いたCBCT照合も可能となっている。被ばく線量が少なく3D照合が可能なkV CBCTが,基本的に第一選択となる。体幹部領域におけるkV CBCTの撮影時間は最短で16.6秒であり,TrueBeamの約1/4に短縮されている。また,“Iterative CBCT”(i-CBCT)と呼ばれる再構成方式〔Acuros CTS(Computed Tomography Scatter)およびStatistical reconstruction〕を採用しており,軟部組織の画質が大きく向上している(図2)。Halcyonは,必ずCBCTによる照合を行わなければ照射を行うことができないシステムとなっており,IGRTの積算線量はほかのリニアックに比べて高くなる可能性があることに注意しなければならない。また,必然的に治療と同じ回数分のCBCT画像が発生するため,CBCTを利用した線量計算に基づく適応放射線治療(adaptive radiotherapy)4)のルーチン化が実現可能となる。

図1 TrueBeam(a)とHalcyon(b) (画像提供:株式会社バリアンメディカルシステムズ)

図1 TrueBeam(a)とHalcyon(b)
(画像提供:株式会社バリアンメディカルシステムズ)

 

図2 前立腺治療患者におけるCBCTとi-CBCTの比較 (画像提供:株式会社バリアンメディカルシステムズ)

図2 前立腺治療患者におけるCBCTとi-CBCTの比較
(画像提供:株式会社バリアンメディカルシステムズ)

 

CBCT撮影条件の最適化について

TrueBeamおよびHalcyonのCBCTの撮影条件には,それぞれデフォルト値が設定されており,骨盤領域の撮影条件でそれぞれTrueBeam:125keV,1040mAs,CTDI 16.0mGy,Halcyon:125keV,504mAs,CTDI 10.08mGyとなっている。医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME)の策定した診断参考レベル(DRLs2015)の胸部骨盤1相におけるCTDIvolは18.0mGyとなっており,CBCTの撮影回数を考慮すると大きな乖離が生じているのが現状である。IGRTの主たる目的はターゲット位置の照合であり,照合精度を担保しうる必要最低限の撮影条件でIGRTを行うことは,ALARA(As Low As Reasonably Achievable)の法則の観点においても重要である。適切なCBCTの撮影条件を検討するため,各リニアックのCBCT撮影条件に対してCatphan 504とQAソフトウェア“DoseLab”(バリアン社)を用いてCBCTの画質評価を実施した(図3)。
TrueBeamの解析結果を図4に示す。CTDI値はmAs値に比例するが,照合精度に影響するノイズ成分は,デフォルト値の1040mAsと540mAsの条件間では約0.2の差となり,大きな画質の変化は生じない結果であった。したがって,TrueBeamではCBCTの被ばく線量を考慮し,mAsのデフォルト値の変更が望ましい。540mAsよりも低い撮影条件を採用する場合は,ノイズ成分が大幅に増加するため,照合精度の低下に注意が必要である。
Halcyonではi-CBCTを用いることで,ノイズはCBCTの約半分に減少する結果となった(図5)。728mAsで撮影したCBCT画像のノイズが0.76であったのに対し,280mAsで撮影したi-CBCT画像のノイズは0.56となりi-CBCTを用いることで被ばく線量の大幅な低減が可能となる。しかし,現状では,Halcyonは撮影条件のデフォルト値の変更ができないため,患者の治療時に設定値の変更が必要である。今後のバージョンアップでの対応に期待したい。

図3 Catphan 504とCTP404解析モジュール

図3 Catphan 504とCTP404解析モジュール

 

図4 TrueBeamにおけるCBCT撮影時のmAs値に対するノイズ成分とCTDIの変化

図4 TrueBeamにおけるCBCT撮影時のmAs値に対するノイズ成分とCTDIの変化

 

図5 HalcyonにおけるmAs値に対するCBCTおよびi-CBCT撮影時のノイズ成分とCTDIの変化

図5 HalcyonにおけるmAs値に対するCBCTおよびi-CBCT撮影時のノイズ成分とCTDIの変化

 

まとめ

バリアン社のIGRT機器は,高い照合精度を実現するに十分な機能を有している。IGRTは,放射線治療の精度を担保するため必須の技術であるが,被ばく線量の対応に関しては十分とは言えない。撮影条件の最適化を各施設で検討しなければならない。i-CBCTの再構成関数は,現在では頭部および骨盤部の撮影条件にのみ適応となっているため,肺野領域に対する開発が待たれる。

●参考文献
1)Klein, E.E., Hanley, J., Bayouth, J., et al., American Association of Physicists in Medicine : Task group 142 report ; Quality assurance of medical accelerators. Med. Phys., 36・9, 4197〜4212, 2009.
2)画像誘導放射線治療臨床導入のためのガイドライン(IGRTガイドライン). 2010.
https://www.jastro.or.jp/customer/guideline/2016/10/IGRT.pdf
3)放射線治療かたろう会IGRT QA/QC WG report. 2012.
http://katarou-kai.kenkyuukai.jp/information/
4)石川一樹, 西村保昌. : SmartAdaptを使用した適応放射線治療について. INNERVISION, 34・5, 100〜101, 2019.

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