VARIAN REPORT

2020年1月号

がん医療における放射線治療最前線 No.7

「TrueBeam」のQA支援ツールにおける新たなイノベーション ~Machine Performance Checkの可能性~

庭山 洋(一般財団法人太田綜合病院附属太田西ノ内病院放射線部)

はじめに

近年の放射線治療は,多くの高精度放射線治療(画像誘導放射線治療,強度変調放射線治療,定位放射線治療など)が行えるようになり,さらに,高エネルギーX線の線質も多様化してきた。このため,品質保証(Quality Assurance:QA)項目が増加し,スタッフの負担が増大しているのが現状である。このQAをより簡潔に,多くの測定器を必要とせず,短時間で行え,自動で結果を解析・管理してくれるシステムが,バリアン社製リニアック「TrueBeam」のQA支援ツール“Machine Performance Check(MPC)”である。
また,複数個ある頭蓋内腫瘍の定位放射線治療を簡便かつ効率的に実施可能なソリューションである高分解能4π放射線治療“HyperArc”を,2019年5月に当院にて国内初の臨床使用を開始した。HyperArcは,治療の中心(isocenter)がターゲットの中にない治療(off-isocenter)のため,従来のisocenterベースのQAでは把握できない誤差が生じる可能性がある。さらに,HyperArcは,off-isocenterかつ複数の断面からの照射であるため(図1),特に装置の精度が重要になる。このHyperArcに対応する高精度なQA支援ツール“Enhanced Couch”と“Enhanced MLC Check”もTrueBeam Ver.2.7からMPCに追加され,QA支援に関しても簡便かつ効率的なソリューションとなった。本稿では,TrueBeamに搭載されているMPCの結果と有用性を報告する。

図1 HyperArcの三次元イメージ

図1 HyperArcの三次元イメージ

 

TrueBeamのMPCについて

MPCは,始業開始前に装置の幾何学的特性やビームの不変性がメーカーの仕様内であることを確認するためのツールである。MPCは,寝台の定位置にIsoCalファントムを設置後(図2),イメージ系と相関を取りながら自動で実効中心を算出し,装置精度を算出する。MPCの目的は,TrueBeamが仕様内で動作することを毎日手軽に確認することである。MPCの確認項目は多岐にわたり,当院における従来のDaily QAおよび,Weekly QAやMonthly QA,6か月点検,Annual QAで行ってきた多くの項目も含まれている。このため,毎朝のMPCを行うことで,年間のQA時間を大幅に削減でき,スタッフにやさしいQA支援ツールとなっている。許容値を厳しくすることで,メーカー仕様内の精度の担保だけではなく,各施設の治療に合わせた精度の確認も可能である。回転照射のMLC試験に関しては別途行っている。

図2 MPCの様子

図2 MPCの様子

 

HyperArc対応の新しいQAについて

当院におけるQAでは,治療室内に設置されたレーザーを幾何学的中心や治療ビームの実効中心に合わせることで,レーザーを基準とした精度確認の方法を行ってきた。しかし,レーザーにも日々の変動があり,誤差が生じてしまう。TrueBeamは,装置を0.1mm単位の高精度で管理しているため,装置に対して大きいレーザーの変動がQA結果に与える影響は少なくない。このため,MPCはレーザーを使用せず,寝台の決めた位置をリファレンスとし,常にその位置にファントムを設置することで,レーザーに依存しないQA支援を可能とした。使用ごとに治療ビームの実効中心を自動で算出し基準とするため,使用者による差も少なく,傾向の把握にも有用である。
さらに,MPCにはHyperArcのための寝台回転対応のEnhanced Couch(ノンコプラナー照射を想定し,寝台回転の最大可動域Couch Angle±90°,Pitch&Roll 3°と装置,MLC,Jaw,イメージング系などの幾何学的チェック)が追加されたため,当院では,従来のStandard Couch(Couch Angle±10°)に代えて毎朝のQA支援として行っている。バリアン社では,TrueBeamの幾何学的精度を算出し,ガントリ,コリメータおよび寝台の各回転軸の中心を調整する作業を実施するための「ISOLOCK」(図3)を用いた試験がある。ISOLOCKは,バリアン社エンジニア専用のツールであり,通常は受け入れ試験前の現地調整時や日々のQAで幾何学的精度が低下した時に行われるため,使用が限られてしまう。なお,当院におけるISOLOCKの結果(表1)と,MPCのEnhanced CouchとStandard Couch,および,ISOLOCKの精度の相関を図4に示す。
2017(平成29)年10月に,受け入れ試験前にISOLOCKで精度を確認し,メーカーにて調整を行った。その1か月後,当院のQAによりズレが見られるようになったため,定期的にISOLOCKを行い,傾向を確認した。1年半後のISOLOCK(7回目)では,メーカーのスペックを超えたため再度メーカーにて調整を行った。その際,これまでのISOLOCKは非荷重(患者が寝ていない状態)で行っていたが,実際の治療では荷重状態で装置が稼働することになるため,7回目のISOLOCKの際には荷重をかけた試験も行った(weight)が,TrueBeamは荷重の有無による精度の低下は見られなかった(表1)。HyperArc開始前の8回目,開始後の9回目のISOLOCKの結果では,許容値内であり,ズレも安定傾向になった(表1)。

