VARIAN REPORT

2019年5月号

がん医療における放射線治療最前線 No.3

SmartAdaptを使用した適応放射線治療について

石川一樹/西村恭昌(近畿大学医学部放射線腫瘍学部門)

はじめに

近年,放射線治療機器および治療計画装置の進歩に伴い,標的に対する線量集中や,脊髄や耳下腺などのリスク臓器への線量低減が可能となっている。これらを実現する照射方法として強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:IMRT)がある。広く用いられているsimultaneous integrated boost(SIB)法IMRTでは,1回の照射で多段階線量の照射が可能である。例えば,原発巣やリンパ節転移に2Gy,周囲の高リスク領域に1.8Gy,予防的リンパ節領域に1.6Gyといった照射ができるため,理論上は一度の治療計画で最終まで照射可能である。ただし,治療期間中に腫瘍やリスク臓器の縮小・偏位が起こるため,腫瘍やリスク臓器に対する線量が変化する1)
そこで当院では,照射期間中に一度の再計画を行うtwo-step法IMRTを行ってきた2)。通常照射で行ってきたように,まずは予防的リンパ節領域を含めた状態で標的全体に1回2Gyで46〜50Gy照射を行う(以下,イニシャルプラン)。30〜40Gyの時点で治療計画用CTを撮影し,再計画を行う。原発巣やリンパ節転移に絞って20〜24Gy照射することで,計66〜70Gyの照射を行う(以下,ブーストプラン)(図1)。two-step法の利点は,腫瘍やリスク臓器の縮小・偏位に合わせて治療を行える点であり,これは適応放射線治療(adaptive radiotherapy)の一つである。問題としては,至適なタイミングでの再計画が行えているかという点と,2回の治療計画を行うため時間がかかる点がある。これらの解決方法として,バリアン社の放射線治療計画装置「Eclipse」に搭載されている“SmartAdapt”を用いている。SmartAdaptは,deformable image registration(DIR)アプリケーションである。同一患者の異なる時期のCT画像を変形させることで,形状を一致させる技術である。CT画像に合わせてコンツーリングも変形するため,標的や各臓器の変形を確認することができる3)〜5)

図1 Two-step法IMRT(右扁桃がんの一例)

図1 Two-step法IMRT(右扁桃がんの一例)

 

治療室内CTとSmartAdaptを用いた再治療計画の至適タイミングの検討

当院では,2015年10月にバリアン社製の「TrueBeam with ExacTrac」を導入した。これにより治療室内でコーンビームCTを撮影することが可能となり,治療途中の標的や,リスク臓器の形状や位置を確認することができるようになった。頭頸部がんにおいては日々の位置照合をExacTrac(直交2門kV-X線)で行い,週に1回(照射5回に1回)のペースで治療室内CTを撮影している(図1)。SmartAdaptを用いると,治療前に撮影したイニシャルプラン用CTのコンツーリングを週1回の治療室内CTに合わせて変形させ貼り付けることが可能である。また,治療室内CT上でイニシャルプランを再計算することで,標的体積やリスク臓器の体積変化や線量変化が計測可能となる。
当院にて化学放射線療法を行った中咽頭がん10例について,照射期間中の体輪郭変化や線量変化を治療室内CTとSmartAdaptを用いて計測し,two-step法IMRTにおける再治療計画時期の妥当性について後ろ向き検討を行った。治療計画CTで用いたコンツール〔計画標的体積(PTV),脊髄,体輪郭〕を治療室内CT上にSmartAdaptを用いて変形させ貼り付けた。そのまま貼り付けた場合は位置ズレが生じるが,Smart Adaptを用いることで変形に応じたコンツールの貼り付けが可能である(図2)。貼り付けたコンツールはほぼ修正なく利用が可能であった。その後,イニシャルプランを治療室内CT上で再計算し,PTV-D98/D50/D2と脊髄最大線量を測定した。治療室内CTの撮影範囲は,初期設定では頭尾側17cm程度であり,PTVや照射範囲全体の体積や線量が評価できなかったため,今回はアイソセンタ面のみでの体輪郭面積および線量を評価した。照射1日目の治療室内CTからの変化率の平均値を検討した。1週目から5週目までの体輪郭の変化率は100%,97%,97%,96%,96%と減少傾向で,脊髄最大線量は100%,101%,102%,101%,104%と増加傾向であり,それらに逆相関関係が見られた(r=−0.47)。PTV-D98は100%,99%,99%,99%,98%,PTV-D50は100%,100%,100%,100%,100%,PTV-D2は100%,100%,100%,100%,100%とPTV内の線量変化は小さかった。5%以上の線量変化は,4週目の脊髄最大線量で10例中8例に見られ,5週目のPTV-D98・D2でそれぞれ1例ずつ見られた。後ろ向き検討の時点では治療室内CTによる撮影範囲の制限があったため,現在TrueBeamに搭載されているMulti-scan CBCTを用いて撮影範囲を2倍にし,頸部全体の体積変化や腫瘍・各リスク臓器全体の線量変化などを前向きに検討している。

図2 SmartAdaptを用いたコンツールの貼り付け aは治療計画用CT,bは5週目の治療室内CTへコンツールをそのまま貼り付け,cはSmartAdaptを用いてコンツールを貼り付け。治療室内CTでは体輪郭および耳下腺が縮小しており,そのままの貼り付けではコンツールが体外へ飛び出している(b)。Smart Adaptを用いることで,変形に合わせたコンツールの貼り付けが可能となる(c)。

図2 SmartAdaptを用いたコンツールの貼り付け
aは治療計画用CT,bは5週目の治療室内CTへコンツールをそのまま貼り付け,cはSmartAdaptを用いてコンツールを貼り付け。治療室内CTでは体輪郭および耳下腺が縮小しており,そのままの貼り付けではコンツールが体外へ飛び出している(b)。Smart Adaptを用いることで,変形に合わせたコンツールの貼り付けが可能となる(c)。

 

SmartAdaptを用いた再治療計画

two-step法の問題点として,再治療計画に時間を要する点を挙げた。IMRTにおいては,コンツーリングとプランニング(特に最適化)それぞれに時間がかかる。そこで当院では,ブーストプランのコンツーリングにSmartAdaptを用いている。イニシャルプランで作成したリスク臓器のコンツールを用いることで,かなりの時間短縮を図ることができる。脊髄や脳幹ではほとんど変形がないため,そのまま貼り付け・移動でも問題ないことが多いが,耳下腺では耳下腺自体の縮小もあるため,SmartAdaptが威力を発揮する(図3)。当院ではtwo-step法のため,イニシャルプラン・ブーストプランでそれぞれCTV・PTVを作成しているが,SIB法IMRTではこれらCTV・PTVにおいてもSmartAdaptが使える。
また,最適化の時間短縮には,過去の治療計画を活用する技術である“RapidPlan”の検討を現在行っている。従来のIMRTにおける最適化は,基準となる線量制約内に収まるよう症例ごとに標的・リスク臓器への線量や優先度などのパラメータを入力し,計算結果を確認した後にパラメータを修正するという作業を繰り返し行っており,数時間を要していた。RapidPlanは,これまでに自施設で行われた数十例のIMRTプランにおける線量体積ヒストグラム(DVH)を解析することで,新規症例における最適化時のパラメータを自動で提示してくれる機能である。当院では,前立腺がんと頭頸部がんにおいてRapid Planモデルの作成が終了し,実用性について解析中である。また,最新のEclipseでは,graphics processing unit(GPU)を用いた計算速度の向上や,最適化計算後に標的ごとの優先度を変更することができるmulti-criteria optimization(MCO)が搭載されている。これらの技術を用いると,プランニングの時間は大幅に短縮できる。

図3 SmartAdaptを用いたブーストプランへのコンツールの貼り付け aはイニシャルプランコンツール,bはブーストプラン用CTへのイニシャルプランコンツールの貼り付け,cはSmartAdaptを用いたコンツールの貼り付け。臨床標的体積(CTV),PTVは再コンツール。

図3 SmartAdaptを用いたブーストプランへのコンツールの貼り付け
aはイニシャルプランコンツール,bはブーストプラン用CTへのイニシャルプランコンツールの貼り付け,cはSmartAdaptを用いたコンツールの貼り付け。臨床標的体積(CTV),PTVは再コンツール。

 

まとめ

SmartAdaptを用いて体輪郭面積の変化や標的・リスク臓器線量の変化を測定した結果,4〜5週目での再治療計画が必要であることがわかった。Rapid Planを併用することで治療計画時間は短縮され,患者ごとに適切なタイミングでの再治療計画が可能となる。今後は2回以上の再治療計画(multi-step法IMRT)も必要と考えている。
個々の患者に合わせた適応放射線治療を行っていく上で,SmartAdaptは今後ますますの利用価値があると考える。

●参考文献
1)Nishi, T., Nishimura, Y., Shibata, T., et al. : Volume and dosimetric changes and initial clinical experience of a two-step adaptive intensity modulated radiation therapy(IMRT)scheme for head and neck cancer. Radiother. Oncol., 106・1, 85〜89, 2013.
2)Nishimura, Y., Shibata, T., Nakamatsu, K., et al. : A two-step intensity-modulated radiation therapy method for nasopharyngeal cancer ; The Kinki University experience. Jpn. J. Clin. Oncol., 40・2, 130〜138, 2010.
3)Brouwer, C.L., Steenbakkers, R.J., Langendiik, J.A., et al. : Identifying patients who may benefit from adaptive radiotherapy ; Does the literature on anatomic and dosimetric changes in head and neck organs at risk during radiotherapy provide information to help? Radiother, Oncol., 115・3, 285〜294, 2015.
4)García-Mollá, R., de Marco-Blancas, N., Bonaque, J., et al. : Validation of a deformable image registration produced by a commercial treatment planning system in head and neck. Phys. Med., 31・3, 219〜223, 2015.
5)Ramadaan, I.S., Peick, K., Hamilton, D.A., et al. : Validation of Varian’s SmartAdapt deformable image registration algorithm for clinical application. Radiat. Oncol., 10 : 73, 2015.

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