図3 ISOLOCK

図3 ISOLOCK

 

図4 ISOLOCKとEnhanced CouchおよびStandard Couchの精度の相関

図4 ISOLOCKとEnhanced CouchおよびStandard Couchの精度の相関

 

表1 ISOLOCKの結果

表1 ISOLOCKの結果

*1:Gantry_Colli Error
ガントリ45°ごとに,コリメータ45°ごとのイメージを取得する(9 Gantry Angle× 7 Collimator Angle=63images)。取得したイメージからガントリ/コリメータの中心を導き出し,その中心から最も大きな誤差値を示している(半径0.5mm以下)。
(1) 9つのガントリ角度ごとのコリメータ回転中心座標の中心をコリメータ回転中心座標とする。
(2) そのコリメータ回転中心座標とBallの関係からガントリのSagとTiltを算出し,その値からGantry-Collimator Errorを計算している。
(3) SagとTiltのエラーが最小になる座標にBallを配置する(Ballの位置はGantry-Collimator Errorに影響を与えない)。
*2:Couch Error
ガントリ0°で,カウチ15°ごとにイメージを取得する(13images)。カウチ角度ごとにパネルに投影されるBall中心位置からガントリ0°におけるGantry-Collimator Isocenterまでの距離を測定し,その最大差をCouch Errorと定義している(通常はカウチ90°付近か270°付近が最大Couch Errorのカウチ角度になる。スペックは特になし)。Ballの位置は結果に影響するため,Gantry-Collimator Errorのテスト項目でBallをGantry-Collimator Errorが最小となる座標に配置する。
*3:Total Error
Gantry_Collimator Error + Couch Error(半径0.75mm以下)

 

MPCのEnhanced Couchの結果は,ISOLOCKと同様な傾向を示した。このため,Enhanced Couchで0.7mmを超えた場合,スペックアウトしている可能性が高いため,ISOLOCK試験を行わず,機械の調整の準備に移行してもよいと考えられる。Enhanced Couchは,トータルの誤差だけでなく,ガントリ,コリメータ,寝台回転などそれぞれの誤差も解析可能であるため,HyperArc開始前にコリメータのズレを解析することができ,メーカーへコリメータの調整を依頼し,各回転誤差を±0.1°まで追い込むことができた(図5)。MPCで装置の精度を細かく把握し,装置の調整や部品の予防交換などを実施することで,装置のトラブルの回避につながり,当院では500日以上の連続稼働(治療の休止がない)となった。

図5 各誤差と傾向

図5 各誤差と傾向

 

まとめ

TrueBeamのMPCは,ISOLOCKと同等の高精度な幾何学的精度を算出することが可能であり,HyperArcにも対応できるQA支援ツールであった。レーザーに依存せず,容易に実施できるため,毎朝のQA支援として有用であると言える。ただし,TrueBeam搭載のフラットパネルを使用したシステムのため,イメージング系のキャリブレーションをこまめに実施していくことが重要である。

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